第5話 Cパート ~終わらない、夢~

 身体が軽かった。

 まるで海の中に浮かんでいるような浮遊感。

 そんな中に自分がいることに気づいた。

「ここは……」

 目を開いてみると……そこには、幼い頃よく遊んだ公園があった。

「いけー! ロケットナックールッ!」

 ぽんっ。

「ふふっ、かっこいいわね、そのロボット」

「うんッ! この『シシガーディアン』は僕の一番のお気に入りなんだ!」

 そう笑っていたのは……幼い頃の僕。

 そして、付き添いで遊んでいた母だった。

「ふふ、勇は本当にロボットが好きなのね……」

「うん、大好きッ! 僕ね、将来ロボットに乗るのッ! そして悪いやつをやっつけるんだ!」

「そうなのね。それじゃ将来の夢は、正義の味方かしら?」

「うん! 僕は大人になったら、皆を守る正義の味方になるんだっ!」

 それは、幼い頃の夢。

 誰もが夢を見て希望に満ちて……現実の絶望を知らない時期だからこそ言える言葉。

「でも……僕は肉体機能障害だった」

 僕には人助けをする才能が、そもそもなかった。

 普通に遊ぶことも、普通に勉強することも、普通に友達を作ることもできた。けれど、誰かに頼りにされたくて、正義の味方っぽいことをしようとして、いつも失敗ばかりしてきた。

 誰かに求められたかった。正義の味方として褒め称えられたかった……でもそれが出来ない自分に絶望し、僕自身を役立たずと決めつけて、ずっと自分の世界に閉じこもっていた。

「……それでも、僕は諦められなかった」

 あの時……初めてラスタ・レルラと対峙した時、身体が勝手に動いた。

 ハツネさんを守りたかった。ハツネさんを傷つけたくなかった。それが、彼女が『求め』ていたことだとわかってたから。

 ……そんなことして、本当によかったの?

「よかったに、決まってる」

 そのせいで死にそうになっても。

 そのせいで生を失っても。

 そのおかげで僕は、初めて他人に『求め』られたから。

「……あぁ」

 なら、わかりきってるじゃないか。この先すべきことが。

「……僕は、戦う」

 例え何もできなくても。

 例え肉体機能障害でも。

 それでも君が求めてくれるなら……僕は戦おう。

「だから、そろそろ起きよう」

 きっとハツネさんが……僕を待ってる。

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