第4話 Cパート~黄金姫・イザベラ~

「……ッ! 来たわね」

 瞬間、夕焼け空を白い光が覆った。

 変身するその光に包まれたまま、スクランブル出動してきた『鋼衣』たちがやってきて合体を始める。

 白銀の全身を包み込む煌びやかなドレス。『鋼衣』に包まれエネルギーに満ち溢れた僕らはその衝動のまま大声で叫ぶ。

「白・銀・降・臨……テラレグルスッ!」

 そして有り余るエネルギーが、周囲に響き渡った。

「準備は出来たみたいね……それじゃ行くわよッ!」

 こちらの合体が完了したと共に、敵が迫りくる。

 速い。まるで弾丸のごとき速度で迫りくるラスタ・レルラを、正面から受け止めるッ!

 ガッシャアアアァァァ……ッ!

「ふっ……!」

 敵が振りかざす拳を受け止め、すかさず地面へ抑えにかかろうとする。だがそれを読み切ったように、ラスタ・レルラは宙返りするように自ら飛翔するッ!

 タッ!

「なっ!?」

「甘いッ!」

 そしてそのまま僕らの背中へ向かって、ラスタ・レルラは蹴りを入れてくるッ!

 ドゴォォォォッ!

「ぐぁ……っ! くっ、大丈夫、ハツネさんッ!?」

「はい、大丈夫です――それよりも、来ますッ!」

「ッ!」

 ハツネさんの言う通り、そのまま華麗に地面へ着地したラスタ・レルラはそのまま拳撃と蹴りによるコンビネーションを開始、キレのいい拳がまたもこちらの頬を翳める。

「ぐっ……!」

 強い。このラスタ・レルラもリアナさんと同じ幹部クラスなのだろうか。

 今回も油断は出来ない……そう気持ちを切り替え、僕は瞳で敵をしっかりと見定める。

「ふっ、はっ、はぁ……っ、はぁっ!」

 ここッ!

 ガシッ!

「ッ!?」

 相手の攻撃タイミングに合わせしっかりガードできた。それにより、カウンターの道筋が見えてくる。

「はぁっ!」

 僕らは相手を抑えながらこちらの脚を天高く蹴り上げる。キレよく昇っていった昇脚が敵の頭蓋へと向かっていくッ!

「ぐっ……!」

 それを間一髪、敵は避ける。体勢を崩しながらしゃがみ込み、そのまま腕に強く力を込め跳ね飛びの形で後退していく。

 弧を描きながらバック転をした後着地した後の山肌が大きく抉れた。

「……中々やるじゃない」

 そう見定める敵と、再びにらみ合う。すると、ハツネさんが珍しく口を開いた。

「――そちらは相変わらずのようですね」

「ええ、おかげさまでね」

「ッ! 知り合いなの?」

「――彼女はイザベラ。セレーラ星で騎士団に務めていた幹部であり……クーデタを起こした当事者の一人でもあります」

「ッ!!!」

 クーデタ。つまり、ハツネさんの星を奪った当事者の一人。

 そうわかった瞬間、僕がイザベラを睨む目は鋭さを増した。

「はっ、人の星を侵略しておいて酷い言いぐさね」

「あれはアイツが誤情報を伝えたためです……星団軍に反逆の恐れあり。そう言われてはこちらも対応せざるを得ません……何よりその後、あなたはアイツにべったりだったじゃないですか」

 その言葉にイザベラは邪悪な笑みを零す。

「仕方ないでしょう。彼以上に素晴らしい御方はいないもの。仮にも一星の姫とはいえ、そんな方にお従いするのは当然の帰結だったのよ」

「……だから、私の両親もその手に掛けたと?」

 その言葉に、僕は背筋を凍らせる。

「止めを刺したのはあの方よ。勘違いしないで……ていうか、アンタいい加減不敬なんじゃない?」

 そう言ってイザベラはこちらを指さす。

「あの方は今や銀河団の皇帝陛下……いくら元王女のアンタとはいえ、お逆らいしていい方ではないのよ。頭が高いわ」

「暴力で全てを奪ったアイツに、誰が頭を下げるものか……ッ!」

「……どうやら、頭までバカになったみたいね。ま、当然か。そんな弱っちい男にゾッコンだものね、アンタ」

「ッ! 勇までバカにするのは許しま――」

「もういいわ。やっぱアンタはここで処分する……皇帝陛下もきっと赦してくれるでしょう……こんな反骨お姫様より、私の方がいいってね」

 そう言ってイザベラは天に手を翳す。

「大体、何が白銀よ……こっちはそれよりすごいんだからね」

 パチンッ……

「なんせこっちは……”黄金”なんだから」

 シュバァッ!

 それと同時に、金色に光る隕石が落ちてきた。

 まさか、あれは……ッ!

「来なさい、私の『鋼衣』……ゴルディン・ドレスッ!!!」

 瞬間、光と彼女が一体化し、黄金の輝きを放つ。

 それから彼女の身体に『鋼衣』が装備されていく。まるで貴族の娘が舞踏会のドレスを纏っていくように、煌びやかに装飾されていくイザベラ。全身を華美に、美しく彩られ、その高貴さを増していく。

 そして合体を終えた彼女は……まるで、黄金に包まれた公女であった。

「仕上げよ……来なさいッ、クォールハンマーッ!!!」

 そして突き出した彼女の手に、ハンマーが装備される。

 大きい。まるで僕らを潰すために存在してるかのような巨大なハンマー……おそらく、僕らが遊んでいた遊園地ぐらいは飲み込んでしまうほどの大きさはあるだろう。

 それをイザベラは軽々と、その細い腕で握る。

「さ、行くわよ、ルーちゃん……ちゅっ」

 イザベラは手に取ったハンマーに淡い口付けを果たすと、そのまま僕らへ向かって突進をしてきた。

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