あなたにはトリを飾ってもらうから
会場の設営は着々と進んでいた。大きなお好み焼きをかたどった看板も学生っぽくチープなんだけれども心を熱くさせる何かを感じる。
「あ、光くんじゃーん」
そうどこからともなく声がしたと思ったら体育館の窓から会長がこちらを覗いていた。
「ちょっと光くん上がってきてよー」
「え、いや……」
なんか嫌な予感がするわけじゃないんだそうなんだ。
「いや。仕事が……」
なんか設営のあれだ、なんかがあるんだろ。
「なにー? ほら比山光くん! 聞こえてるなら早くしなさい!」
ただ誤魔化すよりも先に会長の熱が上がってしまった。仕方ない。
体育館に小走りでいった。はぁなんか嫌な予感すんなぁ。会長が俺を呼びつけるときってあんまいいことがないから、正直なところ不安で一杯だった。
「おそーい!」
そう言いながら舞台でどっしり構えて俺を待っていた会長は人差し指をピンとこちらに向ける。荒戸も忙しそうに体育館の音響照明セッティングかなんかだろう、変な機械とにらめっこをしている。
「まぁ遅いけどよく来たよ。早速話なんだけど」
「ち、ちょっとたんま! 心の準備が……」
「心の準備なんてしててもしてなくてもいいわよ。それでね? 光くんのカプコンの順番の話なんだけどトリになったわ」
「あーなんだそんなこと……って、えっ!?」
あーやっぱり心では覚悟していたがやはり会長は俺に厄介ごとを抱え込ませようとしていた。正直雑用くらいだと思ったら斜め上
「ちょ、え、なんで!」
「いやーさ、これ内緒だよ? 本番ではあたしがくじ引いてその順でやるの」
「くじなのになんで俺がトリなん……」
「最後まで聞く! 演出の都合上よ。別にくじって言ってもランダムじゃなくてランダムな体なの。あたしが順番を決めてその通りくじを引いてその順番通り進めるってわけ。台本があるのよ」
いわゆるやらせか……
「だけどほら、最初に成功ばっかで後に振られるのばっかってのも冷めるでしょ? あたしなりに身辺調査をして可能性の高い人と低い人をいいバランスになるようにしてるの。しっかり告白する人が引き立つようにさ。そこで比山くんにはトリをやってもらおうと思って」
おいおい、それって地味な俺の前はとびきり派手な男にならないか。多分逆の意味で引き立てることになるだろう。
いや待て、ということは俺と青葉って可能性高いのか……?
「あ、ニヤニヤしてるとこ悪いけど、他にも何組かいるけどね。光くんと青葉ちゃんも正直成功できるかわからないのよね。あなたたちの距離感絶妙すぎ。だからもし振られちゃったら荒戸くんに飛び入りしてもらって私と付き合うことにして盛り上げを取り戻す予定だから期待しないででね」
ぐっ……俺の希望は早くも砕かれる。
マジで喜ぶ一歩手前だったがよく考えれば会長がそんな興の冷めるようなことするはずがなかった。
「まぁでもそのくらい分からない方が面白いから最後! わかった?」
「いやいやちょっと勝手に登録するわなんだで滅茶苦茶じゃないですか!」
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