第19話 図書委員会
毎週金曜日は委員会活動があるのだが、拓真は現在までどの委員会にも
しかし、その日々に終わりが訪れる。
担任の島田は朝の会が終わった後に拓真を呼んだ。
「間瀬ちょっといいかー」
「はい」
「前に委員会のことも一応考えてくれって言ったの覚えてるか?」
「あー、いきなりクラブ選べって言われた日ですよね」
「なんかトゲがあるな(笑)」
「……委員会決まったとかですか?」
「察しがいいね〜」
「まさか選べないとは……ちなみにどの委員会ですか?」
「図書委員会だ」
「あれ? 図書室って常勤の先生いますよね?」
「そうなんだが、昼休みに用事で図書室にいられないことがあって、その時に図書室が使えなくなるのは申し訳ないってことで、高学年から2人だけ図書委員にすることになったんだ」
「なるほど。それで委員会に入ってない自分が選ばれたわけですか」
「そういうことだ」
「もう1人はなんで委員会に入ってなかったんですか?」
「委員会を決める日に風邪で休んだらしいんだが、人が足りてるから入らなくてもいいかってなったそうだ」
「へぇ……結構適当ですね」
「確かにな。まぁとりあえず今日からだからよろしく頼む」
「分かりました」
***
この学校の図書室は第2校舎3階の端に位置している。近くに教室はなく校庭から離れているため、とても静かである。部屋の大きさは通常の教室の数倍。さらに
***
帰りの会が終わり、拓真は図書室に向かった。
廊下を通る人が徐々に少なくなっていく。
気付けば自分だけになり、目の前には図書室があった。
ガラガラガラ……。
「こんにちは」
拓真は2人に挨拶しながら図書室に入った。
「間瀬くんね。島田先生から話は聞いてるわ〜」
図書室の先生は今年で28歳になる
「5年3組の間瀬拓真です。今日からよろしくお願いします」
「よろしくね〜。私は綿谷実和よ。こちらは
「6年1組の利倉です……よろしくお願いします」
詩織は物静かで誰に対しても敬語を使うため少し大人な雰囲気がある。後ろ髪は肩にかかるくらいだが、前髪は目が隠れるほど長い。昼休みや放課後によく図書室で本を読んでいる。
「今日は初日だから簡単に活動内容を説明するね〜」
「はい」
「まずは貸出し。期間は基本的に1週間です。図書カードに日付と名前と何年何組かを
「はい」
「返却時は図書カードにこの受領印を押して、本の表紙の裏にあるカード入れに。で、返却された本はカウンター下の返却ボックスに入れてください」
「はい」
「本は元に戻さなくてもよいのでしょうか?」
「元の位置が分かるなら戻して欲しいです(笑)」
「分かりました」
「まぁ基本的には私がやるんだけど、昼休みに用事で外出しないといけない時があるから、その時に2人でやってもらう感じかな〜」
「はい」
「あっ、あとは簡単なポスターを作って欲しいの」
「ポスター?」
「おすすめの本を紹介するポスターよ。3人で別々に作成して、廊下にある掲示板に貼り出すの。面白いでしょ〜?」
「そう……ですね」
「私そういうのやってみたかったんです」
「いいね〜。毎週やるか
「分かりました」
「とりあえずこれくらいかな〜。何か質問ある?」
「いえ、大丈夫です」
「僕も大丈夫です」
「よし、じゃあ今日は終わり〜。帰ってもいいし下校時間になるまで本読んでてもいいわよ〜」
綿谷はそう言うと、業務に戻った。
詩織は本棚のほうへ向かい、「何を読もうかなー」と
拓真は普段入らない図書室の全体を見てから帰ることにした。
*
図書室の奥まで行った時、詩織が声を掛けてきた。
「間瀬君」
「なんですか?」
「……本は好きですか?」
「……まぁ嫌いではないですけど、ゲームのほうが好きですね」
「……そうですか」
詩織は残念そうな顔をして再び本を探し始めた。
「でも大量の本に囲まれるのは結構好きです」
「ですよね!」
詩織が嬉しそうな顔で拓真を見る。
「ページが進む音とか本の匂いとか、なんか落ち着くんですよね」
「私も同じです!」
「2人とも、それが分かるなんて大人だね〜」
図書室は静かなため、離れていても会話は聞こえるらしい。綿谷の笑い声も2人に聞こえてきた。
「……本、探しますね」
「じゃあ僕はそろそろ」
2人はなんだか恥ずかしくなり、すぐに会話を終えた。
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