第88話
予想外にセバスが口を開いた。
「ワッフル様が勝つだろう」
「おーっと!強気ですね!」
「もしかして!セバスとワッフルは何度も試合をしてきたのか!?」
「何度も訓練を重ねてきた」
セバスは強さも戦い方もプリンの上位互換だ。
セバスと闘い慣れた上でプリンと戦えば、楽に決まっている。
「……ずるくないか?斥候の英雄相手に訓練を重ねたらプリンの攻撃は読みやすいだろう」
「日々研鑽を積むことにずるいも何も無い」
「そうだけど!」
「それだけではない。ワッフル様は『見切り』のスキルを持っている。剣聖であるワッフル様の固有スキルだ」
「慣れている上に固有スキルの効果で命中率と回避やガードの確率が上昇するか」
「そうだ」
「私はワッフル様に100万ゴールドを賭けている」
「そっちの方がずるいだろ!」
「何故か多くの者がワッフル様に賭けない。不思議なものだな。だがそのおかげでワッフル様が勝てば賭けの取り分は多くなる」
「えー、そろそろ始まっちゃいますよ。行って来ます」
チョコが走って闘技場に向かった。
「それでは、プリン選手VSワッフル選手の試合、スタートです!!」
試合開始直後にプリンが手裏剣を投げるがほとんどを避けられ、剣ではじかれた。
1発だけ手裏剣がワッフルの太ももに軽く突き刺さった。
「手裏剣は決定打にはなりませんわ!」
ワッフルが両手持ちの剣を振りかぶってプリンに斬りかかった。
「知ってるわ!」
プリンは素早く刀を抜いて応戦する。
プリンの方が動きは速い。
だがワッフルは最低限の動きで攻撃をいなしていく。
プリンが押されているように見えた。
プリンは速度強化を、ワッフルは身体強化を常時発動させる。
ワッフルの身体強化はおそらくレベル10だ。
プリンが後ろに飛んだ瞬間に手裏剣を投げる。
10投げたうちの1発だけがワッフルの腕に刺さった。
ワッフルは腕に刺さった手裏剣を抜きながら剣に力を込める。
「これで終わらせますわ!オーラブースト!」
一定時間攻撃力と防御力をアップさせる固有スキルか。
プリンのソニックタイムと同じで長い間の発動は出来ないだろう!
「私も本気で行くわ!ソニックタイム!」
プリンはソニックタイムを使うしかない!
そうしなければ対抗できないのだ。
お互いが神々しい光を放ち、剣と刀で打ち合うたびに空気が振動する。
スピードを上げたプリンの連撃をワッフルは少ない動きで対処する。
プリンを覆う光は消え、ワッフルだけが固有スキルを維持していた。
「はあ、はあ、勝負ありましたわね」
「はあ、はあ、まだ終わっていないわ」
プリンが手裏剣を投げるがすべて避けられ、打ち落とされた。
「ここからは一方的な戦いになりますわ」
「そろそろね」
「体が、痺れ」
「手裏剣と刀に痺れの効果を付与しているわ。もっとも効果が弱いから効いてくるまで時間がかかったわね」
「く、負けませんわ!」
「それは私のセリフよ!」
こうして体の痺れたワッフルと弱ったプリンの戦いは持久戦に突入し、お互い決定打が無いまま防具を傷つけていく。
男性に多大なサービスをするように服が破け、最後はお互い同時に倒れた。
「この勝負、引き分けです!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「こりゃリベンジマッチが必要だぜ!」
「布防具とタイツ装備は至高だ!」
「裸より興奮するぜ!」
「剣闘会は明日も朝10時から開催です!S席チケットは10万ゴールド!A席チケットは3万ゴールド!B席チケットは5000ゴールドとなります!明日のメインは美人エルフ!アーチェリー選手の戦いが見られます!ナニが起こるか分かりません!ぜひ!お見逃しなく!」
男性客が盛り上がった。
「おいおいおい!アーチェリーのアクシデントが見られるって事か!」
「参加するしかねえぜ!」
「S席を狙う!いや、取ってやる!」
「S席の申し込みが殺到した場合チケットの競売が行われます!そちらもお楽しみください!」
10万ゴールドから更に価格を引き上げるのか。
ま、転売溶かされるよりは真っ当だな。
高い金を払う人がいるおかげでB席チケットを安く販売できるんだ。
3日目は俺とセバスの戦いでそういうサービスは無いけど大丈夫か?
【剣闘会2日目】
戦いは進み、メインのアーチェリー&モグリンVSダッシュドラゴンに騎乗したダッシュドラゴン部隊10人の戦いが始まる。
S席は男性を中心に完売し、男性客はもたれかかるように座って視点を下から見上げるようにしていた。
多分、期待しているような事は起きないだろう。
「試合開始です!」
ダッシュドラゴン部隊が散開しつつモグリンに迫る。
「モグリン!土魔法よ!」
「きゅう!!」
「アローラッシュ!」
モグリンの放った岩の弾丸が連続でダッシュドラゴンを捕える。
アーチェリーのアローラッシュも連続でダッシュドラゴンを狙う。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
まるでダブルガトリングのような猛攻によりダッシュドラゴン部隊はどんどん倒れていく。
だが2人がダッシュドラゴンから飛び降りて槍を構えた。
「まだだ!俺の『不屈』ですべてを超えていくうううううう!」
「俺の『スピードスター』はそれさえも超えていくうううう!」
流石ダッシュドラゴン部隊の精鋭だ。
2人共あの猛攻を切り抜けて固有スキルを発動させたか。
ダッシュドラゴン部隊の精鋭はダッシュドラゴンから降りても強い。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
2人の生きざまを見て、会場から歓声が上がった。
「きゅう!!」
「アローラッシュ!」
2回目の攻撃で『不屈』を使った男が倒れた。
『スピードスター』で途中まで攻撃を躱していた男も1度攻撃を受けると連撃を受けて倒れる。
「……」
「……」
「勝者、アーチェリー&モグリン!」
モグリンは頭の上にアーチェリーを乗せて立ち上がった。
そして前足をフルフルと振った。
更に歓声が巻き起こった。
その時、その瞬間をS席にいた男性客は見逃さなかった。
男性客の視線はアーチェリーのパンツを捕える。
「パープルか」
「ああ、まるでアーチェリーの青空の髪色を連想させ、それでいて少しだけ幻想を抱かせる青色に似た、だが決して同じではない。似て非なるもの!」
「まるで澄み渡った青空のように俺の心を溶かしていくぜ」
「「これが、俺達の希望か」」
アーチェリーは少し無防備すぎる。
観客席の方を見て手を振っている。
アーチェリーはどれだけモグリンを鍛えてるんだ?
モグドラゴンは魔法スキルが苦手なはずだけど土魔法のレベルが異様に高い。
そう言えばたまに土魔法を見せて使わせていたな。
後、解説の俺とセバスはほとんど空気だった。
明日は俺とセバスの試合か。
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