第6話 勇者パーティとアイドルについての考察
アレクとイヴァンの発声練習が元でノクタリア草原で起こりかけた
——少しは素材が取れるよう加減したが……駄目だったな。基本的に儂らの加減は加減の意味をなさないのか。
そういうわけで儂らは日が沈みきる前に商業都市プラナの宿屋へ戻った。
そして、『アイドル』修練のために思い切り身体を動かし魔力を放った身体を癒すために、早めに床へ着いていた。
アレクやイヴァンは、すでに夢の中。行儀よく並んでベッドで眠っている。
天才魔法使いである儂は、眠る二人の横で目を瞑り、頭だけを動かしている。
——考えることが山のようにある。まあ、退屈しなくていいんだが。
儂らは、世界平和維持機構によって勇者
機構は永世中立国ロンドアルド王国の王都ゼランにあり、勇者
なぜ、そんなものがあるのか。
というと、この世界には
魔王が生まれると、勇者も生まれる。
そして、何度も何度も繰り返される絶望と希望の中で、世界は、国家は、勇者が魔王を倒せるようになるまで待つことを、拒絶した。
勇者とその仲間たち、になりそうな若い芽を囲い込み、厳しい鍛錬と学習の場を与える——勇者
——儂もアレクもイヴァンのヤツも、誰ひとりとして親兄弟の顔なんざ覚えていない。
金欲しさに売ったのか、それとも使命に駆られて泣く泣く送り出したのか。
どちらなのかは定かではないけれど、恨みや寂しさを抱く以前の問題だ。
——顔も覚えていない親族など気にしてられるか!
少なくとも儂は、そういう無関心さで今まで生きてきた。
それに、元よりこの身に宿った魔力は強大で、養成機関に預けられなくても家族とやらに嫌厭されたであろうことは予測ができている。
——にしても、オーリーはあんな貴重な古文書と
寝落ちる前に湧いた疑問が、儂の目をうっすらと開けさせた。
視界に差し込んできたのはランプの灯。
その灯の下で布仕事をしているオーリーの背中だった。
「……絶対に皆さんをアイドルに……誰からにも愛され、好かれる……味方になってもらえるような、そんなアイドルに……」
ブツブツと呪文を唱えるように呟く背中は、どこか鬼気迫るものがあった。
どうしてオーリーがそこまでアイドルにこだわるのか。
——オーリーはアイドルにこだわっている、わけじゃない? 儂らをアイドルにしたがっている……? なんでじゃ?
真剣に考えようと寝返りを打った儂は、けれど考えがまとまる前に寝落ちてしまい、そして、朝が来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます