第202話 悪趣味
そしてゆっくりと、着実に地力をつけていき、憎き奴らを片っ端から潰していく予定であったのだが、我のこの算段はあっけなく崩れ去ってしまったようである。
しかしながら我もただやられるだけというのは言語道断である為、今行使できる全ての魔術、全ての魔力を使って最後まで抵抗してやろう。
「どうやら我らに歯向かう事を決意したのは良いのだが、もう既に貴様はどう足掻こうが我らには勝てぬ」
「そんな事はやってみなければ分からぬではないかっ!!」
「いいや、分かるよ。 何故ならば我が主であるカイザル様から頂いたこの魔道具【死霊捕獲器】でもう既にお主は捕獲しておるからの。 この【死霊捕獲器】なんだが、一定ランク以下の死霊系の魔物はそのまま捕獲でき、ランクが高い死霊系も魔物は相手を弱らせるか、意思を挫くかすれば捕獲できるようで、どうやらお主はその一定レベル以下の雑魚であったようだなっと…………それで、捕獲完了したあとは、確かここのボタンを押すと五センチサイズの破壊不能の効果を持ったガラス玉に封印されると……こうかね?」
「は? おいっ!! やめろっ!! やめろぉぉおおおおっ!!!!」
流石にそんなガラス玉に封印されるのだけは阻止すべく、先程から幾度となく攻撃魔術を行使しているのだが死霊捕獲器はヒビ一つ入る事も無く、あっけなく我はガラス玉の中へと封印されてしまうではないか。
「おぉおっ!! 出て来た出て来たっ!! これはこれは、実に面白いではないかっ!! 良い趣味になりそうだっ!! しかも、いくら金銭を積もうが手に入れる事が出来ない唯一無二、世界で一つのガラス玉とは……コレクター心を擽るではないかっ!!」
「……我からしてみれば悪趣味にしか見えぬがのう。 まぁお主が楽しそうならば良いのじゃが…………おぉ、そうじゃそうじゃっ!! 早急に手を下さなければならぬような悪党は大体成敗し終えてたので、ここらで聖王国が諸外国に隠して来た死霊集まる地域に行ってみぬかっ!?」
「ふむふむ、明らかに我の持っている死霊捕獲器を使って一気に浄化して片づけてしまおうという魂胆は透けて見えるが……間違いなくそこでしか手に入らないレア死霊系の魔物がいるであろうから、今回だけその提案に乗ってやろう。 終われば帝国の死霊系の魔物集めだなっ!! どうせ帝国の悪党たちはカイザル様が放っといても潰してしまわれるであろうしな」
そんな彼らの会話を聞きながら、これから先、数百年または数千年という永久とも思えるような長い時間、我という存在が消滅するまでこのガラス玉の中に閉じ込められるのであった。
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