終幕 マッチョ・フレンズ・フォーエヴァー
雲の切れ間から光が刺す。
その光が一本の筋となって、スポットライトのように漢三人を照らす。額に、胸に、お腹に浮かぶ汗の粒が光に反射してキラキラと輝く。
筋トレを終えた三人は、くたくたになりながらも笑顔が絶えなかった。
「終わった……」
蝶介が空を見上げながら言った。雲はだんだんと姿を消し、青空がはっきりと見えてきた。最後まで残っていた雲が、マッチョが両腕を曲げてポージングしているように見えたのは気のせいだったのか、それとも歴代のマッチョ・キングたちが祝福していたのかはわからない。ぷっちょ君もまた、清々しい気持ちで空を、そして雲を眺めていた。
マザープロテインに取り込まれてしまったプロテインは、全て本来の持ち主の元へと帰った。ガリガリーズになってしまった全世界の住人は、元通りに戻ったのである。
「おお、マッチョに戻っている!」
「バンザーイ! マッチョ・バンザーイ!」
マッスルキングダムの住人もみんな元のマッチョに戻り、国中から歓声の声が上がった。そして早速、みんな筋トレに勤しむのであった。
☆★☆☆★☆☆★☆☆★☆
数日後。
夏の太陽が照りつける午前10時。
番所蝶介と海原秀雄はTシャツに短パンというラフな服装で夢見丘商店街を歩いていた。
金髪のオールバックに緑色のカチューシャのマッチョと、黒髪のおかっぱ頭に丸メガネマッチョ。街を歩けば誰もが振り返り、驚く。
もうすぐ夏休みも終わり。またまた、二人は朝から待ち合わせをしてジムに向かう途中だった。
「アニキ、昨日の『筋肉少年マッスル☆ビルダーズ』観ましたか?」
「おお、すごかったな。あそこでプロテインは反則だろ!」
「ですよね、やっぱり昨日の見所はそこですよね!」
二人は他の人が聞いてもさっぱりな会話を続けながら、笑顔で歩いていく。そんな中、向かいから三人のかわいらしい女子高生がやってきた。
黒髪のショートボブに黒縁メガネが印象的な城ヶ崎悠花。その隣には金髪お姫様の夢野李紗。さらには李紗の妹、夢野真弥。三人が揃って街を歩くだけで、道ゆく人は「うわぁ、綺麗な人」と振り返る。
「あら、蝶介と秀雄じゃない。また筋トレ?」
目の前を歩く筋肉少年二人に気づき、李紗が尋ねると秀雄が答える。
「ええ、今からトレーニングに行こうと思って! アネゴたちは?」
「私たちは三人でパフェを食べに行くところなの」
そうなんです! この間食べ損ねたものですから……今度こそは! と真弥が笑顔を見せた。
「……パフェはうまいが血糖値も急激に上がる。事前に難消化性デキストリンを摂っておくといいだろう」
ぼそっと蝶介が呟いたが、またしてもだれも反応してくれなかった。そのときだった。
「助けてくれ!」
突然五人の頭上にビリビリっと小さな電気のようなものが走り、青白く輝くワームホールが出現した。――異空間魔法。幸い、街を歩く他の人々には見えていないようだった。見えているのは蝶介たち五人だけ。
そこから慌てふためいた様子のぷっちょ君が飛び出してきた。そして見事に着地してマッチョポーズをとる。
「ぷっちょ君!」
五人が声を揃えてその名を呼ぶ。
「どうしたの? またガリガリーズ?」悠花が尋ねると、ぷっちょ君は首を横に振って、蝶介と秀夫を指さした。
「蝶介と秀雄にトレーニングのサポートをしてもらいたいって、マッチョがマッチョキャッスルに押し寄せているんだ! 頼むよ、マッチョキングダムに来て一緒にトレーニングをしておくれよ!」
――仕方ねぇなぁ、秀雄! 今日のトレーニングはジムじゃなくて、マッキンに行くか!
――はい、アニキ!
夏の太陽が照りつける午前10時。
彼らの夏はまだまだ終わりそうにない――
☆★☆☆★☆☆★☆☆★☆
<劇場版エンディングテーマが流れ、これまでの名筋肉場面が再生される>
劇場版エンディングテーマ「マッチョ・フレンズ」
歌:番所蝶介、海原秀雄、プリンス・マッチョ君
(コーラス):城ヶ崎悠花、夢野李紗、夢野真弥
筋トレが大好きさ(筋トレ ムキムキ)
筋トレは人生さ (プロテイン 忘れず)
筋肉は裏切らない 自分の弱い心に負けないで
ムキムキムキムキ 前向きに(筋肉 ムキムキ)
ムキムキムキムキ ひたすらに(目指せ マッチョ)
一緒に筋トレすれば ほら もう 僕ら マッチョ・フレンズ!
(マッチョ・フレンズ!)
僕らは 筋肉で 繋がっている(アーアーアー)
マッチョ・フレンズ・フォーエヴァー(フォーエヴァー)
李紗「いや! こんなコーラス絶対に嫌!」
劇場版 魔法少女マジカル☆ドリーマーズ 〜マッスルキングダムが大ピンチ! 筋肉魔法が世界を救う?〜 −完−
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