第36話 缶崩しゲーム
一言で言うと、なんかいろいろとすごかった。
てっきり普通の巨大アナコンダと獰猛なワニの話かと思ったら、アナコンダは炎を吐くわワニは無茶苦茶デカいわでビビった。これなら続編でサイボーグメガロドンが出てきても納得してしまうかもしれない。
最初の方に近くを航行中の船が襲われたとかでストーリーが始まって、しばらくしたら船を燃やしてるアナコンダがいたんだからビビったね。一瞬事故かと思ったわ。
で、追いかけてくるアナコンダから逃げるんだけど、周囲で火炎が吹き出す演出があってもう熱いのなんの。
どうにか逃げ切れたと思ったら港でデカいワニが暴れてるから別の港に移動するという展開になって、これもワニに追いかけられる展開になる。
俺も先輩も真ん中よりの席だったけど、もう端っこは大変。
ワニのくせにバシャバシャ水を跳ねさせるから隣のお兄さんはびっしょびしょになっていた。着替えとか持ってきてるんだろうか?
しかも何が驚いたって、こういうアトラクションって最後までキャストの人が一緒なのかと思った。
そしたら終盤ちょっと前にアナコンダに食べられる形で船下りちゃったもん。安全管理大丈夫か心配になる。
で、最後は加速してなんやかんや上手くいってアナコンダもワニもまとめて爆薬でぶっ飛ばして終わり、というオチだった。
ちなみに途中で食べられたキャストの人は船を降りる直前で小舟に乗って登場した。先輩曰く、これも原作通りの展開だとか。
でも、思ったのがこれはお子さんトラウマになるて。アナコンダにキャストが食べられるアトラクションとか前代未聞よ。
「あー、楽しかった! 結翔くんはどうだった?」
「楽しめましたよ。内心ツッコみしすぎてうるさかったですけど」
これが人気になるとは、何が伸びるか分からない時代だよほんと。
アトラクションを終えた後も先輩は元気だ。
腕を引っ張って次の場所へと連れて行かれる。
「次はダイナソーランド行こう!」
「それはいいですね。確か先月新しいアトラクションが完成したって」
「そうそう! 楽しみにしてたんだ!」
恐竜映画をモチーフに作られたアトラクションがある場所へと向かう。
けど、その途中に面白そうなものを見つけて先輩を呼び止めた。
「白田先輩。あれでちょっと遊んでいきませんか?」
「どれ? あ、ワンダーくん!」
見つけたのは、ボールを撃って積み重ねられた缶を倒すゲーム。全て倒したら大きなワンダーくんのぬいぐるみがもらえた。
アトラクションもいいけど、こういうゲームで遊ぶのも楽しいと思う。
同じぬいぐるみはお土産屋でも売っているけど、買えば四千円はしたはず。サイトを見てたらそんな記載があったように思う。
でも、これで獲得できたら五百円。
お手頃価格で獲得できて楽しめたらめっちゃいいじゃないか!
早速一回遊ばせてもらう。
「はい、よく狙って~!」
キャストの人は丁寧に狙うべきポイントを教えてくれた。
その場所にしっかり狙いを付けて、引き金を引く。
放たれたボールが勢いよく飛んで缶タワーの中心に命中した。下一段を残して上を全てなぎ倒す。
「すごいすごい! あとちょっとだよ結翔くん!」
「任せてください! 全部倒します!」
一回で手持ちは三発。これならいける。
って、思っていたんだけど、この時点で詰みでした。
意気揚々と二発目を打ったはいいものの、缶に当たって倒したのは一本。上を崩したら下が全部残るという多分最悪のパターンを引いてしまったと思う。
残る一発で他を全て倒せるはずもなく、中途半端な結果で終わってしまう。
「悔しいです先輩」
「ドンマイ! 私もやってみようかな」
先輩も一回挑戦することにしたらしい。
俺の失敗を活かして、というか俺の手元が狂ったのかもしれないけど、打ち込んだ場所から少し下めを狙ってボールを発射した。
お見事勢いよくタワーが崩れるけど、それでも残り二発では厳しい感じになった。
しかも、一発を外してしまったから先輩もぬいぐるみ獲得とはならなかった。
「くぅ~! 残念!」
「ちょっともう一回やっていいですか?」
「えぇ? 結翔くんギャンブルとか熱中しちゃうタイプでしょ」
苦笑されてしまった。でも実際そうかもしれない。
気をつけないとと思いながら再チャレンジ。
さっきの自分と先輩の狙ったポイントを見極め、上手いこと位置を調整する。
……が、思ったように倒れなかった。多分後二発で全部は無理だと思う。
「さ、三度目を……!」
「ほどほどにね?」
先輩が心配してくれるけど、ここは負けられない戦いがあるんです。
三度目の正直で、今度こそ理想であろう場所に向けて狙いを定め、引き金を引いた。
「あ!」
「おぉ!」
「すごい! おめでとうございます!」
キャストの人も称賛してくれる一発は、なんと残り二缶を残してすべて倒していった。
後は左右に残った一つずつを外さなければぬいぐるみ獲得となる。
そして、それを外すほど下手ではなかった。
「おめでとうございまーすう! お見事景品獲得!」
「ワンダーくんがやってきまーす!」
ワンダーくんのぬいぐるみを獲得することができた。
先輩も拍手で褒めてくれて、でもこれはプレゼントのつもりで獲ったから先輩へと渡す。
「先輩。よければどうぞ」
「え、いいの!?」
「はい。今日誘ってもらったお礼です」
受け取ったぬいぐるみを胸に抱え、優しい笑顔を向けていた。
「ありがとう。大切にするね」
「そうしてもらえると助かります」
「あ……でもこれ、荷物になっちゃうね」
「あ」
そこまで考えてなかったどうしよう。
ちょっと困っていたら、先輩のお母さんがどこからともなく現れた。
「あらあらここにちょうどいいサイズの袋があるわ」
「お母さん!?」
「これは預かっておいてあげるから、二人で楽しんできなさいな」
ぬいぐるみはお母さんが預かってくれた。
妹さんといいお母さんといい見事なタイミングで助けてくれる。あれ、もしかしなくても付けられてる?
でも、おかげで楽しめていることは事実だし、感謝しながら先輩と他のアトラクションも楽しもうと思う。
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