第17話「打ち明ける ※昼投稿したのを修正しました」
「相談……?」
疑いの目を持って近づいてきた黒崎さんに悩みを打ち明けようとすると、彼女は首を傾げて不思議そうにそう繰り返した。
「相談っていうよりも、白状に近いかもしれません……」
「白状……?」
「多分黒崎さんが今疑っていることについて多分分かっていただけるのかなと?」
「ふぅん。それじゃあ、やっぱり私に嘘ついていたことってこと?」
「べっ、別に嘘はついてませんよ……。俺は変わらずF級なので」
「……」
意味分からない。
そんな顔をしながら訝しげに視線を向けてくる。
そして、ため息を吐き出して呆れ顔で呟いた。
「まぁ、面白そうだし聞いてあげようかしらね。前のお礼も兼ねて」
少し不愛想に返してきた黒崎さん。
あいも変わらず、そのツンとした表情の中には少しだけ優しさが垣間見える。
S級特有の覇気がなければもっと友達が出来ていてもおかしくないだろうに。
いや、これが所謂ツンデレっていうやつなのだろうか。
そんなふうに考えると彼女がちょっとかわいく見えてしまった。
「あっ、その前にここだと話しずらいので中庭のベンチにでも座りましょうか」
「えぇ、そうね」
☆☆☆
「へぇ。それで、おかしなF級スキルのせいでレベルがめちゃくちゃ高くなって、それでいて新しいスキルも手にしちゃって、わたしよりも強いなんて言えるようなステータスを手にしてしまったと……はぁ、もしかして新手の自慢か何かしら?」
それから、俺はただただ真面目に今までの事を話し始めた。
まず、自分のオリジナルスキルでもある『
そのせいなのか魔物やいじめっ子の二人、ましては黒崎さんの手加減ありきの攻撃もすべて遅く見えてしまうようになったことまで。
この1週間で起きたありとあらゆる不可解についても、俺はすべてを丸裸にするように彼女に話した。
きっと、俺よりも遥かに凄いS級のスキルを持つ彼女なら知っていると期待を込めて打ち明けて、最初に言われた言葉がそれだった。
いや、まぁ別に嫌だというわけではないがさすが黒崎さんと言ったばかりで。あまりにも厳しいツンケンした態度に少しだけ笑ってしまった。
「っな、なんでそうなるんですか」
「いや、だってどうあがいたって自慢じゃないの? もともと低いランクだけど今じゃS級よりも強いんですよっていう」
「俺がそこまで意地汚い野郎に見えるんですか?」
「……」
「なんでそこ黙るんですか!」
「だ、だって、よく考えたみたら……ほら、ね? そう、見えなくもないなぁって思って……っね?」
この黒崎さん特有の流れというか、彼女と一緒に迷宮区に潜る仲間は常にこんな会話について行かなくてはいけないのかと思うと少しだけ尊敬の念が湧いてくる。
「それで、何? 結局私に自慢しただけになるの?」
「……いやまぁ、黒崎さんがそう思うならそうなっちゃいましたけど」
変な空気になってしまった。
今こそ彼女ジト目が胸に刺さるのだが、今はなぜだか冷静な様子だった。
「あの、疑ったりしないんですか?」
「疑う?」
「いや、だって急にこんなこと言われて信じられないですよね? なのに黒崎さんはさっきから何も言ってこないし」
「別にまだ信じてるとは言っていないわよ?」
「え、普通に疑ってたんですか?」
「まぁ、わからないって感じだけど。もしかして、疑われたかった?」
「いや別にそういうわけでもないですけど……不思議だなと思ったので」
「……うぅん。なんかまぁ、言われても実感も何もよく分からないし、きっとあなたのことだから私から何か得られるんじゃないかって考えたんでしょうけど、私は何も言えないわ?」
と——結果はあっさりとしていた。
流石に締まらなくて、会話を繋げようと同じことをもう一度声に出した。
しかし、結局答えは変わらない。
「え、ほ、ほんとに何かないんですか?」
「ないわ、ないもの。私の周りにいる人たちでF級なのにおかしいステータスの人なんて見たことないわ? って、あ!」
すると、目を見開いてこっちを向いた。
まさか、何か心当たりでもあるのか!
そう思って身を寄せると
「もしかして、あなた……改ざんした?」
普通に失礼だった。
んなわけあるか!!
「……俺ができると思いますか?」
「まぁ、それが一番ないわものね……」
黒崎さんはやや疑っているようだった。
目が細くなって俺の方を見つめる。
「——それか、誰かに改ざんされたとか。そうでもしないと可笑しいし、やっぱりね。知っていることから考えるとあり得ないことだものね」
そう言って、でもと続ける。
「ただ、事実そう書いていることは変わりないわね。正直、変なプライドで信じたくないとか言い出す人には成り下がりたくはないのだけれど今回のは前例がなくて私は半々かしら。とにかく、それが何なのかは私もよく分からないし、あなたが戦っている所を見ないと何とも言えないもの」
まぁ、そこまで言われたらそれもそうだった。
もしも、俺が彼女の立場なら絶対にそうしていた。
本当かどうかだなんて、結局は見ないと分からない。
——とはいえ、そうなのか。
やっぱり、今の俺の状況というのは前代未聞らしい。色々とコネクションを持っているだろう黒崎さんが知らないんだから、違いない。
——そんな風に思っている時だった。
ブーブーブーブー‼‼‼‼‼
校内に危機を知らせる警戒音が鳴り響いたのだ。
これは迷宮区が生まれるようになってから街の施設や学校に設置されるようになったシステムで、迷宮区から魔物が脱走した時や大きな危機を知らせるものである。
そして、すぐに知らせる音声が鳴り響いた。
『A級以上の探索者とS級探索者は至急校庭に集まってください。魔物が大量発生しました。至急集合してください。繰り返しますっ——』
魔物。
それも、大量発生。
さすがに危ないから非難した方がいいか――いやっ。
そんな、あまりにも丁度いいタイミングに驚きつつ、俺はハッとした。
そうだ、もしもこれで黒崎さんに俺の力を見せると事が出来れば、信じてもらえるんじゃないのかと。
「っ黒崎さん!」
「な、何よっ。こんな時に」
「俺もついて行っていいですか!」
「は、何言ってんの⁉ 死ぬかもしれないわよ!」
「大丈夫です!! ものは試しです! 俺も討伐に参加させてください‼‼」
「っ——ど、どうなっても知らないからね!?」
そう言って、凄まじいスピードで駆けていく彼女の後ろを追いかけていった。
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