第78話
俺達は城にたどり着いてすぐに錬金術漬けとなった。
うん、まあ、予定をオーバーしてレベル上げをしてたし、予想通りではある。
錬金術師のみんなが俺の肩を叩いた。
「すまない。予定が遅れているのにレベル上げを手伝ってくれて、今から錬金術まで手伝ってくれるとは助かる」
みんなとは前以上に仲良くなり、何でも言い合えるようになった。
錬金術師の男は笑顔だが、俺の肩を掴む力が強い。
「まだ何も言ってないけどな」
「今日はここで食べていきましょう。錬金術に疲れたらベッドもお風呂もあるわ。一か月くらいゆっくりして行きなさい」
「泊まり込みで錬金漬けかよ!」
「アキの高速生産は俺達の希望なんだ。回復力の高いアキなら魔石無しでもたくさん作れるだろ?」
「そこそこの物をたくさん作れるぞ?俺帰らなくていいのか?」
「王から許可は出ている。『頑張るのだ』だそうだ」
「ふむふむ、帰らなくていいなら長期戦を始めるか。あれだよな?魔物は出てないんだよな?錬金術だけやっていれば大丈夫なんだよな?」
「「大丈夫!」」
俺はその日から本当に泊まり込みで錬金術を続けた。
メイドさんがシーツの交換や掃除、風呂の用意までしてくれて俺は錬金術だけを続けた。
一応みんなも気を使ってくれて、やることリストを渡されて、リストの中から好きな物を作っていい事になった。
俺の飽きっぽい性格はみんな知っている。
俺が飽きないように配慮してくれた。
たまに道路の補修や家作りも差し込んで太陽の光を浴びられるようにしてくれたし、ソロで橋の拡張工事も行い、跳ね橋も直し、溜め池の土木工事などやることの範囲はかなり広かった。
意外と楽しい。
◇
【一か月後】
みんな頑張って仕事を終わらせて、クラフトの結婚式を行った。
俺や王も出席して、正装したクラフトと奥さんはかなり様になっていた。
クラフト、ちゃんと寝て起きてきっちりした格好をすればイケメンじゃないか。
そして更に3日後。
俺は王の『ポーションを積んでおきたい』の一言で今ある薬草をすべてポーションに変えていた。
他の錬金術師もクラフトを休ませる為にみんなで働く。
クラフトが部屋に入って来た。
「みんな、苦労を掛けたのだ」
「良いっすよ。これからはパワーアップした俺の力を活用してください」
「俺もパワーアップした!」
「私も負けてないわ」
「特にアキ、色々と長い目で見て楽になるように助けて貰い感謝しているのだ。アキの為に武器を作りたいのだ」
「武器なら大量に作って貰っただろ。爆炎ナイフはかなり役に立った」
「専用武器を作りたいのだ。スライムメタルを使った武器なのだ」
全員が俺とクラフトを見る。
その武器は俺の固有スキル、スライムウエポンと相性が良い気がする。
「スライムメタルって、スライム鉱石から不純物を取り除くのににめちゃめちゃ手間がかかるだろ?」
「だが、作りたいのだ。鉱石集めは手伝って貰う事になるが、鉱石さえあれば作れるのだ」
周りにいた錬金術師も盛り上がる。
「俺も手伝います!」
「私もやるわ!」
「鉱石からスライムメタルを取り出すまではみんなでやろうぜ!」
「もちろんそのつもりなのだ。王にも許可を取ってあるのだ!」
話はすぐに決まった。
俺とクラフトはすぐにスライムの洞窟に向かった。
そこにスライム鉱石もあるのだ。
◇
洞窟にたどり着くとダッシュドラゴン部隊の兵士が出迎えた。
「アキ殿!お疲れ様です!中にいるスライムの処理はもうすぐ終わります!中にお入りください!」
ダッシュドラゴン部隊に案内されて採掘ポイントまで潜る。
洞窟を見ると岩に所々つぶつぶがあり、そこが光を反射して輝いていた。
岩に少量しかないつぶつぶがスライムメタルでほぼ岩だ。
「爆炎で一気に行く」
「頼んだのだ」
俺は拳の紋章で壁を爆発させる。
クラフトが鉱石を見て頷く。
「回収して帰るのだ」
「……もう終わりか?」
「終わりなのだ」
「「お疲れさまでした!」」
ダッシュドラゴン部隊が整列して敬礼する。
俺とクラフトは手を振って帰った。
「これで仕事は終わりか」
「しばらく休んでいくのだ」
「おお、丁度いい所にいた」
王が速足で近づいてきた。
「……嫌な予感がする」
「私もなのだ」
「クラフト、少し前に大量のスライムが納品されてな。スライムタイヤを作ってほしいのだ。馬車用が2500セット、荷車が5000セットだ。アキ、魔物の出現情報が出ている。山岳のワイバーン、森に現れたゴブリン軍、そして村周辺で複数体のキングベアーの目撃情報が出ておる。ここに集結したダッシュドラゴン部隊と共に倒して欲しいのだ」
大量のスライムはダッシュドラゴン部隊が倒した物だろう。
あれじゃね?魔物が発生すれば倒すけど、その素材は錬金術で加工される。
つまりだ、錬金術師はしばらく忙しい。
スライムメタルを加工する暇はしばらくないだろう。
いや、そんな余裕が出来るのか?
「アキ殿!ご命令を!」
ダッシュドラゴン部隊の隊長と分隊長が並んで敬礼した。
「森のゴブリンを殲滅して来て欲しい。終わったら王の指示に従って欲しい。他は俺が行って来る」
「「了解しました!」」
ダッシュドラゴン部隊は優秀だ。
最低限の指示だけで動いてくれるし口やかましく言ってこない。
本当に助かる。
「行って来る」
「武器は後になるだろう」
一生作れない説もある。
「無理しなくていい。一番後に回してくれ。行って来る!」
ワイバーンにキングベアーとキングボアか。
戦った経験のない相手だ。
楽しみでもある。
俺は遊ぶようにジャンプしながら走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます