第74話
エルジーの気持ちが落ち着くまでは、ヴィクトリアが今まで思っていたことを全て両親に話した。
(今までずっと我慢してきたヴィクトリアのために……)
『完璧』だったヴィクトリアの本音を聞いた両親は、かなり動揺しているようだった。
そしてジェイコブとヴィクトリアが上手く間に入りながら、エルジーと両親の話し合いが行われた。
泣き過ぎて言葉が出てこずに暴言を吐くエルジーと、怒りが収まらない様子の父を母が抑えていた。
いつの間にか痩せ細ってしまった変わり果てたエルジーを改めて見て、母も思うところがあったのだろう。
今まで父や母に意見などした事なく、何も言う事はなかったジェイコブも「もっとエルジーのペースに合わせてくれたら」「やり方を変えましょう」と必死に父に訴えていた。
そして極め付けは「僕もエルジーと一緒に講師達の指導を受けます!」だった。
そんなジェイコブの説得に冷静さを取り戻した父と母も自分達の思いを語った。
『バリソワ公爵家を継ぐため』または『バリソワ公爵家に嫁ぐ為』に、それはそれは厳しく躾けられて、バリソワ公爵に固く縛られ続けたこと。
だからこそ、何も違和感は持っていなかったとのことだった。
自分達がされたようにしか出来なかった。
しかしこのままではいけないとも思っていたが、他のやり方を知らず、どうすればいいか分からないとのことだった。
そこはヴィクトリアが間に入り、新たな方法ややり方を提案しながら話を進めて行った。
幸い、父も母も聞く耳を持ってくれた。
これからは少しずつ、考え方を変えていくこと。
そして努力していこうということになった。
そんな話し合いの後、エルジーは「お姉様、ごめんなさい……」と頭を下げた。
そして自分がヴィクトリアにしようとした行いを両親に赤裸々に話し始めたのだ。
それには父と母は驚愕して言葉が出てこなかったようだ。
そしてエルジーは何度も頭を下げてヴィクトリアに謝罪と反省を繰り返した。
ジェイコブも自分の軽薄な行いとヴィクトリアへの裏切りを改めて謝罪をした。
今度は以前の上辺だけのものとは違い、キチンと内容を理解した上での誠実な謝罪だった。
ヴィクトリアはその謝罪を受け入れた。
エルジーとジェイコブはきっとバリソワ公爵を継ぐために努力していくのだろう。
話し合いは深夜にも及んだ。
「エルジーと共に、バリソワ公爵を支えていきます」
「私も心を入れ替えて頑張るわ」
そんな二人の言葉にヴィクトリアは安堵したのだった。
ーーーーそして次の日から驚くべき変化が起こる。
「ヴィクトリアお姉様、一生ついていきます!」
「私に何か出来ることがあったら言って下さいッ」
「大好きですわ!ヴィクトリアお姉様」
以前の態度とは真逆で、とてつもなくエルジーに懐かれたことだった。
絶対的な忠誠心とヴィクトリアへの愛。
何か悪巧みをしているのかと怪しんでいたが、全て杞憂に終わる。
「エルジー、もう十分気持ちは伝わったわ」
「私は、ヴィクトリアお姉様のように強くて美しい令嬢になってみせます……!大好きです、お姉様」
「ああ、そう……頑張ってね」
「はいッ!!私を見守っていて下さいね!ヴィクトリアお姉様」
すっかりと心を入れ替えたエルジーの目からは、キラキラとした光線が発射されていて、とても眩しい。
本人は『憧れ』と言ってはいるが、凄まじいドシスコンっぷりにたじたじである。
(……まさか、こんな事になるなんて)
さすがに原作者もびっくりな展開だろう。
しかし両親に対しては辛辣で三人は四苦八苦しながらも向き合っている。
この間も「褒めることと甘やかしの見極めが難しい」と相談されたばかりだった。
間違いなくバリソワ公爵家はいい方向に向かっていた。
そして今日もヴィクトリアは城へと出掛けていく。
あのパーティーをきっかけに『ある人』との関係に大きな変化があったからだ。
そしてーーー。
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