光が刺して未来を裂いて
なんだってこう<外環の狩人>というのは神出鬼没であるのか。レオン・レッドウッドは説明できる自信がない。
今だってそうなのだ。大人しく魔導と魔術の恩恵のなか寝転んでいると不意にその男は姿を現し、こう云ったのだ。
「おいおい、随分と派手にやったもんだな」
アッシュのものでもない聞き覚えのない声が頭上から降ってくるとレオンはそちらに目を向け、声の主を確かめた。男はレオンの真横に立つと随分な毛量の栗毛をわしゃわしゃと掻きながら店内を見回し、大きく溜息をついた。そして「みんなご苦労さま」と、先ほどの轟音から身を隠すように、思い思いに机の下に潜った店員達へ声をかけたのだ。
「適当なところで切り上げて大丈夫だから。あとは俺がやるから休んでいてくれな」
男は続けると腰の左右に一振りづつ刺された長剣の柄をトントンと軽く叩き「さてと。坊主、大丈夫か?」と、精悍だがどこか人懐っこい面構えに笑顔をこぼした。
アッシュが施した恐らくアウルクスの治癒術で傷が塞がりつつあるものの、それでも血まみれになったこの姿を眺めて笑えるのだ、レオンの横にしゃがんだ男はこういった状況になれている。きっと、恐らく、火をみるよりも明らかにレオンの傷はこの男にとって、かすり傷程度のものなのだろう。
「はい、なんとか大丈夫です」と怪訝な顔で返したレオンは身体を起こそうとするが、レジーヌの云う通りで傷が少し開いてしまいそうになる。
「無理はしなさんな。まだ寝転がってな。せっかくの<癒しの御手>が効かなくなっちまうからな」
「はい……」
「ところで坊主——」
「レオンです。レオン・レッドウッド」
「おう、そうだったか。すまん。レッドウッドの息子か。俺はショーン・モロウだ」
「あなたも<外環の狩人>?」
「も?」
「ええ——」レオンは小さく頷くと自分が突き破った硝子窓に目を向けことの顛末をショーンと名乗る男に語った。
「なるほどな。それで俺の店がめちゃくちゃってわけか。合点がいったよレオン」
ショーンはやはり笑うと「まだ寝てな」とレオンの頭を撫で付け「弟はまだ頑張ってるみたいだしな、任せとけ俺がなんとかしてやる」と自信満々な笑顔で云った。
幅広の足回りをした濃紺色のトラウザーの裾は同じ色の脚絆が巻かれ脚元の自由が確保されている。見上げれば、そんな出立ちが印象的だったが対面すればそれは、身に纏った黒の外套の所々に縁取られた青い装飾布へ目が行くことだろう。腰の両脇の長剣は使い込まれているらしく、柄に撒かれた布は所々擦り切れている。随分と戦い慣れている様子を伺わせた。
レオンはそんなショーンの姿へ安堵したのか先程までの怪訝な顔はなく、苦痛に苛まれながらも強がり笑って見せることができた。だから「ありがとうございます。僕も後から向かいます」と片目を瞑って片手を上げてみせたのだ。
ショーンはそれに目を丸くすると「おう、そうか。そうだったな。レッドウッドの奴らは骨太だもんな。待ってるぜ魔術師」と、軽くレオンの掌を叩くと「行ってくるぜ」と、二振りの長剣を抜き放ち窓から跳びだした。
※
——数刻前 シェブロンズダイナー入口。
アレクシスが鎧戸へ手をかけようとしたその時だ。
「もう!」と次にアレクシスは顔を歪め、自分が散らした木端に顔を歪め扉をあけた張本人を一瞥した。それはアッシュ・グラントであった。レオンを寝かせ外に向かおうとしたアッシュは、窓の向こうへエステルの姿を認めると焦り外に出たというわけだ。「エステル!」と名前を叫び飛び出したアッシュをアレクシスは嘲笑うように眺めた。
「いつからそんなに良い仲になったのかしらねアッシュ・グラント。その生娘に命を救われて、その気になったの? どっちにしても——」
そう云うと赤の始祖はアッシュの背に隠れカミルの容態を診る赤髪の魔導師へ目をやり「——私が居るというのに、その不遜な態度は気に入らないわね」と整った端正な顔を再び歪めた。
気が付けば北風が暗雲を連れて緩やかに駆け抜けていく。いつの間にかに空はどんよりとした。垂れ込んだ暗雲の切れ目から幾筋かの陽の光が通りへ射し込むと隠れた何かを探し出すかのよう舐め回しながら這ってゆくのだ。
瞬く間にシェブロンズを襲った騒動は周囲から人を遠ざけ、すっかり通りには人の影が無くなった。残るは遠巻きにヒソヒソと「あれが始祖?」と騒めく警備兵達とアッシュとエステル、失神から立ち直ったカミルの姿であった。
アッシュ達は沈黙の中、眼前のアレクシスを鋭く見据えた。蠢く陽の筋の中に佇む始祖の一挙手一投足に注意を払った。アレクシスの陶磁のように白い肌は、その日差しに晒されるといっそうと白さを浮き彫りにした。音なき音をたてながら流れてゆく陽の筋が、よる辺のない沈黙を敷き詰めるなか堪らず口を開いたのはアレクシスだった。
「ところで——アッシュ・グラント。あなた、<憤怒>に『人間をやめたのか?』と訊ねたけれども、あなたこそどうなの? あなたは<外環の狩人>をやめたっていうの? 以前のあなたから感じた色気が全く感じられない。無味乾燥——酷いものね」
そう云うと、目を細めたアレクシスは鋭く赤瞳の瞳孔を細め「そんな、あなたには興味がないのだけれども」と吐き捨てた。
「なんの話ですか?」アッシュは狩猟短剣を逆手に構え前へ突き出した。
「それは冗談?」とアレクシスは冷ややかに短剣を一瞥した。
「だから、何がですか? あなたは以前の僕のことを知っているようですが、でも、きっと良くない知り合いだったのですよね?」
「そう。<大崩壊>で何もかも失ったというのは本当のようね。以前のあなたは、もっと美しかったのよ。私を屈服させるくらいにね———あなたと交わした剣戟は最高の気分だった———良くない知り合い? そうね、あなたとは命を奪い合うほどに良くない知り合いだったわ」
顔を恍惚とさせたアレクシスは、所々思いに耽る様子を見せた。そして左の指を鳴らすと、青い粒子を呼び出し握りしめる。果たしてそこには黒鋼のエストックが握られた。
アッシュはその様子に(あの人も狩人なのか?)と固唾を飲んだ。だとすると、刃を交えればタダでは済まない。そんな予感が頭をよぎる。
※
失神から立ち直ったカミルへ肩をかし、ゆっくり立たせたエステルは強がる小さな魔術師へ「無理はしないで」と小さく声をかける。
垂れ込める暗雲が織りなす陽の筋はアッシュの背中の向こうのシェブロズも舐めていくとボロボロの店内を露わにした。エステルは先ほどから気になっていたのだ。割れた硝子窓の向こうに見え隠れした長い黒髪。見覚えのある佇まい。私をネイティブと呼んだ女。すり鉢の底から助け出してくれた恩人。アッシュはハーゼとの大立ち回りの後、戻ってくると一目散に彼女の元に急いでいた。
きっと何か事情があるのだろうと、何も訊かずに外で負傷者の救護に当たっていたから確証はない。が、あれはきっと吟遊詩人のアオイドス。そうでなければ、彼女に瓜二つの女性だということになる。
もしそれがアオイドスなのであれば、何故彼女はこの事態を静観していたのだろうか。何故彼女はこうも節目節目に姿をそこに置くのだろうか。エステルはアオイドスとアドルフを見かける度に同じようなことを心に思っていた。そこはかとなく、監視されているような感覚、思い違いだと云い聞かせるが、ついぞその思いが払拭されることはない。
「ちょっとアッシュ・グラント。これはどういうことなの?」
粉微塵となった鎧戸の向こうからそう云って駆けてきたのはエステルが気にした彼女だった。白い外套、長い黒髪に整った顔。しかしそれは明らかに、決定的に、アオイドスとは異なる人物だった。それはレジーヌ・ギルマンだ。
エステルは目を丸くし彼女を追った。
アレクシスを鋭く見据えながらアッシュの傍にたった彼女は、エステルへ「初めましてエステル」と微笑むと「そう怖い顔をしないで。私はレジーヌ・ギルマン。アッシュとは今日初めて会ったのだけれども、命を救われたからね。その借りを返そうってだけ。とって食べたりしないわ」と一向に驚き顔のエステルへ片目を瞑ってみせた。
「あら、お次は狩人様のおでまし?」と、エストックの切っ先をレジーヌに向けたアレクシスが嘲笑気味に云う。
「ええそうね。そう云うあなたは、何かしら? 化け物?」
「あら、失礼なレディー。そこの冴えない黒髪の男と、あなたが懐にしまっている<楔>に用事があるのだけれど、おとなしく二つとも寄越してもらえないかしら? そうすれば命だけは助けてあげる。安いものでしょ?」
アレクシスはレジーヌに嘲笑を向けアッシュの僅かな動きを横目で捉えた。
そして、それに合わせ身体をゆっくりと動かす。その動きは警戒心などというものは微塵も感じなく優雅でさえあると思えた。
※
アレクシスは右手を軽く掲げ指を鳴らす。
それは、瞬く間の青い輝きの後、宙に浮かぶ術式を展開した。黙ってそれに警戒する四人は、対峙した始祖からジリジリと距離を取りながらゆっくりと散開をしていく。
「みなさん、気をつけてください。アレは———」
云ったのはカミルだった。
固唾を飲みカミルは「<魔力の槍>あの規模だとこの辺一帯が消し飛んでしまいます」と、自身も何かの術式を準備し構えた。
「そうね、厄介ね———ねぇ少年、あなたそれ防壁を用意している?」と、今はレジーヌの横手に位置取ったカミルへ訊ねると、小さな魔術師は「はい」と短く「いつでも大丈夫です」と展開のすんでで動作を止めた。
「助かるわ。私、こう見えて意外と攻める術式しか持ち合わせていなくて」と、レジーヌがカミルの背中をポンと叩き「あなた達も少年の近くに寄って」とアッシュとエステルに投げかける。
「意外というか、想像通りですけれどね」と、苦笑いを零したカミルは、ちらりとレジーヌの顔を覗き込んだ。
「あら光栄ね———と、来るわよ」
※
「ふん、面白くないわね」
アレクシスはレジーヌの言葉に合わせ避難を始めた周囲の人々の姿を眺め小さくこぼした。どうせなら一斉に自分へ飛び掛かってくれれば気持ちの良い血の雨を降らせることができたのに。その光景を想像しほくそ笑み胸を躍らせた始祖は深くため息をついた。
少年の背に回ったアッシュとエステルが<言の音>を紡ぎ緑色の風を吹き上げると始祖はつまらなさそうにした。
「さあ、準備は整ったかしら?」
悠然とアレクシスは目前の四人に訊ねた。沈黙が彼らの答えだと知ると「そう」と小さく口にするや否や、優雅に、悠然に、右手を前方に掲げ「消えなさい」と<魔力の槍>を解き放った。最初はゆっくりと、次第に猛然と膨らんだ魔力の蒼白い玉は宙を揺らぎ瞬時に棒状へ姿を変える。そしてぐっと縮まりそして弾け伸びた。レジーヌ達の斜め上から突進する破壊の閃光は野太く轟音を付き従えた。
それが開戦の狼煙となった。
カミルの杖の一振りが閃光を弾く魔力の膜を貼ると、耳をつんざく轟音と伴に<魔力の槍>は弾け飛び、衝撃波と伴に魔力を霧散させる。衝撃波は周囲の建物さもすれば都市全体を揺らしたかのようで通りのあちこちで悲鳴があがった。
今では緑の緩やかな風を纏ったアッシュ達四人は、轟音を合図に霧散した魔力の残滓の中を散開した。それぞれがアレクシスとの間合いをとる。
アッシュは軽く脚を掌で叩き術式を展開すると、弾け飛ぶようにアレクシスに詰め寄り始祖の眼下から身体を捩り横の一閃を放つ。しかし魔力の残滓の中を一筋の緑の帯を描き詰め寄る影にアレクシスは悠然と構え、放たれた横の一閃を切っ先で叩き落とす。
それはアッシュの予測通りの動きだったのか、叩き落とされた勢いのまま地に這うようにしゃがみ込むと足払いを撃ち込んだ。
その動きに合わせるように、晴れてきた魔力の残滓の向こうから蒼白い鋭い閃光が二つ、アレクシスに向かって来る。レジーヌとカミルの二人の<魔力の矢>が浮足だったアレクシスに襲いかかったのだ。
「小癪よ小癪。美しくないわ」
赤の始祖はそうせせら嗤いながら云うと、指を鳴らし魔力の矢を反転させ、アッシュの足払いを踏みつけ、太腿に切っ先を突き刺そうと一閃する。
アッシュは「チッ!」と舌打ちをすると太腿に切っ先が届く前に身体を反転させ、それを避ける。アレクシスがカミル達に背を向けるように位置をとり、エストックの切っ先を誘う。
「まあまあ、美しいこと。そうやってあなたはいつも誰かを救おうとするのね。訊きたいのだけれども、それはなんなの? 偽善なの? それとも自己愛が故の愉悦なの? そうすることで満足するの?」
軽蔑するような眼差しをアッシュに投げるアレクシスは乱れた髪を掻き上げた。息を整えるため押し黙るアッシュに「訊いているのだけど?」と、せっかちに返答を迫る。
「そんなの、そんなのわかりませんよ。少なくとも助けられる命を前に、
アッシュは肩で息をし、苦しそうにそう吐き捨てると短剣を構え再び腰を落とした。
「つまらない男ね。ガライエ砦ではあの赤髪の
アレクシスは背後で、にじり寄る気配を感じながらそこで言葉を断ち切ると、エストックの切っ先はアッシュに向けたまま身体を開き後ろの三人に向かって指を鳴らした。迸る閃光が三人の足元に届く前、三人はそれぞれ散開しそれを回避する。
「——結局、<憤怒>の意識は途絶えたままだけれども、あなたはやっぱりあの生娘を庇って<憤怒>の凶刃に膝を折った。それで、こうやって再び合間見えてみれば、なんなのよ<外環の狩人>でもない——」
背後の三人を牽制したアレクシスは、一息にそう云うとアッシュに向かって力強く踏み込み水平にエストックを突き出しアッシュの体勢を崩そうとする。
「あなたが何に憤っているのかわかりませんが——」
アッシュはアレクシスの稲妻のような突きが、体勢を崩そうとする牽制である事はわかっていた。だからあえてそこに飛び込み、身体を僅かに沈めると切っ先の下からそれを受け流し、左の掌底でアレクシスの脇腹に撃ち込みをかける。
「——何がどうであれ、僕はあの人を護りたかった。ただそれだけなのでしょう」
アッシュの動きが僅かにアレクシスの体捌きを上回り、左の掌底が脇腹を直撃すると、始祖の身体を横に吹き飛ばす。くの字に身体を曲げながら、地を低く飛び退いたアレクシスは「くだらない!」と吐き捨てると、そこに合わせ直撃を狙い定め飛んできた<魔力の矢>を「あああああ! 煩わしい!」と指を鳴らし叩き落とす。
赤瞳の瞳孔を縦に引き絞ると、その矢を放ったカミルに向かい三連続で指を鳴らす。
連続して迸る閃光にアレクシスは追いつく程の素早さでカミルに詰め寄る。
「あ!」と、言葉を失ったカミルは咄嗟に閃光を避けるが、避け損ねた一閃が彼の魔術の杖を弾き飛ばし、身体を開いてしまう。
「いいこと? 子供だからって私は容赦しないわよ」
アレクシスの赤い蛇目に睨まれた小さな魔術師は、堪らずその場で頭を抱えて疼くまろうとした。
「カミル!」エステルが絶叫し、アレクシスに飛び込もうと踏み込む。
「少年!」レジーヌは術式の展開が間に合わないことを悟り、懐から咄嗟に取り出した短剣を狙いを定め投擲する。
アレクシスはそれらを嘲笑し「遅いわよ」と、鈍く輝く切っ先をカミルの頭蓋に向けて突き立てようと振りかぶる。アッシュは力の限りに声を張り上げ「間に合えよ!」と大地を蹴り、稲妻の速さでアレクシスに向かって飛び込む。
全ての動きは緩慢としているように感じられた。
研ぎ澄まされた戦場に流れる時間は刹那的であったが、今失われようとしている小さな命を目前に、無慈悲にその様子を細切れに脳裏へ焼き付けながら過ぎ去っていく。吸血鬼の高らかな嘲り笑う声だけが唯一の時の流れの手がかりのようだった。そこに手が届かない己が身体、己が切っ先、己が放った刃は、それに阻まれ緩慢な時の中で足踏みをした。
三人はとうとう、目を瞑った。
暗雲を割った陽の光もとうとうそれを閉じた。
もはや突然にやってきた昼日中の暗がりは命の幕引きに相応しいのか。
いや、そうではなかった。
「レッドウッド! 諦めるな! 後ろに倒れろ!」
アッシュの背後から黒い風が巻き起こり野太い声を張り上げ過ぎ去っていく。
目を見開いたアッシュ達が見たのは、黒鋼のエストックで二振の長剣を受け、吹き飛ばされたアレクシスの姿だった。長剣を叩きつけたのは黒い影だった。身体を一回転させ水平に二振りを叩きつけた黒い影はアレクシスを吹き飛ばすと、悠然とそこに立ち、後ろに転げたカミルを眼下に見下ろした。
「もう大丈夫だ、レッドウッド。よく堪えたな、偉いぞ」
それは戦士だった。
戦士はカミルに手を差し伸べ、小さな手を固く握ると乱暴に立たせ「杖を拾ってこい」と、精悍だがどこか人懐っこい笑顔でカミルの金髪を撫でまわした。
「よお、吸血鬼。ブラッドムーンは元気にしてるか?」
戦士は長剣を肩に二振り乗せ、鋭くアレクシスを見据えそう訊ねた。
「あなたは——」
激突した木の壁面が粉々にくだけ、その瓦礫から身体を起こしたアレクシス。
身体に纏わりついた埃を払い「——ショーン・モロウね」と、黒鋼の切っ先を戦士に向け、舌なめずりをする。
「俺の名前を知っているのか! 光栄だね」
「ええ、クルシャはあなたに傷付けられて悔しがっていたわよ」
「嗚呼、それであれかクエイスダールの半分を塩にしちまったのか!? いよいよお前らはイカれてやがるな」
ショーン・モロウはそう云うと、豪快にそれを笑い飛ばして見せた。
「不愉快よ、あなた」
アレクシスは、その豪胆な笑いに嫌悪を示し、赤い蛇目を引き絞った。
双刀の戦士ショーン・モロウは「お前も、大概なもんだぜ」と二つの切っ先をアレクシスに向け、不敵な笑みを浮かべた。
※
(先生、あの人は?)
メリッサに片腕を落とされたアドルフが轟音の行方を辿り、その場に到着したのはショーンが飛び出した直後だった。
物陰に隠れ
(ショーン・モロウね。ちょっとここからだと良く見えないのだけれども、恐らくはそうよ。シェブロンズのオーナーで、双刀の狩人。始祖のクルシャ・ブラッドムーンを瀕死にまで追い詰めた男。彼が出てきたならもう大丈夫。アドルフ君は戻ってきて)
(了解です先生)
アドルフは念話を遮断すると「もう、人遣いが荒いんだから——特別手当もらわないと割に合わないね」と縫合の終わった腕を確かめぼやくと、その場から急いで離れた。
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