第83話「収録終了!~海なし県埼玉出身の我々は寿司にトコトン弱いのだ~」
「菜々美ちゃんを見ていると芸能とはなんなのかということを考えさせられますね~。あまりにも今の芸能界は形式にとらわれすぎていたのかもしれません~」
だからこそ、神寄さんはネット動画配信という自由な海に菜々美を送り出したのかもしれない。
「そうそうー! 菜々美ちゃん謹慎じゃなくて新境地開拓だもーーーん!」
「……まあ、謹慎の意味もあるんですけどね~? 菜々美ちゃん、反省するところはちゃんと反省してくださいよ~?」
神寄さんはニコニコしながら圧力をかけてくる。
なんというプレッシャー。
「むぐうっ!? ご、ごめんなさいー! もうお仕置きは許してぇーーー!」
「ああ、そうそう~。菜々美ちゃんへのお仕置きタイムを動画で配信すれば視聴数がすごい上がるかもしれませんねぇ~?」
「ひぃいっ!? それはやめてぇーーー!?」
公開放送で公開処刑(お仕置き的な意味で)か……。
まあ、アクセス数はすごいことになりそうだな。
「ふふふ、半分くらいは冗談ですよ~♪」
半分くらいは本気なのか……。
まあ、視聴者数が低迷したら、切り札としてそれもありなのか……?
いや、まあ、冗談はおいておこう。
ちょっと俺としても見てみたい気はするが。下手すれば配信停止されそう。
「ともかくー! これからもわたしたちの活躍を期待してねーー! お便り待ってるよーーー! それじゃ、みんなーー! ばいばーーーい! またねーーーー!」
菜々美は手のひらを広げたかたちで両手を突き上げ、ブンブン左右に振ってお別れをする。
「ほら、瑠莉奈ちゃんと二三香ちゃんもー!」
「……む……わかった…………皆の衆……また後日……」
「え、えっとっ! 今日はありがとうございましたっ! とても楽しかったですっ! また次の放送も見てくださいっ!」
瑠莉奈の大物感は、なんなのか。
一方で、二三香は緊張度MAXといった感じで頭を下げていた。
うん、まぁ、それぞれ個性があっていいかもな。
三人ともキャラがいい感じにバラけている。
そんなこんなで。
エンディングのBGMが流れて、今回の収録は終わった――。
「みなさん、今日はお疲れ様でした~♪ なかなかアットホームでフリーダムでエキセントリックな面白い放送だったと思いますよ~♪」
神寄さんから太鼓判がもらえたか。とりあえず、よかった。
なんだか俺もドッと疲れが出た……。
ただ見ているだけで済むかと思ったら、何度も飛び火したからな……。
大喜利ではツッコミしまくってしまったし。
「しゅーくんもお疲れさまーーー! しゅーくんのおかげでとっても楽しい放送になったよーーー!」
「……おにぃのおかげでネタに困らなかった……これからも困ったときはおにぃをネタにして炎上させて窮地を切り抜ける……」
「えっと、修人っ、いろいろとネタにしちゃってごめんねっ!」
三人から
まあ、俺の尊い犠牲も役に立ったのならよかった。
「やっぱりしゅーくんはすごいよ! わたしのエナジーの源だよ! 元気の供給源でありネタの供給源だよーーー!」
「……これからも黒歴史小説ファイルには役に立ってもらう……」
「困ったときは、またネタにさせてもらうからねっ! 先に謝っておく!」
…………。
これからも俺は尊い犠牲になり続ける運命なのか……。
「ふふふ~♪ 幸先よいスタートを切れましたね~♪ お金出しますから打ち上げは盛大にやっていいですよ~♪」
神寄さんも、なんだかんだでこういうところのフォローはさすがだな。
まあ、飴と鞭というやつか。
「わーーい♪ 神寄さん大好きーー♪ しゅーくん、お寿司お腹いっぱい食べよー! お寿司、お寿司、高級お寿司ーーー!」
「……高級寿司は何度食べてもいい……じゅるり……」
「きょ、今日も高級寿司ですか!? う、嬉しいですけど、いいのかなっ……」
やはり美味いメシは明日への活力源だよな。
ここのところ高級寿司ばかり食べすぎて金銭感覚が狂いそうだが……。
「いっぱい稼いでいっぱい美味しいものを食べるー! これが健康の秘訣だよ、しゅーくんーーー!」
「……ネタにしたぶん、おにぃには好きなネタを食べる権利を与える……」
「お寿司食べてネタにしたことは忘れてね、修人っ!」
ネタにされた俺の慰労会も兼ねてか。
まあ、いい。ネタにされたぶん高いネタを食べる。
こうして、俺たちは今夜もハイパー豪遊タイム(高級寿司ディナーバージョン)を心ゆくまで満喫するのであった。
海なし県埼玉出身の我々は、寿司にトコトン弱いのだ。
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