第59話
(ゔわあああぁん……!!!久しぶりに見る無自覚天然たらしの陛下……なんて愛らしいの)
業務の邪魔をしないようにとココに怒られているシュルベルツ国王。
「ココはいつも理不尽なんだよ」と言いつつもどこか嬉しそうだ。
すると、べジュレルート公爵が心配そうにヴィクトリアの顔を覗き込む。
「怪我はしてないですか?」
今日も大変美しいべジュレルート公爵のお顔を見て、潤ったヴィクトリアは激しく頷いていると、細くて長い指が顎をクイッとあげた。
どうやら眼鏡がひび割れたことが気になるようだが、ヴィクトリアはそれどころではない。
「……ひゃい」
「ふふっ……全く、あなたは見ていて飽きませんね」
危険がないと判断したのか、そう言ってべジュレルート公爵は垂らした長い髪を耳にかけながら体を起こして微笑んだ。
シュルベルツ国王やココは、べジュレルート公爵の柔らかい表情を見て目を見開いている。
公爵邸で見たラフな姿とは違い、かっちりと着込んだ服と眼鏡に固い喋り方。
容赦のない色気爆弾とギャップに耐えられるはずもなく口元が緩む。
「うへへ……」
「今すぐそのだらしない顔を引き締めなさい」
「遠慮しないで、もっとわたくしを怒ってくださいませッ!!!」
「…………。はぁ……まったく」
そのあともべジュレルート公爵の色気とシュルベルツ国王の可愛さに酔いしれていた。
ここの空気が大変美味しい。
久しぶりにシュルベルツ国王にマッサージをして、べジュレルート公爵にもお試しとして肩を揉むと「……悪くないですね」と言って眼鏡をカチャカチャ動かして動揺しているように見えた。
どうやら相当、気に入ってくれたようだ。
イーシュ辺境伯もべジュレルート公爵もマッサージで攻めていくか、と考えながら食事の準備に掃除に業務を完璧にこなしたヴィクトリアが一息ついていると……。
「おつかれさま……よく頑張ったな。ヴィクトリア」
頭を撫でる優しい手のひら。
まさかの俺様モードの公爵からの頭ポンポンと笑顔のご褒美にヴィクトリアはカッと目を見開いた。
それにはべジュレルート公爵自身も驚いているようだ。
「あぁ……つい、あの子達にやるように触れてしまいました。城では気を付けなければなりませんね」
「……………………」
「想像以上の働きっぷりに驚きました。見事です」
「……………………」
「ヴィクトリア、聞いていますか?」
「ーーーガッッッ\×○はぁ△★*っ、たいッ!!!」
パリンッ……とヴィクトリアの眼鏡が粉々に砕け散る。
そのままくったりと力が抜けた白目を剥いたヴィクトリアを支えたべジュレルート公爵は驚き声を上げた。
「ーーヴィクトリア……?しっかりなさい!!ヴィクトリア!?」
そんな一部始終を目撃していたワイルダーが慣れた様子で答えた。
「あーあ、リアムのせいだ」
「なっ……!?私のせいですかッ!?」
「リアムがヴィクトリアにとどめを刺したんじゃない?」
「適当な事を言わないでください!起きなさいッ!ヴィクトリア・バリソワッ」
いつものようにシュルベルツ国王が人を呼ぶと、複数の侍女達が部屋に入る。
「ーーーリアム様ッ!!早くヴィクトリア様をソファーに寝かせて下さいませッ!あと、そこにある布も取ってください!!!」
「なっ、なんで私まで……!」
「急いでッ!!!それ以上顔を近づけてはなりませんよ!」
「……っ!」
「あはは……!」
「陛下もですよッ」
「あ…………はい」
賑やかさを取り戻した執務室の中……ココに怒られて悔しそうなべジュレルート公爵と怒られて落ち込むシュルベルツ国王は色々言いながらも丁寧に介抱してくれたそうだ。
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