夏休み

第34話 宿題優先

 夏休み初日、拓真は外出せずに先週立てた計画に沿って宿題を始めようとしていた。

 勉強机の上には計画表が置かれている。


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 【宿題計画】

 ・漢字ドリル1冊(1日)

 ・計算ドリル1冊(2日)

 ・家庭科の課題(1日)

 ・読書感想文(1日)

 ・自由研究(2日)

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 漢字ドリルは36ページ。夏休みは36日間。1日1ページでOK。

 計算ドリルは50ページ。1日に約1.4ページやれば大丈夫。

 家庭科の課題は器用な人なら数時間で終わるだろう。

 読書感想文は読むのに数時間、書くのに数時間。1日あれば問題ない。

 最後に自由研究。早くて1日の人もいれば、1週間以上かける人もいる。


 ***


 拓真は計画に問題がないか確認を始めた。


「よし、まずは漢字ドリルだな」


 ——1ページを書き終えて時計を見る。


「大体10分……36ページ×10分÷60分で6時間。まぁいけるか。次は計算ドリルだ」


 再び1ページを終わらせて時計を見る。


「これも約10分か。後半はもう少し難しくなるから1ページ20分とすると……10分×25ページ+20分×25ページ÷60分で……12.5時間か。さすがに連続はキツいから2日のままで良さそうだ。次は家庭科か」


 家庭科の課題の詳細を見る。


「ユニークなポケットティッシュ入れか……裁縫苦手なんだよなー。普通は1、2時間あればいいと思うけど、6時間は欲しいな。まぁ計画どおりか」


 読書感想文は図書室で借りた本がそこまで厚くないので1日あれば問題ない。


「最後は自由研究。今回のは調査に1日で作成に1日あれば良さそうだから2日のままでいいな。よし確認終わり!」


 拓真は計画に問題がないことを確認し、10時から12時になるまでひたすら漢字を書き続けた。



 ——ピピピッ、ピピピッ。

 12時を知らせる時計の音が部屋に響く。


「もう12時か。いやー、ゲシュタルト崩壊しまくりだったわー」


 拓真は手を止め、リビングで母が作った昼ごはんを食べた。

 そして13時に部屋へ戻って作業を再開した。


「この動きは会社員のそれだな」


 ——再開してから30分ほど経った頃、拓真のスマホに着信があった。


「はい」

「クマちゃん今日暇? 今から遊ばない?」

「あー悪い、今宿題やってる」

「え、早くね?」

「早めに終わらせたほうがいいからな」

「だとしても早すぎだろ(笑)」

「ちなみに、明日も宿題やる。てか今日から1週間は缶詰。それで全部終わらせる予定」

「マジかよ。なんか修行みたいだな」

「短期の忍耐は長期のいとまをもたらす」

「……なんだそれ」

「短い間苦労すれば後々長い自由を得られるっていうことわざ」

「へー、そんなのあるのかー」

「いや今作った」

「なんだよ!(笑)」

「じゃあそういうことだから」

「ちょっと待て!」

「ん?」

「1週間後は遊べるってことだよな?」

「まぁ問題なければ」

「じゃあ待ってるからな!」

「おう。達也も少しは宿題進めとけよ!」

「気が向いたらな!」

(絶対やらないじゃん)「じゃ」

「じゃあな」


 拓真は達也との電話が終わった後もひたすら漢字を書き続けた。

 そして漢字ドリルを終わらせ、余った時間はゲームをやりまくり、夏休み初日が終わった。


 *


 ——6日後の夕方。


「よっしゃー、宿題全部終わったー。じゃあゲームやりますか!」


 拓真は計画どおりに宿題を終わらせた。

 この日は晩ごはんの時間になるまでとことんゲームをやった。

 1週間にゲームをした時間は、宿題のそれをわずかに上回っていた。

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