第11話 天然と腹黒の戦い

今、ブロント子爵邸では小さな争いが起こって居る。



「ルカ君、君がアリスを大切に思ってるのはわかる。だけどな、アリスはこの家の宝だ!そう簡単に君に渡すわけにはいかない!」

「あのですね、お父様?僕とお父様でちょっと解釈違いがあると思うんですよ?」

「お義父様?!私はまだアリスを嫁にやった訳では・・・!」



そう、昼ドラであるあるの、娘が婚約者を連れて挨拶するために実家へ帰って来て父親と婚約者が対立する

あのシーンが現在ブロント子爵邸で起こって居る。どうしてこうなったのか、それは5分前に遡る・・・




◇◆◇




私は、脱出後美少年により連れて来られた馬小屋でうっかりお父様と目が合ってしまい、

美少年を道連れにブロント子爵邸に帰って来た。


そして今はいつも楽しくみんなで話しながらご飯を食べるダイニングルームで昨日何が合ったのかの質問という名の尋問が始まる。いつもは温かく穏やかな気持ちで居るはずの食堂内は静まり返って居てどこか緊張感のある空気が漂って居る。



「では始めに、アリス、この少年は誰かな?」

「えっと、名前は・・・」

「ルカと言います。ルカ・リリーアル。生まれはしがない平民で年齢は今年で10になると思います。両親は去年馬車事故で亡くなり、今は妹と二人暮らしです。」



答えられず私がおどおどして居るとすかさず自ら自己紹介をしてくれる。


かなり淡々と言うがかなり大変な家庭環境だときいて居る限り思った。

まだ10歳の子供が妹と二人暮らしなど家事などは勿論金銭面でも厳しいだろう。



「ルカ君と言うのか。アリスとの関係性は?」

「えっと、私が誘拐された時に助けてくれたんです!彼が居なかったら私は今頃・・・」



冗談じゃなく本気で彼が助けてくれなければ私が無事に脱出するのは無理だっただろう。

本当に感謝してもしきれない。そう思うと唐突にお礼を言わなければと感じ私はルカの方を見た。



「あの、改めてルカ君、助けてくれてありがとうございました!」



精一杯の笑顔で感謝を告げるとルカは少し照れくさそうに小さく「どういたしまして」と言った。

性格はなかなか特殊だけど根っこは優しい子なのだとわかる本当に素直な少年の顔をしていた・・・と思う。



「・・・誘拐、ライの魔伝鳥での報告は本当だったのか、」



父様がぽつりと呟いた独り言に出た『魔伝鳥』と言う言葉に私は反応した。

なんとも異世界ファンタジー感のある名前なのだろうと一人脳内で大興奮していたが、

空気的にも顔に出していい雰囲気じゃないので頭の中だけで留めておくことにした。

いつかそれとなく聞いてみよう。



「っと、アリスは助けてくれた彼に恋をしてルカ君もピンチを共にしたアリスが気になる・・・って感じかな?」

「????????」

「はっ?えっ?」


何がどうして私が彼に恋することになるのだろう。確かにルカは顔がいい、けど恋愛対象では無い。

いや、さっきの照れた顔にはキュンとくるものがあったけどね?あれは不可抗力。みんなときめく筈だ。



「あの朝日の下で抱き上げられ幸せそうに微笑む姿は完全に恋人同士の距離だろう。」

「いや、ちがいますからっ!」




◇◆◇




として冒頭に至る・・・のだが、この状況は話を聞けない状態になって居る父様が話を聞ける状態戻るまで続きそうだ。ルカもそれを察したのか目のハイライトが消えて、死んだ様な目をしてしまっている。時々ルカが助けを求めてくるが私でも今の父様は手に負えない為首を横に振るとルカは明らかに絶望した顔になった。


そんな時この地獄を終わらす救世主が現れた。



「・・・一体何をしてるんだ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る