第4話 Bパート~本気~

「……で、結局あいつは敵に寝返ったわけね?」

 そのイザベラの言葉に頷き、ローラは溜め息を吐く。

「全く……星の生存よりも風習を選ぶとは、わからん奴だな」

 溜め息混じりの言葉に、しかしメイスは鼻を鳴らす。

「ふん、機械仕掛けの女にはわからないか」

 その言葉にローラが珍しく眼光を鋭くする。

「……なんだと?」

 殺気の籠った返しに、しかしメイスは涼し気な顔で返す。

「騎士には責務よりも誇りを選ぶときがある……ただそれだけだろう」

「はっ、私たちがそれを言っちゃおしまいね」

「……何が言いたい、イザベラ?」

 今度はメイスの言葉に殺気が籠る。それを受けたイザベラも、しかし物怖じする様子はない。

「だって私たち、結局は皇帝陛下の女でしょう? 自分たちの星より皇帝陛下を選んだ女たちがそんなことを言っちゃおしまいね」

「違うな。私は皇帝陛下の側女としての誇りを選ぶと言ってるのだ……あの軟弱者のような男よりもな」

 そのメイスの言葉に、画面に映っていた勇の写真へ視線を移すローラは思考を整える。

「確かに……これは軟弱者だな。いったん情報収集に力を入れることにして正解だったようだ。まさか王子が、こんなにも弱い男とはな」

 それに同調するように、イザベラは目を伏せて頷く。

「全く、こんな男のものにならなきゃいけないなんて、リアナも不憫な女よね……でも、敵である以上は容赦しないわ」

「おっと、次は君が行くのか?」

「当然よ。もう部下たちでは敵わないレベルまで強くなってるでしょうからね……でも、それよりもあの田舎者の実力が私たち『四天王』と同格と思われてることが癪なのよ」

「『四天王』か……あいつが上に上がってからは全く聞かなくなった言葉だな」

 メイスが遠くを見つめるような眼をする。それを下らないと言い切るように、イザベラは会議室を出ようとする。

「その代わりが敵に下っちゃ世話ないわ。とにかく、すぐに片づけてあげる……この私、黄金星ゴルディンの姫・イザベラがね」


 ……


「ふぅ――大分遊びましたね」

「……そうだね」

 そう話す僕らは、観覧車の中にいた。

 あれからハツネさんは絶叫系のアトラクションにばかり乗った。僕は途中で止めたかったが、彼女がどうしてもついてきて欲しいとお願いするから仕方なくそれに全部付き合った。誰か僕を褒めて欲しい。

「――ありがとうございます、勇」

「え……」

 すると、ハツネさんがお礼を言ってくれた。

「おかげで楽しい思い出が出来ました。今日、ここに来てよかったです」

 そう言うハツネさんの表情は相変わらず無表情のままだった。

 けれど、外の景色を興味津々に見つめており……その言葉に、お世辞はないように思えた。

「……なら、よかったかな」

 少しだけど、ハツネさんのことがわかった気がする。

 それならば、今日遊園地に遊びに来た意味はあったかもしれない……そんなことを考えてると、夕日に輝く僕らのゴンドラが、観覧車の頂上にたどり着いた。

 ……ドゴォオオオオンッ!!!

「っ!?」

「ッ!」

 瞬間、山の向こうで爆発が起きる。

 僕らは立ち上がる。あれは普通の山火事なんかじゃない……きっとラスタ・レルラによるものだッ!

「勇ッ、変身しましょう!」

「うん! ……あぁ、でもまだ地上に着くまで時間が……」

「はぁッ!」

 バリィッ!

「えぇっ!? 窓を破った!?」

「さぁ、行きましょう勇、『鋼衣』ももう大丈夫のはずですッ!」

 そう言って彼女は僕を抱え、そのまま空中へ飛び出したッ!

「わぁーッ! わぁーッ!」

 そうして、僕らは変身した。

 ……正直、空に浮かんでいる時は気が気じゃなかった。

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