自傷進学校

@kdsc3035

第1話

桜が徐々に色づいていく。今年もまた出会いと別れの季節がやってくる。人々は新しい出会いに胸を膨らませ,仲間との別れを惜しむ,だが私にそんなものは関係ない。私の人生は桜のように鮮やかに色づくことはなかった。それはこれから先も変わらないだろう。

そんな気分で学校へ向かう。都内の偏差値60ちょっとの自称進学校。今日は一学年の修了式。いつも通り歩道橋を渡ろうとすると,1人の黒髪の少女が川に入っていくのが見えた。入水自殺だろうか??私には死ぬ勇気すらない。ずるい。そう思うと体が動いた。気づけば彼女の腕を思いっきり引っ張っていた。彼女はすぐさま腕を振り払い、再び川に入ろうとした。が、周囲に集まってきた大人達が警官に通報し、結局,彼女は保護された。

朝から自殺未遂を見て、なんだか気が滅入った私は、服もびしょびしょだったし家に帰った。そのまま修了式に行くことなく、私の一学年は終わった。

数日後、自殺未遂の少女を助けたとして,地域の新聞に載ったり、ニュースになったりしたが、私はその度に胸が痛んだ。私はただ自分のために、彼女を生かしてしまった。いや、生かしたというよりは、殺してしまったようなものだ。

新学期、二学年の初日、私は新聞やニュースのように「勇敢だ!」だのなんだの言われる事はなかった、むしろ「え、何?人助け?ww」とヒソヒソ言われた。でも、その方が心が軽かった。この事はもう忘れよう。

そう思ってた矢先,転校生が入ってきた。長めの黒髪で顔立ちのすっきりした美人。彼女はまさしく、私が先日殺した少女だった。

「く…桑と言います…」ボソボソした声で自己紹介を済ませた。

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