第65話

 俺は武器を作り続けて眠り、朝日と共に目を覚ました。


 食堂に行くとグラディウスがいた。

 食事はバイキングスタイルなので盛ってグラディウスの前に座る。


「おはよう」

「おはよう」

「やっぱ籠城なんだよな?」

「そうなるねえ」

「周りの斥候を仕留めて来ていいか?」


「……いいけど、今日中に戻って来るよね?」

「夜戻って来て良いなら毎日行って来る」


「グラディウス様、部隊の治療をお願いします」

「いえ、我らダッシュドラゴン部隊の消耗の方が甚大です!」


 言い合いが始まった。

 そして他の兵士がグラディウスの元に集まって来る。


「グラディウス様!斥候の再編成の件でお時間を頂きたいのです!」

「グラディウス様、衛兵の配置についてご相談があります!」

「部隊の装備はもう限界です!迅速な対応をお願いします!」


 グラディウスは要領がいい。

 みんな相談に来る。

 グラディウスがいれば数日で解決するだろう。

 クラフトはしばらく休みなしか。

 

 それにアーチェリーがいれば空から見回りが出来る。

 周りの見回りは楽にはなるだろう。


「グラディウス、矢の予備が無くなって来たわ」


 アーチェリーも来た。


 食堂に来た王を見ると王も囲まれている。

 王は食堂で食べず部屋まで食事を持って来てもらう事も出来ただろう。

 不満を吸い上げる為に、責められるために出てきた感じだな。

 大人だ、自分が損をしても矢面に立つ、か。


 王と3公爵はしばらく忙しくなるだろう。


 グラディウスが大きな声で言った。


「アキ!一人で行動する前にプリン様とチョコ、それと変態仙人とマッチョ、ダッシュドラゴンを連れて出来る事をして欲しい。後は任せるよ!」

「な!……いや、そうだな、出来る事はやろう」


 ダッシュドラゴンの隊長が俺に目を向けた。


「アキ殿の下で働けることを嬉しく思います!」


「治療や武具の修理もアキに任せるよ!アキの錬金術はレベル10だからね!」


 グラディウスが更に大きな声で言った。


「食べながら話をしようか」

「光栄です!」


 俺の周りにダッシュドラゴン部隊の兵士が囲むように座る。

 話しずらい!


「おほん、まず、俺が出来る事は光魔法レベル3、それと錬金術は出来るけど、クラフトから素材があるか聞いてくる必要がある。素材に余裕が無ければ戦場から武器や鎧を集める所からだな。それと斥候か」


「クラフト卿から素材の件を聞いてきます!」


 1人の兵士が立ち上がって聞きに行った。

 動きが速い、優秀だな。

 不明な部分をどんどん潰して実際に動くか。


 優秀な者は批判をするわけではなく、自分で解決できる問題を見つけて自分で動くのだ。


 こんな優秀な兵がいるのに結果を出せないライダーな何なんだ?


「アキ様、意見を宜しいでしょうか?」

「言って欲しい」

「最初に治療をお願いしたいのです。体さえ動けばアキ様の手足となって働けます。まずは兵の健康と考えます」


 一人で攻めようと思っていたけど、サポートをする事になりそうだ。

 優先1が治療で優先2が武具の修復か。


 ダッシュドラゴン部隊は強い。

 数は減ってしまったけど、万全な状態に持って行こう。


「分かった。ミルクさんの隣でものまねをして回復魔法のレベルを上げたい」

「すぐに連絡を取ってきます!」


 兵士が食堂を後にした。

 動きが速い。


「まずは、しっかり食べよう」


 俺達は食事を摂った。



 戻って来た兵士は俺の食事が終わるまでずっと待っていた。

 少し食べずらかった。

 話しかけてきても良かったんだけどな。


 俺がスプーンを置いて水を飲み干した瞬間に兵士が話しかけた。


「報告します!素材は戦場から自力で調達して欲しいとの事です!」

「報告します!ミルクさんから、いつでも来て欲しいとの事です!」


「私は戦場から武具を回収してきます!」

「プリンや」


 俺が言う前に兵士が先回りする。


「プリン様、チョコさん、変態仙人さんとマッチョ様さんは私から同行してもらうよう話をして出発したいです!」


「頼む」


「けが人はここに残れ!それと壊れた武具は交換しあって出発する!」


 そう言って兵士たちは出て行った。

 話がサクサク進みすぎる。

 楽だ。


 俺はけが人と一緒にミルクさんの所に向かった。



「アキ君、おはよう」

「おはよう」


「ご飯は食べたのか?」

「うん、食べながらやってるよ。隣、座って」


 俺は長い木箱に座ったミルクの隣に座る。

 ミルクさんは俺に張り付くようにくっ付いた。


「次、行くね」

「けが人を俺の前に並ばせてくれ!」


 ダッシュドラゴン部隊が素早く整列した。


「ヒール!」

「ヒール!」


『光魔法レベル3→5』


「おお!楽になりました!ありがとうございます!」

「良かった、次に行く!」


「ヒール!」

「ヒール!」


『光魔法レベル5→6』


 どんどんレベルが上がる。


「ミルクさん、光魔法のレベルはどのくらいなんだろ?」

「7だよお」

「そっか」

「次、いくねえ」


「ヒール!」

「ヒール!」


『光魔法レベル6→7』


「ヒール!」

「ヒール!」

「ヒール!」

「ヒール!」

「ヒール!」

「ヒール!」


『光魔法レベル7→8』


「え?」


 レベルが7よりを超えて上がった!

 今までのものまねならミルクさんのレベル以上は上がらなかった。


 でも、レベルが上がった状態を予測できるようになっている気がする。

 いや、気のせいか。


「どうしたのお?」

「何でもないです。どんどん行こう!」


 俺は何度もヒールを使った。

 ミルクさんが魔法を使えなくなっても使い続けて、MPが切れるまで使い続けた。




 光魔法がレベル9まで上がった。

 間違いない!ものまね極は、レベルが上がった自分自身を予測してレベルを引き上げている!


 ものまね極はものまねの向こう側が見えるんだ!


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