第23話 石碑
第2校舎の昇降口横に、高さ60センチ幅80センチほどの大きさで、黒に近い緑色をしている
***
ある日の放課後。
梅雨の合間で雨が止んでいたため、拓真は校庭でいつもの3人とサッカーをしていた。
「
「おら! うわっ、やべ!」
「おい、どこ
「ごめん!(笑)」
「取ってくるよ」
「拓真すまん!」
拓真は背を向けて手を挙げ、ボールを取りに行った。
「海誠、後で土下座だな」
「スライディング土下座かますわ」
ボールは第2校舎の昇降口付近まで転がっていた。
「すげー転がるな」
拓真はボールを拾い上げる時、草むらとは違う濃い緑色をした石碑に気付き、しばらく見ていた。
「ん? あいつ何してんだ?」
「なんか見てるっぽい?」
「なんだろ。俺見てくるわ」
達也が拓真の元へと走る。
「クマちゃん何してんの?」
「いや、こんなところに石碑あったんだなって」
「うわ本当じゃん。今まで気付かなかった(笑)」
「それは石碑が可哀想だな」
「悪いな石碑君」
達也は石碑の上部をペチペチしている。
「てかこれ何が書いてあるの?」
「さぁ?」
「クマちゃんでも分からないのかー」
「旧字体なんて勉強してないし」
「キュウジタイ?」
「昔の書き方だよ。確か70年くらい前まで普通に使われてたとか」
「そこは知ってるんだな(笑)」
「聞いたことがある程度だよ」
「ふーん」
達也は旧字体にあまり興味がないらしい。もちろん拓真も興味はないが、何かが気になるようで、ずっと石碑を観察している。
「読めないんだろ? 何がそんなに気になってんの?」
「石碑そのものだよ」
「どういうこと?」
「
「そう?」
「校舎のほうが古く見えるだろ」
「あー、確かに」
「これは誰かが継続的に磨いてるな」
「……そんな気になる?(笑)」
「ほとんどの人が気付かないところにあるんだよ?」
達也の頭の上には「?」がふわふわと浮かんでいる。
「誰も見てないところで努力してる人がいるってことだよ」
「そういうことか!」
「もしかしたらそれに気付かせるためにこんなところに作ったのかもな」
「それは考えすぎじゃない?(笑)」
「そうでもなきゃこんなところに作るか? 石碑は後世に残すためにあるんだし」
「そう言われるとそう思ってくるな」
「思うだけはタダ。俺たちだけでもそう思ってようぜ。磨いてる人のためにもな」
「……そうだな」
「じゃあ戻ろうか」
「おう!」
2人はボールを待つ大輝と海誠の元へと戻った。
「遅い! お前ら何してたんだよ!」
「ちょっとな」
「悪い」
「結局なんだったの?」
「この学校の誰かさんがかっこいいなって」
「なんだそれ」
「誰かさんって誰?」
「名前も知らない誰かだよ」
2人は首を
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