第137話 逃がすなど絶対にあり得ぬ
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ガイウス陛下は本当に私の事を助けたいと思って行動してくれているのかもしれないのだが、それ故に私はガイウス陛下に対して怒りの感情が湧き出て来てしまう。
もう少し、それこそあと一か月でも早くガイウス陛下が視察に来ていただけていれば、恐らく私はプレヴォに慰み者にされる事も無かったであろう。
今からではいくら何でも遅すぎるとしか言いようがない。
どうせあのプレヴォの事である一週間もしないうちに再度私の元へと訪れて、次はガイウス陛下に邪魔をされないようにプレヴォの邸宅に連れていかれてしまうのであろう。
それこそ、その日が明日である可能性だってあるのだ。
確かに離れた者と会話できる【念話】という魔術は脅威であり、それだけで伝令や使い魔を利用して情報を伝達するという時間を省けるという事は即ち、聖王国から帝国へと情報を伝えるという手間を省くことが出来る為単純計算で今までの約半分の時間でカイザル様は聖王国へ駆けつける事ができる。
できるのだが今から帝国の魔術学園にいるカイザル様とやらを呼び寄せ、どれだけ早く駆けつけようがどう考えたって間に合わないのである。
今更遅すぎる。
なんでもっと早く来なかったのか。
助けるのならば助けるで、ガイウス陛下が『カイザル様が来るまで俺が匿おう』というくらいの事を言いなさいよ。
などと心の中でガイウス陛下に八つ当たりしてしまうのだが、皇帝陛下が聖女と言えども所詮はただの孤児でしかない私を匿う事などしてしまった場合はどんな噂が立つか分からない為そんな事できないことくらい私だって理解している。
そしてだからと言ってガイウス陛下の護衛の何人かを私に付けてくれたとしても他国の貴族であるプレヴォから私を守ることなど出来ない事も。
もしそこでプレヴォに楯突いた場合は外交問題になり要らぬ火種を生みかねない。
「それで、俺は誰を匿えば良いんだ?」
「そこの聖女と呼ばれる女性、ヒルデガルドです」
「まったく……また面倒な事を。 まぁでも俺が教えたストレス発散方法の結果であるのならば責任は俺にもあるわけで……。 まぁ、外交問題にならない程度に程ほどにな? あと、腐っている人間を見つけたからこそこういう面倒な事に首を突っ込んでいるのであろうが、潰すと決めたクズはしっかりと潰してこい」
「当然でございます、カイザル様。 なんなら今すぐにでもプレヴォの邸宅に乗り込んで潰したい衝動を抑えるのが大変な程滾っておる。 逃がすなど絶対にあり得ぬ」
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