第66話「ドラゴンの弱点」
斎藤さんの作戦はこうだった。
いくら俺のパワーでごり押してもそう簡単に圧倒できないのは確かなので1匹ずつ、堅実にドラゴンの弱点をついて行こう。
名付けて”ドラゴンのコア潰し作戦”。
もちろん、聞いて驚いた。
何せ作戦の内容も名前も明らかに単調だったからだ。
よく言えばシンプルとも言えるし、悪く言えば地味な作戦。というか、そんなあからさまな作戦でこの状況を打開できるとも思わなかった。
しかし、正直な話。
ドラゴンにコアと呼ばれる弱点があったなんて知らなかった。
なぜならごり押しで倒せたからだ。圧倒的なまでに圧倒できたわけでもないが、それでも個人的に行けると思ったところをがむしゃらに殴り続けた。
実際、クリスタルドラゴンと戦ったときも似たような状況だった。
突然開花したステータスをとにかく使えるだけ行使しただけ。雫がやられてしまう。その考えが至る所をとにかく押して押して押しまくった。その結果倒せただけだ。
この力、それが凄いことを知ってはいるが、ドラゴンを倒した時は皆最初目を疑っていた。
きっと、それは今までの冒険者が脳筋に魔物を倒すのではなく、しっかりと狙った場所に綺麗に打ち込むが如く倒すのが定石なのだ。いつも一人でやってきた俺にとっては分かるわけもないが、大きな脅威がある今。
そう言うチームワーク。ごり押しの作戦をせずに技術的に倒すことも必要だ。
それに、今の俺の力はまだ不安定だ。常時2%程度しか使えていない。
クリスタルドラゴンと渡り合った時の様に圧倒的なパワーを簡単に繰り出せるわけでもない。
そうか、きっとギルド長はそれを見越していたのか……なぜ、ここに来て迷宮区の攻略なんだとん思ったが、今はまだ時じゃない。力を付けろと言うことなのだ。
さすがは黒沢城之助。
憧れの探索者だ。最近はのほほんとふざけてばっかりだったので今までの名声はまるで嘘か何かなのかと思っていたがやはり根底、深層に深い考えがあるみたいだ。
より詳細な作戦としては俺が今押さえているドラゴンを思いっきり跳ね返し、そこを残りの3人の魔法攻撃を仕掛けドラゴンの姿勢を崩す。そしてそのドラゴンのコアを目がけて俺の全力パンチを叩き込むって算段だ。とにかくそれを後ろに退きつつ行い、後ろのドラゴンの体力を少しずつ減らしていくと言った感じなのがこの作戦の肝になる。
ただ、コアの場所じゃ個体によってさまざまらしい。
そこで俺のスキルの出番。未来予知と知覚向上、そしてフル回転させる神経伝達速度上昇で大体どの辺にコアがあるのかは正確につかみ、そこを叩く。
異常事態こそ、俺のスキルの腕のためしどころ。応用性には飛んでいるので是非期待していただきたい。
「よし、それじゃあいくぞ!!」
合図を出し、俺は押され気味だった脚の先に一気に力を集中させる。
まさに、文字通り脚は地面にめり込んでいたがそんなことを考えてはいられない。ぐっとさらに力を込めて、ばねの様なイメージで折り畳み、そして一気に放出させる。
すると、急に勢いを付けた俺に対応できず、押してい当た力が一気に流されて頭から地面に突き刺さるような形でブルードラゴンは態勢を崩した。
それだけでも十分だったが、念には念を。
この流れを崩さないためにと、俺の背後から黒崎さんの氷結攻撃が炸裂する。
彼女のスキルに準じた魔法。今まで俺と一緒に戦った時には見せなかった技を彼女はここぞとばかりに使っていた。
『
直径1m以上にできた氷の塊を一瞬にして綺麗に銃弾のような尖った形にしてそれを連射するようにブルードラゴンに撃ちまくる。
それだけじゃやられないのがBランクだが、黒崎さんの攻撃はまさに昔の俺が思い浮かべていたS級探索者のそれだった。
『
加えて、下田さんの応用風魔法が吹き荒れ、無意識的に放出していた黒崎さんの冷気をブルードラゴンへ吹雪に変えて送り出し、硬い表皮が一気に凍りつく。
そんなドラゴンに対して、言い出しっぺの斎藤さんも例外でなく手を抜かなかった。
回復魔法のみしか使えない回復士とは言ったが、そういうわけでもなく、彼女は黒崎さんと下田さん、そして俺にバフを掛けたのだ。
『魔力上昇!!!!』
『攻撃力上昇!!!!』
みるみると力が上がった感覚に襲われて、すこぶる気分が良くなっていく。
そのままバランスを崩したブルードラゴン目がけて、未来予知と知覚向上を発動させ、コアの位置を特定する。
「左胸か!!」
まさに一瞬。自分でも驚く間もなく、次の瞬間には全力パンチが一気にさく裂した。
「どらああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
まずは一匹、そして俺たちはいつも以上の連携を見せ、次のドラゴンに目を付ける。
「行くぞ!」
「えぇ!」
「はいっ!」
「おぉ!!」
未知との遭遇、そんな戦闘が巻き起こった。
ダンジョンの岩の影から覗く先。
そこに見えたのは例の國田元春と言われる少年だった。
F級とは思えないほどのスピードとパワーで、私は喉を鳴らした。
正直、こんなあからさまでよかったのか。そんな不安がよぎる。作戦自体は悪くなかったがまさか他の3人までついてくるとは思わなかった。内通者の話が違う。
動揺する心。ゆっくりと胸に手を当て、深呼吸をする。
「……大丈夫よ、やり遂げるの。私」
そう、人生を狂わされてきたことを思いだしなさい。
私の原点を。この国を世界を変える気前がなければ為すことはできないのだから。
あの少年を内側から黒色に変えなさい。
それだけでいいのよ。
私は今、そのためだけにいるのだから。
【スキルリスト】
『
『
『
『脚力増加・強』『神経伝達速度上昇・強』
『腕力増加・強』
『
『
『表皮装甲』『痛覚耐性』
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