覚悟

レグルスは記憶がない。

誰かにお願いされて戦っているだけである。

その周りの人々の声が嘘だったら?


僕は本当に世界を救いたいと思っているのか?

自問自答をしても答えがでない。


ガギンッ!

ザザザッ!!!


「ちっ、防御だけは上手いじゃないか?ならこれはどうだ!」


バルドは手に魔力を集めると炎の球体を生み出した。


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!?


「バカなっ!魔法だと!?賢者の搭にも通っていない蛮族がどうして!?」


ジャンヌは驚愕して目を開いた。


「全ては神の神器、『叡智の宝珠』のおかげだ。この宝珠は様々な事を教えてくれるのだ!」


バルドは出来上がった巨大な炎を放った。


「火属性上級魔法バーストエンド!!!!」


「うわぁぁぁぁぁああああああ!!!!」


ドッーーーーーーーン!!!!!!


大きな音と共に爆発が起こった。

爆煙と共に近くにいたジャンヌは吹き飛ばされていた。


「団長!ご無事ですか!?」

「わ、私の事よりレグルスはっ!?」


痛みに耐えながらレグルスの方に視線を向けると───


「はぁはぁ…………ガハッ!」


レグルスを中心に地面が抉れていたが、ダメージは負ったもののレグルスは無事だった。


「これは驚いた。その神剣で防いだのか?だが、もうまともに戦えまい。息の根を止めてやるぞ!」


バルドは剣を構えた。

レグルスはまだ片膝を着いて肩で息をしていた。


「レグルス!立て!お前と会った村を思い出せ!他の村や町をあんな風に虐殺されるつもりか!」


!?


そうだ!仮に蛮族達に戦う理由が合ったとしても、あんな殺戮を許すことは出来ない!


「ま、まだ終わっていない!」

「なにっ!?」


振り下ろしたバルドの剣を弾いて、レグルスは立った。


「はぁはぁ、僕も本気を出す!バルド!これが最後の勝負だ!」

「面白い!やってみるがいい!!!」


レグルスは呪文を唱えた。


「聖なる神の血よ!我が力の楔を解き放て!封印解放(リリース)!」


神剣ダインスレイヴが蒼色の刀身から赤黒い刀身に変わった。


「…………それが本当の力を解放した時の姿か。ならば俺も全力を出そう!」


バルドの剣が赤く光った。


「…………それは?」

「魔法剣だ。これで武器の切れ味と耐久が格段に上がる。貴様の神剣を受けても簡単には壊れないだろう」


二人は剣を構えると無言で睨み合った。


周囲の者達も生唾を飲み込んで見守る状態だった。


ジリジリッと間合いを詰めながらスキを伺う。

風が吹き、木の葉が地面に付く瞬間お互いに飛び出した!


二人の剣が交差し、激しい金属音が鳴り響いた。


「少し不安だったが俺の魔法剣は十分にやり合えそうだな!」


そう言ってバルドは剣を振るった。

レグルスは一撃一撃を受ける度にこの男は強いと肌で感じた。


力の解放で身体能力が向上しているのにも関わらず、バルドは長年のカンと剣術レベルでレグルスを圧倒していた。


何度も斬り合う内に、お互いの癖のようなものが分かってきて、戦い方が変わった。


『ちっ、手の感覚が無くなって来やがった。早くケリを付けないと剣を飛ばされてしまうな』


『はぁはぁ、マズイ。身体が悲鳴を上げているのがわかる。そろそろ決着を着けないとまた、倒れてしまう………』


切り合って少しの時間しか経っていないが、お互いに限界が近かった。





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