第50話 金色に光るバッジ、

 そのことから賊たちはたった一人程度であれば対処できるという自信の表れと、その自信を裏付けるだけの強さを持っているなか、又はその相手が少女だと見下しているのか、その両方か。


 どちらにせよ私から見ても少女一人では分が悪いように思う。


「おうおう、何か騒がしいと思ったらネズミが一匹入り込んでんじゃねぇか」

「しかもこれまた高値で売れそうなネズミが自分から俺達の元へやって来るのだあからこりゃぁ笑えるぜっ!」


 何故ならばここにいる賊は二人だけではなく、全員で四名であるからだ。


 いくら私を助けに来てくれた少女と言えども賊、それも近衛兵や宮廷魔術師の目を盗み、結界も事前に用意していた手練れが四名である。


 四人集まっても来ている制服から見て魔術学園の生徒であろう一人の少女でどうこう出来てしまうような連中であればそもそも王族である私を攫って来るという事は端からしないだろう。


 逆にそれができると自信があるからこそ王女である私を攫うという事もできると判断して動いたのであろう。


 それ程の人物の集まりであれば四人ではなく、たとえ一人であろうとも私と同年代程の少女では勝てる見込みは無いだろう。


「ふーん、たった四人なんだ。 思ったより少ないじゃない。 王女様を攫いに来た連中の事だから数十人はいるのかと思ったけど…………でもそうね、大勢だと逆に目立っちゃうか。 むぅ、これはこれで難しいというかアンタたちもただ攫うだけじゃなくて頭を使っているという事よね。 まぁ自分の命がかかってるんだから当たり前か。 そして考える事が出来ない物から死んでいくのね。 …………あ、なるほどっ!! いつもいお師匠様がヒントだけ教えて答えは絶対に教えてくれないのはこういう事だったのねっ!! 答えを教える事は簡単だし早く成長できるかも知れないけれども考える癖を付けないといずれ淘汰され、気が付いたら追い抜かれているからこその考えだったんだわっ!!」


 目の前の、まるで黒曜石のように美しい、黒く長い髪の毛を持つ少女は一人で何か納得したみたいで緊張感のかけらもない声で『うんうん、なるほどなるほど』と呟いているではないか。


「でも、結局君たちはいくら少数精鋭で悪事を働こうとしていたとしても私の、そうっ! このっ! 私のお師匠様にはお見通しだったようねっ!! 私のお師匠様にバレてしまった時点であなた達に未来は無いと思いなさいっ!! さぁ大人しく地面に伏せなさいっ!!」


 そして自ら何かに納得したあと賊たちに『あなた達に勝ち目はないから降せよ』と言いながら制服の胸に付けている金色に光るバッジをこれ見よがしに見せつけて来るではないか。

 



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