第10話 シェスタ国の王女
マオは特に出国準備もすることなく、ベッドで寝ていた。
「第三王子の妻か、なんていい響きでしょうか。きっとだらだらして過ごせるです」
たとえ仕事があっても他の王子の奥さんがやってくれるだろう。
王太子になるのは長兄のエリックだという噂だ。
とても優秀でほぼ確実だと言われているし、リオンの上にティタンという兄もいる。
つまりリオンに何かの順番が回ってくるのは相当後なはずだ。
「後は意地悪な義姉じゃないといいのですが」
パルスの王女とセラフィムの王女、一体どんな人なのか。
(まぁ適当にヨイショしておけばいいですかね)
どうせここの異母姉達と変わらないだろう。
王族なんてそのような者の集まりだと、マオは欠伸をする。
思わず出た涙を拭うとリオンから渡された指輪が目に入る。
「これ、売るといくらになるですかね?」
万が一アドガルムからも追い出されたりしたら、これ売って少しは生活の足しにしようと思った。
深い青色の宝石がついた指輪はキラキラと輝いており、それを見ながらマオは三度寝を決意する。
「面白くないわね」
マオ以外の王女達はマオが選ばれた事に不満だ。
「あれだけ強いのなら先に教えてくれればいいのに、絶対意地悪で言わなかったのだわ」
自分達がリオンと会うのを拒否した事は、スルーしている。
「でもなんでマオが? 本当にお父様の血を引いてるかの確証もないし、胸だって小さいのに」
マオは来た当初から小柄だったが、いまでもあまり成長していない。
ドレスを脱げば男の子といっても差し支えなさそうだ。
「あの子に人質の価値なんてないわよね、シェスタで大事にされてないもの」
「マオは本物の王女じゃないって事を皆で言えば、リオン様も考え直さないかしら?」
「リオン様と結婚すればアドガルムへ行けるし、ティタン様にも会えるわ。会うことさえ出来れば私達の魔法にきっと関心を持ってもらえるわ」
王女たちは皆回復魔法が得意だ。
騎士を癒やす聖女として、とくに王家の者は魔力も高い。
マオは魔力はあるが回復魔法が使えない事もあり、周囲から軽んじられる要因になっていた。
「マオを蹴落とした後は誰が選ばれても恨みっこなしよ」
「そうね。ゆくゆくはティタン様に選ばれるように。楽しみだわ」
強い騎士の番になることが女性の幸せだとシェスタ国の王女達は刷り込まれていた。
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