8月15日

 僕たちはかばんに荷物をつめて、電車に乗った。

 電車に揺られながら楽しそうに鼻歌を歌う君がかわいくて、頭をなでた。顔を赤くしている姿もかわいかったよ。

 2時間くらい電車の中にいて。

 お目当ての海に着いたとき、君はあくびをしていた。

 病気で体が弱っているのもあるかもしれない。

 そう思って僕は、

「今日は疲れたから、もうホテルに行こう。ゆっくり休もうね」

 そういって、手をつないでホテルまで歩いていった。

 このじんわりと伝わる温かさも、そう遠くない未来になくなってしまうのか。

 そう思うと、鼻の奥がつんっとなった。でも、君の前では泣かないって決めたんだ。だから、グッとこらえて、君に笑いかけた。




「君を、失いたくない」

 そんな気持ちが夜になってふつふつとわいてきて。

 寝ている君の額に、そっとキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る