充足して成仏しろ!
「いやーやっぱ勢いって大事だね。楽しみだなぁ」
「お前のせいだろ! っはぁどうすんだよまじで言っちゃったぞ! 勢いに任せてやることなんていいことないぞ……今から断るか? いや無理だな」
「勢いに任せなきゃできないことだってあるって。それでカプコンって何?」
何も知らずにこいつは……っ!
ただそんなことに俺は嫌々とも思いながらも、俺はこいつを成仏させるという目的を持ってからはもう全てを仕方ないで済ませられた。
犬の駄々と同じ、気にするだけ無駄だし付き合ってやろうとも思えた。
「カプコンってのはうちの学校の行事のイベントで、俺も詳しくは聞かされてないからよく知らないんだけど好きな相手に……告白するっていう……」
「あっ」
何かを察したみたいに黙りこくる。
「いや、いや、そんなつもりじゃ。ごめんね。本当ごめんね」
あぁそういや俺が自殺しようとした理由をこいつはもう知っていたんだっけか。そらこうなるわな、下手したら俺もお前の仲間入りだ。
成仏させるどころかミイラ取りがミイラになる。
「もういいよ。決まったものは仕方ないだろ?」
「いやでもさ、悪いよ。あたし本当に悪霊なのかも」
「だからってどうにもならないだろ。てかお前さ、自分では良い霊だと思ってんだろうけど、やってることは悪霊のそれと一緒だぞ」
「……え? うそ!?」
気づいていなかったようで、とても驚いてみせる幽霊の表情はとても死んだものと思えないほど豊かだった。
表情筋は生きてるんだな。
今日一日付き合って、てか勝手に憑いてきただけだが、その中でわかったがこいつの見せる喜怒哀楽は人間よりもはっきりしている。
驚きと疑問も多かったからこいつに至って喜怒疑驚哀楽ってところか
「まぁ説明するのもめんどいが、下手したら俺は新歓までの命ってことだな」
「だからやめてってそういうこと言うの。あ、あと新歓ってなに? 今日もなんか決めてたよね」
「あ、そういや説明してなかったっけ、新歓っていうのは新入生のための文化祭みたいな」
「おお! 面白そうなことやるんだね〜君の高校」
「ん……文化祭?」
一縷の可能性が俺の頭の中に流れ込む
「……何か思いついたの?」
「そうだ文化祭! これ体験すればお前も成仏できるんじゃないか?」
俺は嬉々とした表情で幽霊を見つめながら言う。
そうだ、青春スクールライフを満喫できずに死んでこうなってるなら、高校生活の醍醐味の文化祭を体験できればこいつも満足して成仏できるんじゃないか、そう考えた。
「おおー青春っぽい!」
「もちろんそれまでにも準備だったりなんだったり、楽しめるイベントはいっぱいあるはずだ。一ヶ月かかるのはもう割り切る。ただそれまでお前は高校生活っぽいことやりまくって充足して成仏しろ!」
「最後の一言は幽霊にとっては死刑宣告なんだけど……でもいいね! 楽しみだなぁ高校の文化祭。面白い?」
「あぁ高校生活の先輩の俺が言うんだ。こういうのは二年あたりが一番面白いはず!」
「やったー! うわー楽しみだなぁ。でも君も楽しむんだよ!」?
「はいはい、わかったよ」
もう覚悟の上だ。こいつを楽しませる。幽霊を成仏させるために幽霊と一緒に高校生活を楽しむという俺がまるで物語の主人公になったように 錯覚するほどの不思議な一ヶ月はこうして始まるだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます