14 お昼休みを攻略したいです!
こんにちは、みなさん。
前にもお伝えしたと思うのですが、わたしが今一番大変だと思っている時間がいつか分かりますか?
そうです。お昼休みです。
どこでどうご飯食べたらいいか分からないんです。
ですが、お昼休みは毎日やってくるんです。
「しかし、今日のわたしは一味違いますっ!」
見つけました。
この状況を打破する方法を……!
わたしは横の席に座っているセシルさんに声を掛けます。
「セシルさん」
「……なに」
読書に勤しんでいたセシルさんがわたしの方に視線を向けます。
「ご飯一緒に食べましょう」
「……記憶喪失?」
シンプルにヒドイこと言われてます。
「いえ、記憶はあります。大丈夫です」
「私、ご飯は食べないって言った」
ふっふっふ……知ってます。知ってますよ。
前回もそれでお断りされましたから。
ですが、ここに打開策を見出したのです。
「大丈夫です、セシルさんは食べなくても。わたしが隣で食べてますので」
そうです。
要は、ぼっち飯だと思われなければいいのです。
仲睦まじく友達と一緒にいるように見られたら、それでいいんです。
あ、もちろんセシルさんがお話してくれるのなら大歓迎ですけどね。
「……えっと……」
おお……考えてくれていますよ。
自分から言っといて何ですど、即拒否される覚悟もしていたので意外です。
これはもしかすると、もしかするかも……?
「――あっ、エメちゃん♡ご飯まだー?よかったらミミアと一緒に食べない?」
「ッ!?」
あわわわわっ!
な、なぜわたしの所にミミアさんがっ……!?
陽キャ女子大勢力の中心に住まう彼女が、どうしてこんな陰キャの僻地に……!?※エメは混乱しています。
とうとうお昼休みを使ってでも、わたしからギルバート君との情報を引き出しに来ましたね……!!
「いえ、わたしはこれからセシルさんとご飯を……」
「んー?セシルちゃん、ご飯食べるとこだったの?」
ミミアさんがお弁当も何もないセシルさんを見て首を傾げています。
「食べない」
「って、言ってるよー?」
ああっ!
ミミアさんの聞き方が悪い!
そしてセシルさんも全然フォローしてくれないっ!
「あはっ。それじゃあ一緒に食べようよ、エメちゃん」
ずいっ、と体を寄せてくるミミアさん。
おお……大きな胸の迫力も相まって、圧力が半端じゃありません。
しかも私の席は窓際の左後方……逃げる場所がありません……。
「おい、ラピスの元にミミア様が現れたぞ……」
「とうとうセシル様だけでなく、ミミア様も毒牙にっ……!?」
前のヨハン君とマルコ君は相変わらず変な誤解を……!
ど、どどっ、どうします……。
わたしはミミアさんを敵に回したくないのですっ。
「あっ、急用を思い出しました!」
「え、いきなり?ご飯食べた後で大丈夫だよぉー」
くっ、やはり道を空けてくれる気はなさそうですね。
かくなる上は……!
わたしは後ろを振り返り、窓に手を掛けます。
――カラカラ
「え、エメちゃん?窓開けるほど部屋の中暑くないと思うけど……」
「今すぐ行かなければならないのです」
「そこから出る気なの!?」
ええ、ここしか逃げ場がないのですから仕方ありません……!
「――ちょっとあんたっ!危ないでしょっ!普通に廊下から行きなさいよ!」
シャルの怒声……!!
いや、待ってください!
この前、窓から降りてきたのシャルだよねっ!?
なんでわたしだと怒るの!?
「――何かで目立たないとあの人は満足できませんの……?」
あ、リアさんにもあらぬ誤解が……。
そんなつもりないのに……。
「いや、これが窓からじゃないと間に合わなくてですね!」
「どういう状況!?」
困惑するミミアさんをよそに、わたしは窓の淵に足を掛けます。
「
わたしの両脚に魔力が集中します。
よし、これで着地の衝撃吸収は問題ありません。
そのまま窓の外へ!
――ガンッ!!
「あうっ!!」
出て行こうとしたら、頭がぶつかりました!痛いですっ!
な、なぜ……。たしかに窓は開けたのに……。
「え、岩……?」
なぜかわたしの目の前の窓だけ、枠内を岩によって埋め尽くされていました。
あれ、この魔法とっても既視感があるんですが……。
「
窓に向けて手をかざしていたのは、やっぱりセシルさん!
「セシルさん!なぜ防御魔法を!?」
「……“危ない”って」
ああ!そこを聞いてくれたんですかっ!
ですがわたしはピンチですよ、これっ!
「あはっ。ねー、みんなこう言ってるんだから大人しくしよー?」
ああっ、ミミアさんの天使のような笑顔がわたしの近くに……!
もうこうなったら……!
わたしは改めて岩だらけになった窓に向き直ります。
岩の……綻びは……。
「 ここですねっ!――
今度は右腕にも魔力を集めます。
「えいっ!」
中心から数センチ右下にズレたポイントに拳を叩き込みます。
――ドンッ!
――バラバラ……。
繋がっていた岩は脆くも崩れ去っていきました。
「おいおい、なんかバカ力で岩破壊したぞ……」
「やっぱりラピスって脳筋なんだな……」
どんどん、不名誉な勲章を受けている気がしますが……仕方ありませんっ!
脱出ですっ!
今度こそわたしは窓から飛び降ります。
重力に従い、体が急降下します。
――グギッ
「あ、いたっ……」
着地の瞬間、足首に痛みが走りました。
魔術による腕力強化に気を配りすぎて、脚力が疎かになってしまいました。
ま、まあ、問題ありません。
このままどこかへ雲隠れしちゃえば……。
「ありゃ。なに、エメちゃんケガしたのー?」
「ひぃぃ!ミミアさん!?」
なぜもう、わたしの隣に!?
「やだなあ。ミミアも魔法使えるんだからアレくらいの高さなら平気だよ?」
「窓から飛び降りてきたんですか!?そんな非常識な行動をしてはいけません!」
「や、エメちゃんがそれ言う……?」
ミミアさんは困惑顔です。
「と、とにかくわたしは先を急ぎますのでこれで……」
「ちょーっと。待ってよ。その足じゃ危ないよ?」
退散しようとしたわたしの腕をミミアさんが掴みます。
「だ、大丈夫です。これくらい平気です」
「いーから、いーから」
するとミミアさんは屈んで、痛めたわたしの足首に手をかざします。
「
ぽうっ、と温かい光が足首を包みます。
みるみる内に痛みが引いていきます。
「これは、回復魔法……ですね」
「うん。ミミア、攻撃も防御もできないことはないんだけど、なぁんか相性合わなくてねぇ。回復魔法が一番得意なの」
魔法分類の得意・不得意は性格による影響が大きいと聞きます。
攻撃魔法なら相手を傷つけたい性格、防御魔法なら自分を守りたい性格、回復魔法なら他人を癒したい性格。
もちろんこれはかなり大雑把な括りであり、全員が全員当てはまるものではありません。
例外はいくらでもあります。悪魔で傾向の話です。
ですが、回復魔法が最も得意で、わたしのことを気遣ってくれるミミアさん……。
もしかして、わたしの勘違いで本当はただ優しくしてくれるだけなのでは……?
「はい、もう大丈夫。痛くないでしょ?」
「は、はい……ありがとうございますっ」
「えへへ。どういたしまして」
ニコッと優しく笑ってくれるミミアさん。
も、もしかしてミミアさんならお友達に……?
「――君たち姉妹は、窓から飛び降りてくるのが恒例なのかい?」
背後から掛かる男の子の声。
こ、この声は……。
「あっ、ギルバート君だぁ。こんにちわぁ」
ミミアさんの笑顔がわたしに向けるものと変わります。
や、やはり……ミミアさんは……。
こ、この状況……!一番危険ですっ!
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