第115話 軍略
アルフレッドは咳払いし、改めて話を続けた。
「先陣を切るリオン達からの報告によって、次なる兵を送る。転移装置を使用するには大量の魔力が必要で、続けては使えないらしい。その辺りの調節はロキに任せるぞ」
「任せてもらおう」
良い笑顔でロキは返事をする。
サミュエルとシフの仲が進展しそうなのでご機嫌なようだ。
「城を落とし、皇帝を討つのはエリックにお願いしたい。ティタンは状況を見て援護を。リオンは戦況の把握に努めてくれ」
それぞれの細かい役割を渡された資料にて確認をしていく。
「父上、大丈夫ですか? こんなに兵を引き連れて行っても」
資料を見るに大多数の兵がヴァルファルに送られる予定だ。
そうなるとこちらの守りが薄くなる気がしてティタンは心配になる。
「大丈夫だ。こちらを守るためにパルス国やシェスタ国などに協力要請をしているからな。少なくともグウィエン殿は来てくれるそうだ」
シェスタ国ではなく、アドガルム国を守りたいらしい。
まさかこちらを選ぶとは。
「アドガルムが落ちたらシェスタも危ないという事で、王太子自ら志願したそうだ」
グウィエンの腕前は相当だ、だいぶ頼りになるだろう。
「ただ伝言があってな。無事にアドガルムを守りきったら、エリックの親友の座が欲しいという要望があった」
その言葉に先に反応したのは二コラだ。
「頭に虫でも湧いてるのでしょうかね、しつこい男だ」
殺気を隠しもせずに言い放つところから、かなり嫌っているのがわかる。
エリックを女性扱いしたのが気に入らないようだ。
「役に立つならばいいさ」
あくまで冷静に、何事もなかったかのようにエリックは言う。
「俺が皇帝の首を持ってくるまで城を守り切り、かつ自分の命もしっかり守れれば検討するつもりです」
「それでは緩すぎます、エリック様」
二コラは納得しないという顔だ。
「シェスタではなく、こちらを守ることを選んでくれたのだ。その意気には答えなくてはなるまい?」
エリックはふと小さく笑う。
「まぁシグルド殿もキールもいる。他にも先の戦を生き残った有能な騎士が大勢いるのだから、大丈夫であろう」
ロキとフェンが開発した魔道具で結界も張れる、大抵のものは阻めるはずだ。
「そうですね、後は父上がしっかりと生き残ってください。そうでなければ国が終わりますから」
エリックの言葉にアルフレッドは驚く。
「俺に何かあっても、お前がいるではないか」
「一応あなたはこの国の王として慕われていますので、亡くなれば士気に関わります。俺ならば立て直しも可能ですが、そのような事になったらレナンと過ごす時間が減ってしまうので、嫌です。国の事はまだまだあなたに任せますよ」
エリックはそう言うと宰相のヒューイに目を向ける。
「父上をよろしく頼みますよ。俺はまだ代替わりなどする気はありませんから」
「わかってますよ、エリック様。こちらはお任せください」
要するにアルフレッドに死なないで居て欲しいという言葉だ。
例え何があろうと王として、最後の砦として生き残れと言いたいのだ。
王は国の要で象徴、特にアルフレッドは親しみやすい王として民から好かれている。
「孫の面倒を見させる予定なのですからね、気合いを入れてくださいよ」
家族としても父に死んでほしくはない。
「まさか、もう?!」
世継ぎが出来たのかとレナンに注目が集まった。
思わぬ視線の集中に、羞恥で顔が赤くなり声も出せなくなる
「まだですよ。俺がこのような大変な時にレナンに負担を掛けるような事をすると思いますか?」
さり気なく抱き寄せ、皆の視線から隠すようにする。
(あり得そうだけど)
誰もが思ったけれどその言葉が発せられる事はなかった。
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