第7章

7-1

新年を迎えて、コウは実家に帰ったままなので会えなかったのだけど、ウチの家族は、コロナ禍だけど、2日の日に初詣に行こうとなって、氷川神社に出掛けた。碧もなんだかんだと文句言っていたけど、結局は付いてきていた。


 お詣りを済ませて、お父さんとお母さんがお札を買いに行っている時


「ミィ姉 あそこ 居るんだよ 多分 あの子 あそこ 絵馬買ってる」と、碧が私の袖を引っ張って言ってきた。その先を見ると、中学生の制服で二人連れだったけど。私は、直ぐにピンときた。長い髪の毛を白いリボンで結んで手足の長い子。


「へぇー 碧が言っていた子?」


「そう 杉戸なんとか・・・ 神様の引き合わせだよな」


「なに 勝手なことを・・ あんた 神社なんてって 家出る前 ぐずってたじゃぁない」


「なんだけどよー 頼む ミィ姉 なんとか近づいてくれ お願いしますよー お姉様ぁー 出来れば、名前まで聞いてョ」


「あんた 何 言ってんのよー なんで 私が・・ あんたが行けばいいじゃぁない」


「だってよ 又 逃げられたりしたら・・ お願いします 女同士のほうが警戒しないだろぅー お願いしますよー お姉様」


「うぅー あんた ふざけて 言ってるんじゃぁないでしょうネ」


「ウン 真剣に頼んでいる」


 仕方なく、私は、絵馬を買って、幸いその子の隣が空いていたので、傍に行って文言を書くことが出来た。そして、わざとらしくその子に向かって


「ねぇ あなた 確かバドミントンやってたよね 私 去年の夏の大会見てたんだぁー 準々決勝 勝ったと思ったら 急に ポイント奪われちゃってー 惜しかったわネ」


「ハァー あのー お姉さんもバドミントンやってるんですか?」


「いいえ 弟がやってるんで見に行ってたの たまたま あなたの試合 見ちゃった 偶然ネ 惜しかったワ」


「そうなんですよー 璃々ッペたら 気が弱くて・・ 中学最後の大会だからって、頑張って優勝できる実力あるのに、急にプレッシャーで負けちゃってー 先生に反省しろって叱られて 落ち込んでたの」と、隣の女の子が言ってきた。


「そうだったの 残念だったわね そういうことってあるわよね 相手に優しすぎるのよね・・」


「そんなふうに 見てるのって お姉さんが初めて 要は 璃々ッペって臆病なの あの時だって 知らない男の子に話し掛けられたって 私のとこに慌てて来て、震えてたのよ ほんと、純真な娘なんだからぁ」


「茉莉 しゃべりすぎよー だって 知らない男の人から、声掛けられて 怖かったんだからー」


「そうよねー 怖いよねー でも、その人 落ち込んでるのを見て 元気づけようと思ったのよ きっと 悪気は無かったと思うよ」と、私は碧のことをかばったつもりだった。


「そーですねー 私 その時 何にも言わないで、逃げてしまったの・・・悪いことしたかなぁー」


「あなた 良い子ネ まぁ いいんじゃぁない その子も無神経なんだから ねぇ あなた達 合格祈願?」


「ええ 一応 一女 希望なんです」


「あらっ そう 私ね 去年 卒業したのよ 先輩だね ちょっと縁あるわね」


「わぁー そーなんですか うれしい お会いできて だって ゲンが良いような気がするものー」


「そうね あなた達なら きっと 受かるわよ 私の親友の妹がソフトボールなんだけど、今年3年 あなた達のこと 入学してきたら面倒みるように伝えておくわ」


「うれしいぃー 心強いです 知った先輩が居ると思うと」


「ねぇ 私 ふなどめみみ あなた達のお名前 教えておいて そうだ ラインも交換しない?」


 私が、戻ってくると、陰から見ていたのだろう碧が直ぐに寄ってきて


「なぁ どうだった? なんか話していたみたいだけど」


「碧 なんか女々しいヨ 男らしく どーんとぶつかっていけばいいのに」


「だってよ 向こう 中学生だし・・・又 逃げられたりしたら」


「ほんと あの子に関してはだらしないのネ! でも すごく 純粋で優しそうな子 そういう点では 碧の見る目はあるよ 良い子だわー あんたみたいに無神経な男には不釣り合いよ あんな良い子を傷つけるワ 諦めなさい」


「そんなふうに言うなよー 名前 聞いてくれた?」


「ふふっ 杉戸璃々香すぎどりりかだって」


「そうか リリカちゃんかぁ それから?」


「それからって?」


「その 住所とか 付き合ってる男いるとか」


「バッカじゃぁない そんなこと聞ける訳ないじゃぁない 大丈夫よ まだ 純真そのものよ」


「じゃぁ あんなに・・ 何 話してたんだよ」


「ふふっ 内緒 まぁ 碧が今後、私のことをどれだけ崇拝するかによっては、情報あげるわよ」


「俺は いつも ミィ姉のこと崇拝してるよー あの子だって ミィ姉の中学の時の純真そうな雰囲気が似ていたからサー」


「ふ~ん なんか気になる言い方だなぁー 今は純真そうじゃぁないの?」


「うぅー そんなことはないです お姉様 いつも優しくてキュートな魅力で清楚です 俺の女神です」


「まぁ いいや 今後のあんたの言動を見ます どっちみち あの子はもう高校受験で大変なんだから 静かに見守るのよ わかったぁ?」   

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