異世界にクラス転移したが与えらたのは、はずれスキル『メモ』。実はメモに書いたことは完璧に記憶できるので難易度Sな魔法も丸暗記で使えます~純粋田舎娘と勇者少女と艶やかエルフとヤンデレストーカーと共に~
プリントを後ろに回して!!
第1話 弱者はいつも弱者
「ねぇ、キモイ。 佐伯また私の胸チラ見してくんだけど」
クラスの女子カースト最上位の
あぁまた始まる――
瀬川の恋人である賀口は嬉しそうにこちらに歩いてくる。
「そうか、まだ殴られたりないみたいだな」
おまけに外面の良さから先生からの評価も高い。
しかし、その本性は支配欲の塊であり自分に反抗するものは容赦なく潰すとんでもない奴だ。
そして俺は賀口に反抗したただ一人の男――らしい。
ある時俺は、歩きスマホして車に轢かれそうになっていた瀬川を助けた。それは良かったのだが助け方がすんごく悪かったのだ。いやまあ、童貞の観点から見ると幸運でもあったのだが。
俺は瀬川に飛びついた拍子にその胸を思い切り揉むことに成k……揉んでしまったのだ。――――それがすべての悲劇の始まりである。
それを聞いた賀口が怒り、いじめが始まった。瀬川の命を救った俺が得たのは賀口の女に手をだしたという誤った事実と、このさき一生触るこのない女子の胸の感触だけであった。
そんなわけで今日も今日とて教室の隅でぶん殴られていると――
突然、教室の床から眩い光が放たれる。
「魔法…… 陣?」
アニメや漫画で見たことのある魔方陣らしきものが床に出現した。
それは教室中に広がりその上に立っていたクラスメイト達は謎の光に包まれて次々と消えていく。
ただ一人俺だけを残して――
そう、俺の足元にはギリギリ魔方陣が届いていなかったのだ。
「乗るしかない……このビックウェーブに!」
俺は魔方陣に飛び込んだ。
気が付くとそこはふわふわとした真っ白な空間で神々しい光に満ち溢れていた。
どうやらクラスメイト全員ここにいるようで、皆がそれぞれの見解を口にしていた。
一部のいかにもラノベとか読んでそうな奴らは何となく予想がついていたような顔をしていたが―― 俺にもなんとなくわかる。
「クラス転移ものって…………こと!?」
俺は一人でキモイ笑みを浮かべていた。すると――
「ようこそおいで下さいました。 選ばれし23人の子供たちよ」
どこの誰だかわからない(おそらく女神)声がその空間に響きわたり、俺たちの前に絶世の美女(おそらく女神)が現れた。
「私は女神ピアノ。 あなた方にとある世界を救っていただきたいのです」
メガミキチャー!
ん? ちょっと待てよ。 今さっきあの女神様23人の子供たちって言ったよな。
うちのクラスは全員で24人なんだが…………
丁度その時女神さまと目が合ったので、俺は満面の笑みを浮かべてみる。すると女神さまは驚いたあとに戸惑ったようにこちらに苦笑いをしてくれた!
俺の足元に魔方陣なかったからそうかもしれないとは思っていたが。
………………ん~どうやら俺はお呼びでなかったっぽい。
ピアノと名乗るその女神は魔王に苦しめられている世界を救ってほしいというテンプレートな状況を説明した後、能力を授け始める。
「瀬川 英子さん。 あなたの能力は魔眼【ヒスイ】です。 あなたがその魔眼で見つめた相手は魔力が飛躍的に上昇することでしょう」
オタク文化に造形の浅いものたちは状況をうまく理解できていない様子であったが、ノリの軽い奴らが多いためかこの非日常に楽しみを覚えているようだった。
「みてぇ、シン~。 めっちゃいい色になったくない? これでカラコンいらずなんだけどぉ~」
瀬川は賀口に自身の魔眼を見せつける。
賀口はこの状況を楽しんでいるようだった。
「では続いて賀口 心さん……」
女神は賀口の近くに訪れると目をつぶり額に手をかざす。
「………………これは!?」
女神は目を見開き動きを止める。
「あなたにはとてつもない器があります。……あなたには、英雄の血脈が流れております」
「あぁ? それはどういう能力だよ」
女神は少し息をのむとゆっくりと話し始める。
「あなたはあらゆる武器・魔法・スキルを使いこなすことができ、精霊魔法と呼ばれる原初の魔法を使うことができるのです」
クラスからは流石、賀口といった賞賛の声が上がる。
「へぇ~ わるくねぇな」
「さすがシン!! チョーかっこいい!!」
そう言って瀬川は賀口の腕に飛びついた。その時瀬川の胸が腕に押し付けられて、柔らかそうにつぶれるさまを俺は見逃さない。
「これで全員でしょうか? では転移を――――」
「あの~」
俺はもうほぼその先の展開は予想していたが、一応手を挙げてみる。
「…………はぁ、なんですか?」
女神ピアノは今までの優しい笑みとうって変わってとんでもなく面倒臭そうに俺に視線を向けてきた。
「俺はまだ能力をもらってないんですけど……」
一応言ってみる。
「あの、あなたの足元には魔法陣は展開されていませんでしたよね?」
俺は無言でうなずく。
「それじゃあなたは選ばれていないわけです。勝手に入ってきたあなたに授ける能力なんてありません」
クラスの奴らはクスクスと笑い出す。特に賀口とその仲間たちは嬉々としてその状況を楽しんでいた。
「そんな、別に強くなくたっていいから何か特殊な能力を一つだけでも」
自分は物語の主人公になれるような人間ではない。むしろ俺は人として最底辺だと思っている。
顔も性格も頭もよくない。優秀な姉に比べて…………救いようのないクズだ。家族は俺が消えたって関心を向けたりはしないだろう。
でも別世界でやり直せるチャンスがあるとするならば、ここで我儘を言ったっていいんじゃないだろうか?
「あのですね……私も仕事なんです。 こちらの利益を見込めない相手に貴重なチート能力なんて授けれるわけないじゃありませんか」
「そ、そんなのやってみなくちゃ分からないじゃないですか!? 」
「わからない人ですね――もういいです、ではこの能力を授けましょう」
女神は一瞬のうちに俺に近づくと俺の額にその白魚のような手を引っ付ける。その時ほんの一瞬だが彼女の豊満な胸の谷間があらわになった(やったね!)。
「はい。 終わりました――では転移を始めます」
え? 今までは能力を授けられた人はおしなべてまばゆい光に包まれていたのに、俺の時は何の変化も訪れなかった。
女神は俺に背を向けると宙に浮かび上がる。
「さぁお行きなさい選ばれた子供たちよ! 剣と魔法の世界で勇者となり魔王を打ち滅ぼすのです!!」
「え? 俺の能力はなんなんですか!?」
女神は渾身のため息を吐くと、貼り付けたような作り笑顔を向ける。
「あなたのステータス欄のところにメモ機能を追加させていただきました! きっと旅のお供になりますから有効にご活用してください」
その瞬間まるでダムが決壊したかのような勢いで、クラスメイト達が笑い始める。
《あとがき》
少しでも気になったらフォロー、評価、コメントして頂けるとすっごく嬉しいです。
今日の20時35分に第2話も公開されます!!!!!!!!!
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