第13話 シュルベルツ国王side3
(やはり……気丈に振る舞っていたとしてもショックだったろう。これだけの所作を身につけるのは並大抵の努力ではない)
全身から哀しみが滲み出ている様な気がした。
まずは謝罪しようとヴィクトリアを見るが、彼女は此方に何かを訴えかけるように見つめたまま動かなくなってしまった。
「…………っ」
「ヴィクトリア……?」
「…………」
「おーい……大丈夫かな」
「はっ……!申し訳ございません。陛下に見惚れておりました」
「え……?」
見惚れていた、という信じられないような台詞を聞いて、聞き間違いかと思い首を傾げた。
今までヴィクトリアに好意的な視線を向けられたこともないので当然と言えば当然だろう。
気持ちを切り替えて、すぐにヴィクトリアに謝罪をする為に頭を下げた。
「……ヴィクトリア。この度はジェイコブの件、大変申し訳なかった。此方から望んだ縁談にも関わらず、こんな結果になってしまって……。それにジェイコブの気持ちを優先してくれたと聞いた」
「いえ…………此方こそ陛下のご期待に添えずに大変申し訳なく思っております。わたくしはジェイコブ殿下の幸せを願い、妹のエルジーにバリソワ公爵の座を譲りました」
「ヴィクトリア……君は今までその為に努力してきたと聞いた。本当にこのまま譲っていいのか?君は幸せになれるのかい?」
「………陛下、わたくしは」
「…………」
「…………」
ヴィクトリアはその問いに悲しげに俯いているが、以前の彼女とは違う計算高い一面を感じ取っていた。
何かを訴えかけようとしている、それだけは理解出来た。
(……ヴィクトリアは何を望んでいるのだろうか?)
今までの彼女にない大きな違和感を感じていた。
六年前のヴィクトリアとは違う積極性と感情の豊かさだろう。
「王家とバリソワ公爵家……そして陛下の愛するジェイコブ殿下の幸せの為ですから」
「…………三人の兄弟の中で、ジェイコブは母親を知らないんだ。少々甘やかしすぎてしまったのかもしれない……僕のせいだ。すまない」
少し探ってみるかと謝罪を含めて、目を伏せて低く呟いた。
「ジェイコブと話をした。このようなことをした責任は取らなければならない」
「…………」
「僕に出来ることならなんだってしよう。ヴィクトリアも次の出会いを望んでいると聞いた」
「…………お気遣い痛み入ります。ですが、わたくしの願いは……いえ、いいのですっ!陛下に聞いていただこうだなんて、わたくしはなんて烏滸がましいのでしょう!」
「ヴィクトリア、ここには僕達しかいない。遠慮なく、君の願いを言ってくれ」
「本当に……宜しいのですか?」
「ああ、ジェイコブの代わりに僕に出来ることなら、なんでもしよう!」
「なんでも……?」
その言葉にキラリと瞳を輝かせたヴィクトリアは真っ直ぐに此方を見つめた。
まるで演劇を観ているようなヴィクトリアの演技のような振る舞いに疑問を抱いていた。
「では、わたくしから陛下にお願いがあります」
「……聞こう」
「シュルベルツ国王陛下はイーシュ辺境伯、べジュレルート公爵と幼馴染でいらっしゃいますよね?」
その言葉を聞いて大きく目を見開いた。
「え……?あぁ、そうだけど」
ローガン・イーシュとリアム・べジュレルートは幼馴染だった。
(まさか、この二人と……?確かに独身ではあるが……まさかヴィクトリアは!)
結婚しておらず、令嬢達の中にも彼らに憧れる子も一定数いると聞いていたが、まさかヴィクトリアがそうだとは思わずに、内心動揺していた。
しかし表情を取り繕ったまま、ヴィクトリアの真意を聞く為に問いかけた。
「それはつまり……?」
「えぇ……そういうことですわ」
(やはりそうか……)
「だが…………君はまだ若いし聡明なのだから別の令息や、それこそ隣国の王族だって」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます