回想 入学式後の夕方
俺が入学式の片付けを手伝わされていた時に起きた悲しい悲劇。
「ふむふむ、じゃあこれで進めましょう。あとは後夜祭のメインイベントをどうするかってところね」
会長の仲原乃々(なかはらのの)が廊下のど真ん中で入学式の片付けをしている俺らを横目に長くゴージャスな金髪とグラマラスなスタイルでそう言いながらこの学校で行われるある催し物のプログラムのチェックを行っている。
「てか毎年よくやりますよ。こんなの、後夜祭だって適当で良くないすか?」
「ダメよ荒戸くん。あなた今年から二年なのにそんな気だるそうにしちゃ。生徒会なんだからもっときっちりしないと」
「む、てか生徒会に関しては会長が無理やり僕を引っ張り込んだんですけど.……なぁ光なんとかしてくれよ」
生徒会庶務で中学時代からの友人である荒戸尚生(あらとなお)が紅白の幕を外しながら怪訝そうな顔をこちらに向けながら話しかける。
「俺なんか生徒会じゃないのにやってるんだぞ。ま、新入生歓迎会は俺もよくわからんけど」
「あらー光くんには感謝してるのよー。いつも手伝ってもらっちゃって」
「いやいやいつも無理やりじゃないですか、荒戸の友達だからとか言って!」
「そうかっかしないの。新入生歓迎会だって理由はあるし、後夜祭のプログラムだって決まったけど、それにはしっかりとした理由があるんだから」
そう企画書を映画監督のように丸めて持っている会長の言い分はまるで遊びで企画しているようで説得力がなかった。
「まず新入生歓迎会ってこの学校に入学した生徒の親御さんにうちの高校は明るいですよー安心ですよーって思ってもらうためにやっているの。これはあくまで伝統的行事だから手は抜けないのよねー」
俺の通う赤羽学園には毎年五月の連休の一日を使い、二、三年生主催で小さな文化祭のようなことを行う。出店もあるし体育館で各団体によるショーもある。
一年生に早く学校に馴染んで学校を楽しいと思ってもらうため、上級生が下級生を楽しませるミニ文化祭、それが赤羽学園新入生歓迎会。
新入生歓迎会、略して新歓はうちの名物でありこの一回多い分の文化祭を目当てにこの高校を受験する一年生も多い
「んで、その新歓はまぁわかりますけど、後夜祭なんていらないでしょ?」
俺は黙々と荒戸の外した紅白の幕から画鋲を取り外しながら荒戸の疑問に耳をそばだてる。
「なーに言ってんの! いるに決まってるでしょ。新歓本編は親御さんたち、後夜祭はあたしたちのためのイベントなんだから」
「でも、後夜祭なんて去年やってなかったじゃないですか」
荒戸はまた文句を言う、後夜祭、俺もそれは初耳だ。
一つイベントが増えるだけとはいえ、多分俺以上に雑務をやらされるんだろう。俺もなにかしら手伝わされそうで不安なんだが。
「だってちょっと出店やイベントやって終わりってつまんないじゃない! せっかくだから後夜祭使ってもっとみんな仲良くなってもらいたいから面白いこと考えてるんだよね〜」
面白いこと、この会長のそんな言葉からはすごい嫌な予感がする。
「ふっふっふーん! まぁまだ生徒会のメンバーにも内緒なんだけど今日は特別に見せてあげる」
会長は満面の笑みで丸めてた後夜祭の企画書と思われるものを伸ばした
「じゃーん『赤羽学園カップルコンテスト』、どうこれ? すごいでしょ!」
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