第71話

ホーム画面には「ステータス」「アイテム」「チャット」「ユニオン」「トレーニング」「ワールドマップ」などの項目が下段のツールバーに表示されており、画面上部分には青空が広がり、奥のほうには宮殿らしき建物がそびえ立ち、広場のようなところに3Dの3等身くらいのキャラクターアイコンたちが動き回っている。


1つ1つに名前がついており、画面の左上には「王宮前広場」とあった。


弥生が指で画面を動かすと、異国風の民族衣装をまとった青年が、その動きに合わせてゆっくり広場をうろつきまわっている。


彼の頭の上に、『ヴェリナス』とあった。


「召喚士だって。うわ、レベル59。結構やり込んでるみたいだね、お父さん」


ぶつぶつ呟きながら、弥生は何事か確認している。


「悪い、凜。どういうことか説明頼む」


プライドをかなぐり捨て、両手を合わせて拝むと、凜は水滴の粒の浮かんだグラスを脇へ置き、画面を見やすく横にして言った。


「このゲームって、レベルを1上げるのも結構大変なんだよ。さっき言ったみたく、1人でダンジョン攻略っていうのが基本的にできないから。その中でレベル59っていうのは、かなりすごい方だと思う」


「そこまで行くのに、普通だったらどれくらいかかるんだ?」


「うーん、やったことないから分かんないけど、最低でも半年くらいはかかるんじゃないかな。月に百万ぐらい課金してレアアイテム蓄える人とかもいるって聞くけど、レベルを上げることに関して言えば、地道にプレイするしかないから」


と凜は言い、ざっとゲームの概要を説明してくれた。


翼の帝国は先ほどのとおりMMORPG、つまり大規模多人数同時参加型RPGで、主人公の名前やパラメーター初期値、職業やヴィジュアルについては全てプレーヤーが決めることができる。


何らかの事情で地上に住めなくなった世界。


人々は空に島を浮かべ、橋を築き、飛行船で交易を行うようになっていた。


空に浮かぶ美しい帝国の一つ、ユーフォリアが主人公の属する世界である。


そのユーフォリアに、ある日謎の敵『モナド』が来襲し、亡国の危機が訪れる。


モナドを使って侵略を行うのは、どこの国の何者なのか。


また、そもそも、どうして地上で暮らすことができなくなってしまったのか。


主人公はモナドと戦い、ユーフォリアを守りながら、世界の謎を解き明かしていく。


ダンジョンと呼ばれるフィールドを一章ずつ攻略し、レベルを上げてアイテムを揃え、新しい敵に挑んでいく中で成長し、仲間との絆を深めていくことがゲームの楽しみの一つである。


美麗なCGと多彩なキャラクター設定、臨場感溢れる戦闘やBGMの質の高さも相まって、圧倒的な人気を誇っている。

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