第4話 隣国に到着した勇者

 その頃、コウスケたちは出発してから数日後、無事に目的地である隣の国─ペディオン国へと到着した。


「いやぁ、助かりましたよ!本当にありがとうございました!」


「いえ……。気にしないでください」


 荷物を下ろした馬車の中から顔を出した商人に、コウスケは笑顔で答えた。


「そういえば、勇者様はこの後どうされるのですか?」


「とりあえず、宿を探して泊まることにしようかと思っています。その後のことはまだ決めていませんが、すぐに出発するつもりはないです。少し、この国を見て回ろうかなと考えています」


「なるほど……わかりました。それでは、私はこれで……失礼させていただきます!」


 そう言うと、商人は何度も頭を下げてからその場を離れていった。

 その様子を見届けた後、コウスケはグッと伸びをした。


「さてと……。それじゃ、行くとするか……」


 そう呟くと、彼は街へと向かった。


 ペディオン国の王都ペディストリア。そこは、インペラール国の王都と比べるとそれほど大きくはないが、活気に満ちた町だった。

 コウスケが歩いている大通りには露店が立ち並び、多くの人で賑わっている。


「ふむ……。良い国だな……」


 キョロキョロと辺りを見渡しながらつぶやくコウスケ。


(平和だな……。それに、空気も美味しい)


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


(さて……宿屋を探すのもいいが、この国の情報を仕入れておくべきだな)


 そう考えると、コウスケはまず酒場を探し始めた。

 しばらく歩くと、目的の場所にたどり着いた。中に入ると、カウンター席やテーブルなどが並んでいるのが見える。

 そして、そこには何人かの客の姿もあった。


「すみませーん!」


「はーい!」


 コウスケの声に、若い女性が返事をしながら出てきた。


「いらっしゃい!何にする?」


 元気の良い声に苦笑しながら、彼は注文する。


「えっと……この店でオススメの料理ってありますか?」


 すると、女性はニッコリと笑って答える。


「もちろんあるわよ!うちの自慢はミートパイね。サクサクの生地にジューシーなお肉が詰まってて最高よ!」


「おお……それは美味しそうですね。それじゃ、それを一つお願いします」


「かしこまりました!」


 コウスケが頼むと、彼女は嬉しそうに厨房の方へ向かった。

 それから数分後、女性店員は大きな皿を持って戻ってきた。


「お待たせいたしました!こちら、ミートパイになりまーす!」


 目の前に置かれた大きなミートパイを見て、コウスケは目を輝かせた。


(おお……!これは凄いな……!見た目だけで分かるぞ……。絶対に旨いと……!)


 早速、フォークを手に取って食べ始める。すると、サクッという音と共に香ばしい匂いが広がる。


「う、うまい……!」


 あまりの感動に、自然とそんな言葉が漏れていた。

 すると、その言葉を聞いてか、隣に座っていた男性がコウスケに声をかけた。


「ハハッ、うまそうに食う兄ちゃんだな!ここに来たのは初めてとみえる。旅の人かい?」


 突然話しかけられて驚いたものの、コウスケはすぐに落ち着きを取り戻した。


「は、はい……。実は、初めてなんです。ここはいい所ですね。平和だし、みんな楽しそうだ……」


 コウスケの言葉を聞いて、男性はニカッと笑う。


「だろう?この町はいいところだよ。俺もこの国にずっと住んでるが、気に入ってるぜ。……おっと、自己紹介がまだだったな。俺はカルゴだ」


「カルゴさんですか。俺はコウスケっていいます。……本当に、いい所なんですね」


「おう。……まぁ、一つだけ問題があるとすれば、あの城だな」


「城……?ペディオン城に何か問題でもあるんですか?」


 カルゴの話に興味を持ったコウスケは、すぐに質問した。すると、カルゴはかぶりを振って答えた。


「いや、問題になっているのはペディオン城じゃねえんだ……。『竜王の城』って呼ばれる城があってな……」

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