第31話
連休明けの出勤日は、いつにもましておっくうなものだ。
体は職場にいても脳みそはまだお休みモードで、大きなものから小さなものまでミスが多発する。
あまりの眠さにトイレに立っていた英理は、フロアに戻る途中で響き渡る甲高い声にぎょっとした。
「えーっ。いいんですか?」
一瞬びくっとして辺りを見回すと、給湯室に備え付けてある冷蔵庫の傍で女子社員が五、六人固まっている。
三人は派遣社員で、残りは弥生と冴島慶子だった。
「部長が出張帰りに買ってらしたんだけど、人数分はないから女子だけでって。生ものだし、もう今食べちゃって」
てきぱきと場を仕切る慶子の影で、弥生は小さなあくびをしており、うっすらと目が潤んでいる。
いかにもだるそうな様子に、英理は苦笑した。
派遣社員三人娘はいずれも非常に若くきゃぴきゃぴとしており、お互いが目配せし合ったり、くすくす笑ったりと忙しそうだ。
「ほら。いいから、手づかみでいっちゃって」
業を煮やした慶子が白い箱から取り出したのは、美しい焦げ茶色にコーティングされた、とても高価そうなチョコレートケーキだった。
透明のセロファンをばりばり剥がして大きく口を開けて頬張ったものだから、派遣社員たちは「きゃ~」と甘い歓声を上げた。
「じゃあ、私たちも」
「いただきまーす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます