第2話 お金じゃ買えない物がある

 俺はマスサス達が立ち去った最終フロア内に戻り、隠し部屋を探す。



「あった、あった」



 隠し部屋は直ぐに見つかった。隠し部屋の中には黒光りする球体が、石台の上に置かれている。ダンジョンコアだ。



「大きい……」



 ゴクりと生唾を飲むほどに、そのダンジョンコアは今まで見た事もない大きさだった。A級ダンジョンのコアは片手に乗る程度だが、このコアは両手でも持てない程に大きい。以前、酒場でS級パーティーから聞いたS級ダンジョンのコアの大きさよりも大きいと思える。



「ハハハ、これを俺が独り占めか」



 ダンジョンコアから得られる物は経験値だ。この大きさならS級ダンジョン3回分、いや4、5回分のクリアーに匹敵するかもしれない。


 しかも俺が独り占めだから、パーティーなら20回分以上のS級ダンジョン踏破に匹敵する。金銀財宝? バカな奴らだ。お金じゃ買えない物、それが経験値だ。


 俺は黒光りする大きなダンジョンコアに触れ「解放」と唱える。ダンジョンコアからは莫大なエネルギーが俺の中に流れ込んできた。俺の体中が金色に輝く。ダンジョンコアのエネルギーが体中に溶け込んでいる証だ。


 いつもなら1分程度で終わるコアのエネルギー解放も中々終わりを迎えない。



「いやはや、これは凄いな……」



 コアはエネルギー解放と共に小さくなり、最後はビー玉程度の大きさになり、輝きが消えた。



「ふう、かなりレベルが上がった感じだな」



 レベルと言っても数値化されている訳ではないが、確実に数段強くなっている。冒険者ギルドでの昇級試験を受ければ、今のB級冒険者から昇格も出来るだろう。


 因みに『黄昏の流星』メンバーでは、マスサスとリアナがA級冒険者、俺とハルバー、レミーナがB級冒険者だった。


 魔法剣士や聖騎士は剣と魔法を使う為に、経験値が分散する分、成長率は悪い。特に俺の場合はギフト『サバイバル』の恩恵で全魔法適正を持っている為に、経験値はかなり分散されていた。



「さて、俺も戻るとするか」



 隠し部屋のダンジョンコアの間から出た俺は地上を目指す。ダンジョンコアを失ったダンジョン内には新たな魔物は発生しないが、未だに彷徨う魔物との遭遇戦は有り得る。





「グレーターデーモンか……」



 最下層からフロアを一つ上がった所でグレーターデーモンとの遭遇戦となった。まあ『サバイバル』の恩恵でグレーターデーモンは一体のみだ。


 などと思っていたら、いきなりのブレス攻撃。



「プロテクションフィールド」



 光魔法の高位防御魔法であるプロテクションフィールドで身を守る。


 『サバイバル』の恩恵は、生き残る為に必要な事を咄嗟に行える。例えば今展開しているプロテクションフィールド。俺は高位光魔法の知識は無いが、咄嗟のインスピレーションで無詠唱で発動している。



「ファイヤーボルト!」



 炎の弾を無詠唱で投げ打つ。戦闘中で有れば『サバイバル』の恩恵で全ての魔法が無詠唱で使える。


 俺のファイヤーボルトをグレーターデーモンは太い腕をクロスして防御するが、その腕ごとファイヤーボルトは爆砕した。明らかに今までのファイヤーボルトより格段に威力が上がっている。



「ファイヤージャベリン!」



 リアナが得意な中位魔法のファイヤージャベリンを発動し投擲とうてきする。炎の槍は両腕を失ったグレーターデーモンの胸に突き刺さり、上半身が爆砕した。



「凄え威力だな」



 確実にリアナのファイヤージャベリンより破壊力がある。


 その後もグレーターデーモンやミノタウロス等を蹴散らして階段を登って行った。


 莫大な経験値は、俺を確実に次のステージへと底上げしていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る