第57話「Aランク迷宮区の攻略①」


 翌日。 

 新居生活に向けて色々と準備を進めている中、学校帰りの午後5時半。


 俺と黒崎さんは探索者ギルドの会議室にやってきていた。


「お、俺この階層くるの初めてです……っ」


「別に他のところと変わらないわよ?」


 普通でしょ、と一蹴してくる黒崎さんの傍で俺は初めて見る光景に度肝を冷やしていた。


 会議室、そうは言ったが俺が入ったのは探索者ギルドの13階。


 そう、関係者や政府の要人など、重要人物しか立ち入りを許されていない3階よりも上の領域に足を踏み入れているからである。


 通り過ぎる人間が全てそのクラスの人間だと思うと身に力が入るというか、胸が引き締まる。


 だいたい、あのギルド長もそんなすごい人だったとは思っていなかった。


 いやまぁ強いし当然なのかもしれないけど、話じゃここはS級探索者でも許可が降りないと入れないという。


 そんな場所を普通に歩ける黒崎さんも凄いし、もう緊張を通り越して阿鼻叫喚って言った感じだ。


「もう、これからは毎回来る場所よ? それに昨日はあんなに俯瞰するような顔してたのにさ、今日は萎縮した子犬見たいね」


「子犬。ワン!!」


 あぁあぁ緊張でどうにかなりそうだ。 

 紙を出す時だって入れて守らなかったんだから仕方ないじゃないか、普通によ!


「ちょ、ちょっとそれは……いや、何でもないわ」


 あれ、俺の子犬のモノマネに少し色気付いた顔してきたんだけどこの人。


 この前までデレデレだけだと思ってたのに今度はSっ気付いてきたかな?


「まあほら、とにかく今日は重要な話があるんだし、早く会議室に向かうわよ」


 そう言って足早に向かう黒崎さんの後を俺はまるで犬のように追いかけるのであった。




・探索者ギルド13階秘匿会議室A


 扉の前に立って指紋認証やら色々と長いセンサーを潜り抜ける間、ふと思ったがこのギルドは全何階あるのだろうか。


 正直、疑問に思ってもそれは誰も知らない。まあ、ここにおいての誰も知らないはギルドに関わっている特別な人物を含めないという意味だ。


 一般的に公開されていないというのがこの場合会っているといえよう。


 なぜ隠してるか理由は俺も定かではないが、有識者の話ではテロ対策やら偽装工作やらと色々。


 陰謀論的な話も出ていることから言っても大して状況を把握できていないと言える。


 とにかく、そのくらい重要な場所に招かれるくらいに凄い人物になりつつあるということだな。


 出世も出世、雫にはまだどうなってるかは詳しく話していない……というか話しちゃいけないがもしも言ったらどうなるだろうか。


 胸張ってできるほどできた感じの役職に着いたわけじゃないけど昔なりたかったものに一歩前進していると思いたい。


「國田くん、ねえ、聞いてる?」


「えっ。あぁ……すみません。ちょっとぼーっとしてて……」


「んもぉ。こんなとこでぼーっとするなんて許されないわよ? hyssopに入ったのなら自覚しなさい?」


「す、すみません先輩」


「んぐっ……せ、先輩はやめなさいよ……っ」


「立場上に先輩なので」


「い、言い訳いいから早くしてよね!!」


 くるりとかわしたかの様に強く言う黒崎さんはそれはもう一段と可愛かった。


 最近、彼女のいなし方と言うか扱い方がわかってきた気がするよ。




 


※事情があり、本日自宅に帰れないためここまでです! 残りと続きは明日投稿します!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る