シャーデンフロイデ、起動
リマの町民とフュンフの奮闘により、後退を余儀なくされたフロイデの部下達。そんな彼らに、彼は怒鳴り声をあげた。
「何をやっている!この低偏差値どもが!人間ごときに何を……あっ!」
部下に罵声を浴びせるフロイデに、イツキはずかずかと歩み寄った。そして彼の手から水晶玉を奪い取ると、画面の向こうのフュンフに語りかけた。
「もしもーし!聞こえてる?キモ骸骨」
「あぁ?……その声、もしかしてクソ勇者か!?」
「大正解!それにしてもアンタ……意外に熱いところあるじゃない。アタシ、見直しちゃった」
「テ、テメェ!見てやがったのか!」
「そーよ?アタシだけじゃなくみんなもね」
「……チッ」
フュンフは頭をがしがしと掻くと、ゆっくり立ち上がった。
「じゃあ今の状況もわかってんだろ?クソ勇者、それにパイセンも」
「ああ!よく守ってくれたな、フュンフ」
俺の言葉にフュンフはちょいちょいと手を振った。
「別にアンタらの為じゃねー。俺っちの仕事ってヤツをこなしただけだ。……だからよぉ、パイセン達もやるこたぁやれよ。こっちの心配はいらねぇ」
「ハハ!了解した」
その直後。イツキの手からフロイデが水晶玉をひったくる。そしてそれを地面に叩き付けると、何度も何度も力一杯踏みつけた。
「この!この!役にたたねえ!馬鹿どもが!何で僕の言う通りに動かない!」
「ちょっとアンタ。勝負はついたでしょ?さっさとこの首輪外しなさいよ」
「勝負はついた?……ククク、フハハハハ!!何を勘違いしている!」
急に高笑いを始めたかと思うと、不恰好なフォームでフロイデは走り出した。そして俺達から充分に距離をとると、再びこちらに向き直った。
「何が四天王だ!何が上位種だ!たまたま固有魔法とかいうアタリクジを引いたただの怠け者達じゃないか!……僕は違う!」
そんなことを喚き散らしながら、フロイデは懐からスイッチのような物を取り出す。
「才能にかまけた
手に持ったスイッチを天高く掲げると、フロイデはそれを押す。その瞬間、地を揺るがすほどの轟音と共に巨大な五つの金属の塊が彼のもとに飛来した。
「さあ来い!
その呼び掛けに応じる様に、金属の塊達はそれぞれ別の形を形成していく。手、足、体、それに頭。それはまるで、巨大な人間のパーツの様にも見えた。
そして次の瞬間。バラバラだった金属の塊は合体し、一つの『モノ』へと変貌を遂げた。
「こ、これは……」
言うなれば、巨大な
「フハハハハ!どうだ!これが僕の最高傑作!魔導機士・シャーデンフロイデだ!」
「…………ダッサ」
イツキが冷たくいい放った。
「ま、まあ。男の人はああいうの、好きですしねぇ」
「いいわよカタリナ。オブラートに包まなくても。大体自分の名前の一部をつけてるのも気に食わないわ」
「そうか?俺はその……カッコいいと思うが」
そう言った俺に、ミアとラウロンが続く。
「ボクもボクも!あのガシーンって合体する所とかすごいカッコ良かった!」
「そうじゃな!ワシも年甲斐もなく興奮してしまったワイ。勇者殿はそこら辺の浪漫をわかっとらんのじゃ」
「うっさいわね。子供のミアならともかく大人のアンタらはもうちょっと弁えなさい!特にラウロン!いい年したじいさんがあんなのにはしゃぐんじゃないわよ!」
チッチッと指をふると、ラウロンは流し目でイツキを見る。
「年齢など些末な問題です。このラウロン、体は老いても心はピタピタの少年ですゆえ」
「せめてピチピチって言いなさいよ!鬱陶しいわね!」
「あの、ツヴァイ様もああいうのはお好きなんですか?」
「ん?ああ。なんていうか、ラウロンの言う通りロマンは感じるよな。カタリナは嫌いか?」
「い、いえ!私も嫌いじゃありません!むしろ好きです!今、好きになりました!」
「えへへ、ボクも好きだよ。お姉ちゃん、ご主人。お揃いだね」
呼び出した張本人であるフロイデをそっちのけで巨大ロボット談義に花を咲かせる俺達。その態度に腹を立てた奴は、顔を真っ赤にして怒鳴り声をあげた。
「お前達!この僕を無視するんじゃない!クソ!」
フロイデは、ロボットの股下へと駆け出した。そして、そこに現れた魔方陣の上へと飛び乗る。その刹那、彼の姿は瞬時に消え去った。
「消えた……?転移の魔法か」
『ご名答!今僕はこの、シャーデンフロイデの中に転移したんだ。コレを操縦するためにね』
シャーデンフロイデから発せられているのか、どこかくぐもったような声が大音量で響き渡る。
「なっ!操縦じゃと!?どこまで男心をくすぐる気じゃ!」
「いい加減黙っときなさい」
『……僕を馬鹿にしやがって。いいさ、キミたちにも見せてやるよ。僕の長年の研究結果を!さあ、シャーデンフロイデ、起動!』
シャーデンフロイデの目がカッと光る。そして、その巨大な体がゆっくりと動き始めた。
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