8-3

 碧の試合の日、私は結局、応援を兼ねて出掛けていった。碧からというより、璃々香ちゃんから見に来てと誘われていたからだ。


 会場で璃々香ちゃんの姿を見つけて、手を振っておいたけど、もう、1回戦は勝っていたみたいだった。碧のほうも、もうすぐ2回戦が始まるところだった。スタンドから声を出すと、私の姿を見つけたみたいで、手を少し上げて、わかったみたいだった。


 だけど、相手が碧の言っていた天敵だったので、あっさりと負けてしまっていた。璃々香ちゃんは準々決勝まで進んだけど、相手が悪かったのか、ボロボロに負けて終わった。


「碧 なによ 直ぐに負けたじゃぁない せっかく 応援にきたのにー」


「うーん いつも あいつに負けてしまうんだよ 勝てない」


「まぁ いいや 璃々香ちゃんも 惜しかったネ 良いとこまでいったのにー 待ってて、励まそー 碧も居なさい」


 と、璃々香ちゃんが体育館から出てくるのを待っていると、茉莉ちゃんと一緒に現れて


「璃々香ちゃん」と、声を掛けて行った。


「あっ ミミさん 来てくれたんですか?」


「うん 弟の応援もあったから すぐに負けちゃったけどね」と言うと、璃々香ちゃんは、後ろに居る碧の顔を見て


「初めまして 杉戸璃々香です ミミさんにはお世話になってます」


「川野茉莉でーす」と、2人揃って頭を下げていた。


「あっ あっ 舟留碧です」


「私も なかなか勝進んでいけなくてー」


「悔しいだろうけど 相手は去年も県代表なんだから・・ 強いよ」


「ですね やっぱり 高校になると レベルが違いますネ」


「あのさー 碧 去年の県民大会の時から璃々香ちゃんの試合見てるのよ 気になるんだって ねっ 碧」と、私は、璃々香ちゃんが碧のことを覚えている様子は無かったので、碧の背中を前に押していた。しばらく、璃々香ちゃんは碧の顔を見ていたが、恥ずかしくなったのか下を向いていた。


「碧 璃々香ちゃんと話したいんでしょ 璃々香ちゃん しばらく、碧の話 聞いてあげて 茉莉ちゃん 私と お茶でも飲みにいこー」と、碧がぐすぐすしているので、私から切り出したのだ。そして、茉莉ちゃんを促すと


「璃々っぺ 頑張ってネ」と、当然、茉莉ちゃんはどういうことなのか、わかっているみたいだった。それで、私と茉莉ちゃんは二人を残して歩き出していた。


「ミミさん そんなのー 私・・・どうすれば・・」


 だけど、私と茉莉ちゃんは構わず、その場から去って、二人でお茶を飲みに行って、私は茉莉ちゃんに碧のことを打ち明けていた。


「あのね ミミさん 璃々っぺのお家 お母さんが厳しいみたいよ 特に、男の子には・・・だから、あの子 中学の時も誰とも付き合わなったの」


と、茉莉ちゃんが言ってきてくれたけど、私は、その時は気にならないで


「碧は不器用で無神経なんだけど、真面目な子よ だから、璃々香ちゃんのことが好きになったんだと思う まぁ 璃々香ちゃんが お付き合いしてくれるかどうかわかんないけどネ 応援してあげてネ」と、弟のフォローも忘れていなかった。


 その時、璃々香ちゃんからラインが入って「どうすればいいか思って お友達ということでもよろしいでしょうか」と、「うん よかったら相手してあげて」と、直ぐに返しておいた。


  


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