第38話 霧島優羽の「腹ドン」がエッチすぎるので……。
呼吸を整えているのか、軽く膨らみそしてへこむ、そんな優羽のお腹。
白いワンピースの手触りの良さそうな布地がぴったりとくっついている、そんな優羽のお腹。
……目に入ったまま、視線を動かせない。
告白を終え、緊張から解放されたせいだろうか。
それとも、間違いなくOKの返事がもらえると確信できたからだろうか。
先ほどまで感じていた喉の渇きは消えていた。
今の俺は変に素直で、深く考える前に口が開く。
「ねえ、優羽。お腹、見せてよ」
「……?」
優羽はまだ言葉が出ないようだが、それでもこちらを見てくれた。
ただ俺の言ったことが理解できなかったらしい。
可愛らしいぼんやり顔をこちらに向けている。
そんな彼女に、もう一度繰り返す。
「優羽のお腹、見たいな」
「…………」
優羽は躊躇したようだ。
『どうしても?』と言いたげに小首を傾げてこちらを見てきたので、どうしても見たいと力強く頷く。
彼女はそれでも悩むように視線を彷徨わせていたが。
やがて熱っぽい表情を浮かべながら立ち上がると、俺の目の前までふらふらと歩いてきた。
なぜ優羽がわざわざ移動したのか内心疑問に思いつつも、彼女の行動を見守る。
優羽は俺の視線を意識して緊張しているのだろう、たどたどしい動きで、両手を自身の左腰へ。
そして、そこについていた小さな白いリボンを静かに
――ワンピースが、ふわりと広がった。
どうもリボンは飾りではなく、ベルトのような役割を果たしていたようだ。
あんなに強調されていた身体のラインが、今ではゆったりとした服のシルエットに隠れてなにも分からない。
そのまま優羽はゆっくりと前かがみになり、ワンピースの裾に手を掛けている。
……そんな優羽の体勢を見て、俺はようやく彼女になにを要求したのか理解した。
優羽が着ているのは、ワンピースなのだ。
シャツをめくりあげるのとはワケが違う。
ワンピースを着ている女性にお腹を見せてほしいと言う。
これはつまり──。
ワンピースの裾をそろそろとめくり上げていく優羽。
こちらを焦らしているのではなく、恥ずかしいのだろう。
唾を飲みながら優羽の脚を眺めた。
服をめくり上げるにつれ、だんだんと露わになっていく彼女の太もも。
なぜだろう、俺はあの美しい太ももをもっと間近で見たというのに。
いま感じている胸の高鳴りはあの時を遥かに上回る。
そして。
当然、露わになるのは太ももだけではない。
優羽が俺に見せてくれるのは、お腹なのだから。
めくりあげるスピードが少しずつ遅くなるが、その躊躇いこそが俺の興奮を煽る。
やがて見えてきたのは――彼女のお尻を包む黒いショーツ。
華やかな装飾が施されたその下着に見覚えがあった。
彼女の部屋のタンスに入っていた、あの下着だ……。
ポーチに大切に保管されていて、身に着けて欲しいと俺が頼んだ、あの黒下着……。
あのとき感じた予感は正しかった。
――エロい。
ポーチに入っているのを見たときは、なぜこんなにひらひらした装飾がついてるのだろうと思ったものだが、実際に着ているところをみると、理由はすぐに分かる。
見た者の興奮を煽るためだ。
そのために、ひらひら装飾はついている。
そしてやはりこれは勝負下着だったのだろう。
俺からの連絡を受け告白を予期した優羽は、確保した30分を使って、白いワンピースという勝負服と共に黒い勝負下着も身に着けていたわけだ。
俺に下着姿を見られてもいいように……。
告白のあと、そういう関係になってもいいように……。
俺の目は彼女が身に着けているショーツに釘付けになっていたが、優羽の手は未だに止まっていない。
可愛らしいお腹が見えてきた。
――そしてそれでも、まだ止まらない……!
……豊満な胸とそれを包む黒いブラが見えたときには、思わず身震いした。
彼女の胸が大きいことなど当然知っていたつもりだったが、実際に下着姿を目にすると頭をガツンと殴りつけられたくらいの衝撃がある。
もしかすると彼女はワンピースを脱いでしまうのだろうか、と思ったところで、彼女もさすがに恥ずかしくなったようだ。
胸の谷間がはっきりと見えたあたりで、めくり上げるのをやめてしまった。
手も下げてしまったので、今ではブラがかろうじて見える程度だ。
あるいはそれは、がっかりすべき場面だったのかもしれない。
けれど俺は、むしろホッとしていた。
ここまでは見てもいいよと優羽から許可をもらえた気がしたのだ。
興奮と落ち着きが混ざった、不思議な気持ちを抱えながら、優羽のお腹を眺める。
無言で、じっと見た。
「……」
彼女も無言。
なんとなく優羽の表情を見たくなって、視線を上げる。
彼女も俺を見ていたようだ。
一瞬目が合ったが、すぐに逸らしていた。
……優羽は今、なにを考えているのだろう。
そして――俺はなぜ彼女にお腹を見せてほしいなんて頼んだのか……。
いまさら、そんなことを思う。
……自分でも不思議だったのだが、彼女のお腹を眺めるうちに少しずつ気持ちの整理がついてきた。
――優羽にキスをしたかったからだ。
俺にとってキスと「腹ドン」は常にセットだったから、キスを意識した瞬間から、つい彼女のお腹が気になってしまったのだ。
優羽との、キス。
彼女にお腹を触られドンドン言っているときも、俺の頭の中はキスへの期待感で一杯だった。
その瞬間がいつ来るのか、つねに心待ちにしていた。
彼女がしてくる「腹ドン」に、俺はいつも受け身で……。
別にそこに不満なんてない。
ただ、ずっと不思議に思っていたことがあった。
彼女がすべてを支配する「腹ドン」において、最後は必ず俺が逆らう。
今まで従順だった俺が従わなくなることがきっかけとなって、彼女はこちらにキスをしてくるのだ。
……もしかすると、優羽が本当に俺に求めているのは……。
…………。
俺は、なにかに導かれるように立ち上がり優羽に近づくと……。
――優羽のお腹にポンと拳を当てていた。
驚くように俺の顔を見てくる優羽。
俺はただ微笑むだけ。
そして、もう一度ポンとやさしく優羽のお腹に拳を当てた。
優羽の顔に理解の色が浮かぶ。
「ドンッ!!」
目をギュッと閉じ、顔を上げて叫ぶ優羽。
慣れていないせいか彼女の「ドン」は大きかった。
「もっと小さな声で『ドン』しないと、下の階に聞こえちゃうよ」
耳元でささやく。
優羽は真っ赤になってコクコクと頷いている。
もちろん、この時間ではユキさんも健治さんも帰ってくることはない。
そんなことは優羽なら当然分かっていただろう。
これはお互いの気持ちを盛り上げるための言葉で、だからこそ大事なのだ。
「じゃあ、もう一度いくね」
そう宣言して、再び優羽のお腹に拳を当てる。
「ドン!」
当然のように声を出してくれる優羽を見て、思わず笑みが浮かんでくる。
きっと、彼女も俺に腹ドンするときはこんな気持ちだったのだろう。
言葉では表現できない、とても温かい気持ちが胸に溢れていた。
「次は2回するからね」
きちんと教えてあげた。
優羽が頷くのを見てから、お腹に2回拳を当てる。
「どんっ! どんっ!」
次も伝えて、3回。
「どんっ、どんっ、どんっ!」
……回数を重ねる度に、優羽のドンに何かを期待するような切ない響きが出ていることに気づいた。
きっと、彼女もこの遊びの結末が見えているのだろう。
優羽が無心でドンの
この興奮が最高潮に高まったとき、俺は優羽にキスできるのだ。
それがこの遊びのルールなのだ。
俺は今までそのルールを受け入れ従ってきた。
優羽もこのあとなにが起きるのか、当然理解しているはずだ。
優羽の様子をじっと眺めながら、お腹に拳を当てる。
潤んだ瞳で切なそうに「どん」と言う彼女。
嫌がってはいないようで、安心する。
俺だって無理やりキスをしたいわけではない。
いや本音を言えば無理やりでもしたいくらいの気持ちはあるが、一時の欲望のために彼女に嫌われるわけにはいかない。
決してがっついて優羽に恐怖心を与えてはいけないのだ。
むしろ優羽の気持を高めに高めよう。
それが彼女との素晴らしいキスに繋がっている。
そのまま優羽をドンドン言わせ続けて数分は経っただろうか。
彼女の表情は
優羽の気持ちは最高潮に達したようだ。
彼女ならここでとても優しく拳を当て、俺が逆らうのを待つ。
そしてお仕置きと称してキスをするのだ。
けれど俺のやり方は違う。
やっぱり俺は、きちんと言葉で気持ちを伝えたいと思った。
そしてきちんと返事を聞きたい。
恍惚とした表情の優羽を、見つめる。
「優羽、好きだよ」
「……わ、わたしも……すき」
彼女の絞り出すような返事。
わずかに声が震えているのも、愛おしい。
「キス、するね」
そう告げて、優羽が頷くのを見た瞬間、強引なくらいの勢いで口づけた。
優しくするつもりだったが、我慢の限界だったのだからしょうがない。
そして、その5秒後。
「むぐう!? むぐぐう!?」
俺はベッドに押し倒され、優羽にキスをされていた!
あれ!? これ前回と一緒じゃない!? なんで!? 今回は俺が主導権を握れるんじゃないの!?
「ごめんねえっ! がまんっ! できないっ!」
キスの
なるほど。こちらが興奮するとき、彼女もまた興奮しているというわけだ。
こいつは一本取られた。
などと冷静に状況を分析できたのは、優羽が繰り出してくるキスの嵐にひたすら翻弄されたあとのことだった。
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