第1章 ④
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フェンスの前へと座り、煙草をぷかぷかと吹かす。
今日もまた雲一つない快晴で、心地よい風がつやつやとした黒髪を揺らした。
柔らかな日差しに男ーー雪坂は軽く笑みを浮かべる。
ここはとてもよい所だ。ただ、ここに煙草しかないのは少し残念に思うが….
ーーと、雪坂の笑みが消え、静かに屋上の扉に視線を移す。
ギィ……と屋上の扉が開いた。
扉の向こう側から入ってきたのは3人の男たち。
雪坂は興味なさげに男たちに目を向け、視線を戻した。
男たちも雪坂には気付いていない。
「それでさー隣のおっさんがカンカンになっておこっててさー、まじおかしくって爆笑しちまったよ」
「お前写真撮ればよかったのにそいつ」
「あーごめんごめん。そーいう余裕なくって」
「使えねーなあ、お前」
あはははは、と男たちの笑い声が響く。
と、1人の男が雪坂に気付いた。
「あっれー?何で俺ら以外の奴がここに居んのー」
「君ー、ここは俺たちの場所だから帰ってくれる?」
男たちは雪坂に近づきながらそう言った。
「……」
だが雪坂の表情は相変わらず無表情。
「おーい、聞いてる?」
「つーかさ、君見かけない顔だな。もしかして転校生?」
「……そうだけど」
少し冷たい声で答える。
「あの転校生か」
「へー、通りでこんなに顔が綺麗なわけだ」
「女子たちも騒いでたしな」
1人の男が雪坂の前に屈み顔を近付ける。
「しかしほんと顔いいなあ。女よりいい」
ニヤニヤしながら雪坂を覗きこんだ
「なあ…お前もしかしてヤるつもり?」
3人の中の内の1人がそう言った。
「ああ、こいつマジいいしな」
「マジかよ!そいつ男だろ?」
二人がゲラゲラと笑う。
雪坂は全く気にせずに煙草を口に運ぶ…運ぶ途中で目の前にいる男に煙草を奪われた。
雪坂は男を睨みつける。
「そんなに睨むなよ。すぐ気持ちよくなって病みつきになれるぜ?」
男は気持ち悪い笑みを浮かべ、そう言った。
「お前らは黙ってみてろ」
男は雪坂のネクタイをしゅるりと外しYシャツに手をかける。
ボタンが外されていくのを眺めながら、雪坂は違うことを考えていた。
(…なんだこいつら、意味分かんねえし。つーか煙草返せよ)
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