第15話
目を覚ますとヴィクトリアは医務室のベッドに寝ていた。
シュルベルツ国王を籠絡するつもりが、しっかりカウンターを食らってしまったヴィクトリアはシーツを掴みながら、ゴロゴロと体を転がして悶えていた。
シュルベルツ国王の手の感触と近づいた顔を今も鮮明に思い出す事が出来る。
(すっごく……!良かったぁ)
それと同時にある事が気になっていた。
(隈も酷かったし、肌艶も良くなかったわ。シュルベルツ国王には元気でいて欲しいのに……!)
一旦、シュルベルツ国王に迫るのはお預けである。
それにヴィクトリアはシュルベルツ国王に好意全開だという事は伝えられたが、半分冗談だと思われているかもしれない。
(……でも、こんな事で挫けたりなんかしないわ!!)
この国のイケおじを幸せにする為に、ヴィクトリアはこの世界に舞い降りたに違いない。
ヴィクトリアは手を上に掲げて神に感謝していると音に反応したのか、医師がヴィクトリアの様子を窺うように声をかける。
「目が覚めましたかな……?」
「ご迷惑をおかけ致しました。もう大丈夫ですわ」
「そうですか。ヴィクトリア様に何かあったと知ればバリソワ公爵が驚かされますよ」
「お父様には言わなくていいわ。それよりも陛下は?」
「…………」
「あの……もしもし」
「…………」
「大丈夫でしょうか?」
「はっ……申し訳ありません。あまりにも……その、以前のヴィクトリア様と印象が違いましたので」
「ウフフ、そうかもしれませんね」
そう言って医師に向かって笑みを浮かべる。
ニコリと笑った時の目尻の皺が大変可愛らしい。
そして何より素晴らしいのは白衣とおじ様の組み合わせだ。
働くイケおじ、最高である。
そして素晴らしいおじ様を見つけたら褒める。
これぞヴィクトリア流のマナーである。
情報収集を含めて、ゼル医師に沢山の質問をした。
それはこれからやりたい事に対して必要な事だった。
今、シュルベルツ国王はどんな状況なのか。
イーシュ辺境伯が次に城に来るのはいつなのか。
べジュレルード公爵が、城を訪れるのはどんなタイミングなのか。
素敵なおじ様との会話はボールのようにポンポンと弾んでいく。
そして、ヴィクトリアは徐々に会話の内容をずらしていき核心へと迫る。
「まぁ、シュルベルツ国王陛下の体調が……?」
「陛下は最近、無理をしすぎなのですッ!我々も心配しているのですが、なかなか聞く耳を持ってもらえずに……」
「そうなのですか。わたくしも先程、陛下とお話してみて気になったのです。それに、そんな状況だと知らずにわたくしったら……」
「息抜きは必要ですよ。しかし……このままでは体調を崩すのも時間の問題でしょう」
どうやらシュルベルツ国王はマジで働き過ぎらしい。
だが、国や子供たちの為に体をゆっくりと休めようとしないそうだ。
それにはゼル医師も頭を抱えていると聞き、ヴィクトリアはすぐにある事を思いつく。
「まぁまぁまぁ……!それは大変ですわ!このヴィクトリア、陛下が心配で夜も眠れそうにありません」
「ヴィクトリア様はそこまで陛下の事を……!」
「そうなのです!このままではいけませんわ。陛下が今、倒れでもしたら民はどうなってしまうのでしょう…………ならば、わたくしは、今こそやるべきだと思うのです!!!」
「と、言いますと……?」
「規則正しい食生活と健やかな睡眠……健康第一だと、わたくしは思うのですわ!」
「おお!その通りですな」
「このヴィクトリア、陛下とこの国の為ならば、一肌でもふた肌でも脱ぎ散らかして、陛下を癒やして差し上げたいのです……!」
「なんと素晴らしい心意気でしょう!」
「わたくしにいい考えがございます!協力……して下さいませんか?」
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