第44話 最終奥義と、パーティ結成

Side:スパロ


 なぜかベルベルと聖女様が俺とパーティを組むことになった。

 ナノが説得したらしいけど、どうやったんだろ。

 ベルベルは精霊の加護付きの杖、ガブリヨルを持っている。

 聖女様はなぜか馬鹿でかい十字架を持っている。


 ナノは俺には大剣を薦めてきたけど、今まで使ってた精霊の加護付きの剣にした。

 それと必中の弓。

 勇者の装備じゃないと言われたが、良いんだよ。

 戦いには使い慣れた物の方が良い。


「じゃあ、出発」

「えいえい、おー」

「見送りの皆さん、ありがとうございます」


 俺達はプランタートラックに乗り込んだ。

 アーティクル領までは一瞬だった。

 何か違う感がある。

 勇者の冒険てこんなだっけ。

 でも物語に移動中の事はあまり書かれてないんだよな。

 襲撃とかは書かれているんだけど。


「ナノ、これからどうしたら良い」

『人が集まったら。剣を振り下ろして、シャイニング・ファイナル・ブレードだ』

「それだけ」

『まあね』


 固く閉じられた門のある街に着いた。


『さあ、名乗りだ。邪悪ある所に勇者ありだ』

「分かったよ。言えば良いんだろう。邪悪ある所に勇者あり!! 開門!!」


「通用門からお入り下さい」


 なんだかな。

 これも違う。

 勇者なら大手門を開けて颯爽と入って来るものだろう。


 プランタートラックから降りて、通用門から街に入る。

 門番は疲れ切った表情だ。


「人を集めろ邪悪を払う」

『おっ良いねぇ。その調子だ』


 やりたくはないが、こういうのも大事だろう。

 そして、広場に人が集められた。


『精霊より賜りし聖剣セクスカリバーを見よと言って』

「精霊より賜りし聖剣セクスカリバーを見よ!」


 俺は剣を抜いて掲げた。

 剣より光が迸る。

 どよめきが起こった。


『邪を払う最終奥義シャイニング・ファイナル・ブレードと言って剣を振り下ろす』


 へっ、それだけ。

 それだけでアンデッドが全滅するの?

 じゃあ、ベルベルと聖女様のいる意味は?

 まあ簡単に済むなら別に良い。


「邪を払う最終奥義シャイニング・ファイナル・ブレード!」


 剣を振り下ろしたら光が飛び散って雷が落ちた音がした。

 光は止まらない。

 どんどん、飛んで行く。

 何時まで振り下ろした格好をしてやりゃ良いの。


『剣を切り返して、見えない敵を斬って』


 言われた通り剣を引き薙ぎや袈裟斬りなどを繰り返す。

 剣が振られるたびに雷が落ちて、光が飛び散った。


 いい加減疲れたので剣を収める。

 鞘から盛大に煙が上がってスパークが起きる。


 民衆がどよめいた。

 聖女様が十字架を振り下ろすと、白い光が出て鞘に当たり、普通の状態に戻った。


「ナノ、これで良いの」


 俺は小声で尋ねた。


『上出来だ』


「勇者様万歳!」


 歓声が上がる。

 これで何も起きていなかったら叩き殺されるな。


 街から早く出たい。

 プランタートラックの所に戻ると、荷台の土が全て無くなってた。


 ええと、どういう事。


Side:ハイチック8000


「冒険の旅に行きませんか」


 と畑の前で俺はイユンティちゃんに声を掛けた。


「申し訳ありませんが、わたしには聖女としての御勤めがございます」

「お子様ランチ1000食無料券を付けましょう」

「えっ、行きます」


「じゃあ、癒しの十字架、ぽよよんクロスを受け取ってよ」


 畑に十字架の樹を生やした。


「力を感じませんね」


 うん、ホログラフィ機能しかないから。


「おっベルベル。ちょうど良い」


 ベルベルが畑に収穫にきた。


「何?」

「スパロの所にある杖を持って冒険に出ないか?」

「あの杖が凄いのは知っているけど、危なくない?」

「万全にサポートするよ。それにスパロが偉業を成し遂げた時に、隣にいないと、置いていかれるぞ」

「えっ」

「ただの幼馴染として忘れ去られるかもな」

「駄目! そんなの駄目」


「じゃあ決まりだ」


 そして街で儀式を行った。

 やった事はホログラフィと音を出しただけだ。

 そしてプランタートラックに積んであるナノマシンをアンデッド駆除ドローンとして飛ばした。

 境界の虫ドローンも段々と範囲縮めているから、ほどなくしてアンデッドは駆除できるだろう。


 見せ場を作る為に、強そうなアンデッドをわざと残しておいた。

 これから、スパロパーティの活躍を見せられる予定だ


「ナノ、ゾンビキングの目撃情報が」


 そら来た。


『最終奥義を直接打ち込まないと倒せないって言って』

「そうなの」


『そういう事、危険はないよ。安心して』


 スパロと俺達は兵士を率いて出撃した。

 さあ山場だ。

 派手に演出するぞ。

 スパロにはわざと呪いを食らってもらおう。

 そして真の力に目覚めて撃破するんだ。

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