第203話 一生気付く事は出来なかった
◆
私シャルロット・ホーエンハイムはカイザル様に対する世間の評価があまりにも低すぎる事に苛立ちを感じていた。
私が少し前までカイザル様の事を誤解していたのだから同罪であろう。
少し前まで【帝国の闇夜】だなんて二つ名で呼ばれていていきっていた自分が恥ずかしく思えて来る。
それは覆しようの無い過去なのだが、過去は償えることができ、未来は違う道を歩むことができるのである。
そもそも世間一般なカイザル様の評価は一部(あの日のパーティーに参加していた貴族達)を除いて未だに『魔術も碌に扱えない無能』『かといって武術や剣術に秀でているわけでもない無能』『にも関わらず性格が最悪の無能』という評価をされているのが、私には歯がゆくてたまらない。
しかしながらカイザル様本人がそれを望んでいるのであれば私がとやかく言う事ではないだろう。
「あ、カイザル様ぁっ!! おはようございますっ!! 今日は私の身体で凝り固まった物を柔らかくするマッサージをいたしましょうかっ!! あ、ちなみにカイザル様さえ良ければ毎日でも構いませんわよぉっ!!」
「……朝からうるさいぞ。 少しは静かにできないのか? てか何でまだここにいるんだ? お前」
そしてカイザル様が私に教えてくれたものがもう一つだけある。
それは、あの日カイザル様を襲撃した時に私を氷の牢獄へと閉じ込めたまま置き去りにしてくれたからこそ気付くことができた私の性癖である。
今まで私は弱い者をいたぶる事に興奮を覚えていた為Sだとは思っていたのだけれども、まさか真の性癖はSではなくМだったとは、あの日カイザル様に教えてもらえなければ一生気付く事は出来なかったであろう。
あぁ、今カイザル様が私に向けている冷たい視線だけでもう……っ!! 私には最高のご褒美でありご飯を何杯でも食べれてしまいそうだわぁっ!!
あの時カイザル様が私を氷の牢獄へ閉じ込めたまま放置し、再び訪れるまでの一週間、他の仲間たちは氷の中で一人一人と死んでいく中私だけは自身の魔力を操作してどうにかこうにか生き残る事ができた。
氷の牢獄に閉じ込められているためまともな詠唱はできないのだけれども原初の魔術と呼ばれている部類であれば何とか行使できたのは幸いであった。
とは言っても所詮は原初の魔術であり幼子が最初に魔術を覚える為に魔力の流れを掴む目的として教わるような魔術とも呼べないような、そよ風を操ったり、蛍程の光を操ったり、湿度を上げたりというようなものばかりなのだが、ようは原初の魔術も使いようである。
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