第4話 昼食イベント
第四話
その後何事もなく家に帰った。まあ、名前で呼び合うようになったとはいえ、話すことはそんなにないだろうと思っていたが、どうやらフラグだったようだ……。
「颯太くん! お昼、ご一緒させていただいてもいいですか?」
「へっ……?」
まさかそんなことになるとは思わず、驚いた声がでてしまった。
次の日の昼休み、購買で買ったパンを食べようとした時に、いきなり声をかけられた。え、もう桃華とそんな仲でしたっけ?
「駄目ですか……?」
「いや、いきなり言われたからちょっと驚いちゃって……。全然いいよ」
「やったっ」
そんな可愛らしい喜び方をする。こりゃあ男子が惚れるのも仕方ないわな。
そんな会話をしてると後ろから冷たい風が流れてきた。あれぇ? まだ冬は来てないんだけどなぁ? 躊躇しながらも体は動かさず頭だけガクガクと後ろに向けた。……そこにあったのはとんでもない眼力で俺を睨んでいる桜の顔だった。
「どうしたのー? そんな怖い顔で睨んじゃって……」
「べーつーにー?」
「なんか怒ってません?」
「怒ってない」
それをいう人は大体怒ってるって言われてるんだよな。また俺何かやっちゃいました……? あっこれだと俺、な◯う系主人公なっちまう。頭をフル回転させどうにか正解を導く。これは違う、あれも違う、それも違う、どれも違う! 仕方ない。理由ではなく解決策を考えよう。こういう時にイケメン主人公なら何をするんだ。「君が一番だよ?」とかか? 流石にそれは痛い……。どうしよう……。頭がパニックになった俺は勝手に、俺の手を桜の頭にのせて撫でていた。……?
「あっ……(やっちまったよ!)」
「……っ」
自分の行動に気がついた瞬間、『終わった』と思った。グッバイ俺の右手。
そう思ってチラッと愛の方を向いたのだが……。
「あっ…………」
桜は頬を緩ませていた。しかしもう一度見た時にはいつも通りの表情をしていた。見間違いだったのか、それとも……。まあそんなわけないよな。いつも俺に冷たい言葉ばっか言ってくる桜が俺が撫でて喜ぶはずがない。……だよな?
その後、桜はいきなり無言になり、一人で黙々と自分の弁当を食べ始めた。よくわからなかったが、さっきの怒りも消えたようなのでよかった。桜のことも心配だが大丈夫そうだ。そういうことで取り敢えず俺は桃華と昼食を取ることにした。
「やっぱり、桜さんと仲がいいんですね。頭を撫で合う仲のようですしっ」
「別にいつもしてるわけじゃないからね?」
「……羨ましいです」
「ん? なんか言った?」
「い、いえなんでもありません!」
「そう? それならいいんだけど」
色々と雑談を桃華としていたら、あっという間に時間が過ぎた。もう少しで昼休みも終わりそうだ。桃華も自分の席に戻った。もう少し時間はあるし、本を読もうかなと思ったら、なにやら視線を感じる。なんだろう? 耳を傾けてみると。
「あいつ、あの水島さんと一緒に昼食だと……?」
「俺たちの水島さんを返せ」
あ……終わった。そう言えば桃華はめちゃくちゃモテてた。普通に考えてそりゃあぽっと出の男があの四姫の一人と昼食を取ってるんだから、側から見れば面白くないよなぁ。これは後で尋問タイム始まるかな……。
◇
放課後部活もない俺は男たちから尋問されるのを防ぐためにダッシュで帰ろうとしたんだが……。
「ねえねえー」
「…………」
「ねえってばー」
「…………」
「ちょっと? 私貴女に話しかけてるんですけどー」
「……もしかして俺に話しかけてる?」
「ずっと呼んでたじゃん」
「いやあ、俺みたいなやつに話すやつはいないかなと思いまして……」
そう言って振り返るとそこには見たことない女子が立っていた。……誰だこの人?
「そう言えば、私の名前を言ってなかったね。私は桐乃明日香。貴女と同じ一年生だよ」
「えーっと桐乃さんは俺に何か用?」
「用はないんだけど、桜から貴方のことを聞いていたからさー」
「桐乃さんは桜の友達ってこと?」
「そうだよー!」
桜の友達か……。そう言えば桜の友人関係についてあんまり知らなかったな。桜が自身の友達を紹介することはなかったし。
(何か理由でもあったのだろうか……?)
まあそんなことを考えても仕方ないな。
「俺は桜からはどんなふうに言われてたの?」
「うーん……沢山話の内容をいうと怒られそうなんだよねー」
「それが一番気になるんだけど!?」
「少なくとも、そんなに悪くは言ってなかったよー」
「それならよかった……。……?」
そんなにってどういうことだろうか。なんか俺に対しての愚痴でも言ってるのか? ちょっと不安だなぁ。
「じゃあ、私今日は帰るねー。あ、折角だし連絡先交換しよう」
「あ、ああ」
そう言い俺のスマホに入っているNINEに新しく小悪魔のイラストのアイコンが追加されるのだった。小悪魔ってチョイスなんか、すごいな。
――――
最近少し忙しく更新が止まって申し訳ないです……。
新シリーズの異世界ものも興味が湧いた方は読んでいただけると嬉しいです。
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