第4話
今日も放課後、趣味部の部室を訪れる。
「きょ、今日は僕の趣味探しに付き合ってもらいますよ」
今回も前田は模造紙を広げる。
「ぼ、僕は観察というワードから派生したバードウォッチングですね」
「よし、みんなで公園に行こー!」
イルが先導し、俺たちは公園にやってきた。
「あれ?直君は?」とイル。
「あ、ああ、彼はこの周辺の障害物を探して慎重に動いています。能力に縛られてしまっていますからね。よし、そ、それでは観測開始!」
前田は側頭部にあるスイッチを押す。すると、、、
「あれはスズメ、あっちに2羽いるのはカラス、夫婦のようですね」
スイスイと分析している前田に尋ねてみた。
「なあ、前田。お前も直みたいに能力があるのか?」
「は、はい。僕の能力は側頭部に付いているこのスイッチを押すことにより、視界に入った物体や生き物の情報を読み取ることが出来るんです」
なるほど、少し気になっていた前田のスイッチの謎が解けた。
「よし、それじゃあ、あ、あそこの木陰に行きましょう」
俺たちはぞろぞろと前田が指し示した木の影に向かう。
「よう、お前ら」
そこには直がいた。
「この木が障害物になってようやくお前らと合流できたよ、、、」
「な、難儀だな、、、」
ジョーは直をいたわる。だが、そこでとある疑問が浮かぶ。
「なあ、直。俺がお前をおぶったらどうなる?」
「はっ、、、!」
途端に無表情坊主の目が一瞬輝く。
「なるほど!その発想は、、、って、それじゃあ他力本願でダメだ。自分だけの力で解決してみせるさ」
「お、向こうにいるのはシラサギですね、、、」
その日は1時間ほど前田のバードウォッチングに付き合ってから部室に戻った。
「あ、直君お帰り!」
「おう、みんな、ただいま」
少し遅れて直も部室に戻ってきた。
「この部室は突き当たりにあるから助かるよ」
「み、皆さん、改めて今日はお付き合いありがとうございました。鳥の観察は思いの外楽しかったですよ」
前田の場合は観察というより観測だったな。本人も『観測開始』って言ってたし。まあ、本人が満足そうならいいか。
「来週は線君の運動から派生したランニングですね。それはそうと、N君と星梅半君の新メンバーお2人の趣味探しもしていきましょうか」
前田が主導して模造紙を広げ、真ん中に大きい円を描く。
「まずは星梅半君の趣味からです。抽象的でいいので、こんなことがやってみたい、とか、どんなことに興味がある、とかありますか?」
「うーむ、興味、ねえ、、、」
ジョーは少し悩み、、、
「ボランティアだな。何か人のためになることをしたいな」
「え、意外、、、」
「意外とはなんだ、イル。俺だってこういうことに興味があるんだぞ?」
「なるほど、ボランティア、慈善事業ですね、、、」
前田が円の中に『慈善事業』と書く。
「次にどんなボランティアをしたいとか、具体的な案はありますか?」
「ふむ、シンプルにゴミ拾いだな。気軽にポイ捨てをする輩に同情するつもりはないが、その行為によって苦しんでいる人間もいるのが現状だろう」
最初は悩んでいたジョーだったが、前田の誘導によってアイディアがポンポン出てくる。前田って意外と人付き合いが得意なのかも知れない。ジョーの興味といい、前田の社交性といい、人は見た目によらないもんだな。
30分ほどが経ち、ジョーの趣味案も出切った。
「よし、じゃあ次は副部長である私、紫蘇入鹿がリーダーを務めるよ!S君、よろしくね!」
「あ、ああ、こっちこそよろしく」
「それじゃあ、まずはテーマ、さっきの星梅半君の時と同じように大雑把でいいから、興味を惹くことってある?」
「そうだな、、、中学まではずっと1人だったから、すぐには思い浮かばないな」
「ふむふむ、誰かの趣味と同じでもいいんだよ?被っちゃっても全然構わないからさ」
「それなら、、、」
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