第21話 紛争と、スポーツ

Side:スパロ

 いよいよ、紛争が始まった。

 敵の兵士が詰めかけ、村の人口は何十倍に膨れ上がった。


「あはははっ」


 俺は敵の総大将のゲールを見て笑い転げた。

 あの髪はなんだ。

 横ロールじゃないか。


『ほらよ』


 突風が吹いた。

 ゲールの髪の毛が飛ばされる。

 なんだかつらか。


「ぎゃはははっ」


 俺はもっと笑った。

 まるで焼き畑だ。


「笑ったな。許さん」

「兄さんを笑うな。ぷっ」


「フィンチイも笑ったじゃないか。ぷっ、駄目だ。おかし過ぎる。あはははっ」


 ベルベルは口に手を当てて体をくの字に曲げて悶えている。

 ベルベル笑ったら良いよ。

 我慢は良くない。


「さっさと始めるぞ」


 ゲールがかつらをつけ直して笑いが治まった。


「戦争の勝者の権利を提示して下さい」


 審判役の騎士がそう言った。


「俺達は精霊の畑だ」

「俺は金貨1万枚と隣の村」


「双方とも合意しますか」

「する」

「するよ。<ゴーレム作成>。俺はこのゴーレムで戦う」


 手筈通り畑からゴーレムが生まれる。

 俺はゴーレム作成は使えない。

 ナノが適当にやってくれる。


「スパロ、お前いつの間に魔法使いになった?」

「兄さん、あの杖はきっと魔道具に違いないよ」

「まあいい。こっちにもゴーレム作成を行える魔法使いはいる」


「では始めます。対戦者は名乗りを上げるように」


 教会の騎士が手を上げた。


「ティトマウス騎士爵スパロ」

「アーティクル軍兵士ナトリックス参る」

「では始め」


 教会の騎士が手を上げた手を振り下ろす。

 相手は大剣持ちの剣士で、巨漢で強そうだ。


 ナトリックスはゴーレムを無視して俺に駆け寄り大剣を振りかぶる。

 ゴーレムが素早く動き割り込んだ。

 そして、振り下ろされた大剣を摘まんだ。

 大剣が摘まんだ所から、クッキーでも砕く様に割れる。


 ナトリックスは飛び退いて間合いを取った。

 ゴレームが追撃する。

 ハエでも叩くようにナトリックスを叩く。

 ナトリックスは叩きのめされた。


 審判の騎士がナトリックスに駆け寄り、戦闘不能を告げる。


「アーティクル軍魔法騎士ヘロンだ」


 次の対戦相手が出て来た。


「では始め」


「<ゴーレム作成>」


 運ばれた材料が組み上がって、金属のゴーレムが出来上がる。

 メタルゴーレムだな。

 大きさはナノのゴーレムと変わりない。


 ナノゴーレムは手招きした。

 メタルゴーレムがドスンドスンと足音を立てて歩く。

 重そうだけど遅いな。


 ナノゴーレムとメタルゴーレムは組み合った。

 メタルゴーレムの腕が軋むような不気味な音を立て、バキッと折れた。

 そして、ナノゴーレムはメタルゴーレムの首を掴むとヘロンに向かって投げた。

 ヘロンは下敷きになり、やっぱり戦闘不能に。


Side:ハイチック8000


【女騎士発見。うひょう、そそるなぁ。くっ殺せとか言わせてみたい。あっちには女魔法使い。ナノ様の杖は大きすぎます、入りませんとか言わせてみたい。夢が広がる】

【起きて見る夢は妄想ですね】

【余計なお世話だ。捕虜を問答無用でスキャンする法律とかないよな】

【ありません。それにこれはスポーツです】


 忘れてた。

 スポーツだった。

 対戦は退屈だ。


 最初の対戦相手は戦士だった。

 生身の人間がロボットに敵うはずはない。

 一撃で終りだ。


 次の対戦相手はゴーレムか。

 パワーと強度はどんなものかな。

 組み合うがてんで話にならないな。


 腕をへし折って投げて終わりだ。


【ゴーレムの性能分析は出来たか?】

【ゴーレムの性能は人類が宇宙に進出し始めた頃のロボット程度です】


 ぼろいな。

 雑魚と言っても良い。

 このんなのが千体いたところで何ともない。


 どうせなら、エロいロボッ子なんか出して来いよ。

 それなら負けてやらんこともない。


【ゴーレムをスキャンして、エロ目的に使用しても、罰せられないよな?】

【ドン引きです】

【どっちなんだよ】

【商品としてデザインを模倣して販売しない限りは合法です】

【やった。現地の魔法使いにエロゴーレムを作ってもらおう。夢が広がるな】


【その情熱を通信機能の回復に奉げて欲しいですね。その場合成功率が、0.00001%上がります】

【嫌なこった。エロパワーをエロ以外に使うなんて願い下げだ】


【これだから脳スキャンAIは】


 呆れられたが構うものか。

 俺の楽しみを誰にも否定させたりはしない。

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