第56話


「勿論、べジュレルート公爵のファンですから……!」


「まさかモカロフ公爵夫人達に認められたと……!?」


「えぇ!お姉様方はわたくしにべジュレルート公爵がどれだけ素晴らしい方なのかを教えて下さいましたのよ!!とっても有意義な時間を過ごさせて頂きましたわ!!それにお城に行けないのなら違う場所で補給しなければと思いまして……!もう許可は出て万事解決なのですが……!勿論、条件は全て守りますわ!お任せ下さいませッ!それに城に行けない間は街に出向いて侍女と働くおじ様を見学していましたの!!新しい発見もありますし、とても楽しいのですッ」


「……………そ、そうですか」


「そうそう、ファンクラブ!お姉様方が最近は公爵とお会いする機会がなくて残念がっておりました」


「……!」


「ーーーそこでッ!なかなか忙しくてお会いできないべジュレルート公爵と普段は恥ずかしくて色々と聞けないお姉様方の為に質問をご用意致しました!!三日で沢山集めましたのよ?」


「……答える前提で進んでいるのは気のせいでしょうか」


「勿論、べジュレルート公爵の答えられる範囲で構いません!お姉様にはべジュレルート公爵の意思を優先するように言われております!それから……っ」


「分かりました……!分かりましたから落ちついて下さいっ!彼女達には色々と世話になっていますから、質問には答えましょう。ちなみに何問まであるか、聞いてもいいですか?」


「なんとッ!!!百問用意いたしました!べジュレルート公爵を丸裸にして差し上げますわ!!!あらまぁ、涎が……ルベルさーん、わたくしのバッグからハンカチを取って下さいませ」


「かしこまりました。ヴィクトリア様」


「語弊のある言い方はやめて下さい!未婚の令嬢が丸裸などと……っ!それに何故、ルベルの名前をッ!?!?!?」


「まずは一問目ですわ!!」



ルベルとは先程案内してくれたべジュレルート公爵邸の執事の名前である。

ヴィクトリアは色々なことを言いたくて言葉が渋滞しているべジュレルート公爵を気にすることなく質問を読み上げたのだった。



* 



「ふむふむ、これが最後の質問ですわね!」


「はぁ…………やっと終わりましたか」


「今、気になる女性はおりますか?P.S.わたくし達はいつもベルジェルート公爵様の幸せを願っております、だそうですわ」


「気になる、女性……?」



べジュレルート公爵のエメラルドグリーンの瞳が真っ直ぐに此方を見つめていることに気付く。

ヘラリと笑いながら見つめ返すと、べジュレルート公爵は溜息を吐き出してから首を横に振った。

ヴィクトリアはメモとペンを持ち、キラキラとした目で答えを待っていた。



「…………居ませんよ。もういい年ですし」


「何を仰いますか!年齢など関係ありませんわ!素晴らしい方は何年経っても素晴らしいのですッ」


「……え?」


「それに年を重ねる度に男性は魅力が増していきます。何故でしょう……!大人の色気、包容力、さまざまな知識を持っているのも最高ですし、余裕もあります!」


「十分、言いたいことは伝わりましたから……涎は拭った方がいいんじゃないですか?」


「おっと……!」



ヴィクトリアはハンカチて涎を拭った後に、何事もなかったように笑顔を浮かべた。

そして「遊んで」と言いたげに、のしかかり可愛いモフモフ達に埋もれながら時間が過ぎていった。



「そろそろバリソワ公爵邸に帰った方がいいのでは……?」


「…………うっ!この子達とお別れするなんて、わたくし!!耐えられませんわッ!あっ……痛い、そんな!先程まで大人しくしてくれていたではありませんか!いたたっ」


「フッ…………」


「……?」


「ふはっ……もう無理だ!アハハハッ」



いつもは固く表情一つ動かさないべジュレルート公爵の敬語が外れたかと思いきや腹を抱えながら笑い出した。

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